下着の攻撃力の高さ
◆
「着いたわよ、カレン」
「お、お母様……。 ここがお母様が幼い頃から言っていた『お父様を口説き落とした下着を購入した店』なのね?」
「ええそうよ。 ここで売っている下着の攻撃力の高さは一度実物を見れば一目でわかるわ。 口で説明するよりも見た方が早いでしょうから早く入ってしまいましょう」
そうお母様に言われて、私はお母様に手を引かれながらランジェリーショップという、今まで生きてきた人生で縁遠いと思っていた店へと足を踏み入れる。
このランジェリーショップなのだがかなり有名な老舗らしく、外見はその歴史の長さが窺える|建築方法《地球で言うところのルネサンス様式》で出来ており、その建築方法から少なくとも三代以上に渡って経営している事が見て分かる。
「それにしてもカレンからまさか『男性を落とす下着を購入したいからお父様を落とす事ができた下着を購入したランジェリーショップへ連れて行ってほしい』と頼られる日が来るなんて、お母さんはびっくりすると共にとても嬉しいわ。 いつも男っ気もなければお見合いや婚約の話をしても拒否するばかりなものですから、最悪行き遅れて結婚は出来ないのかもしれないと腹を括ろうかと思っていた所だったのよ?」
そう言いながら終始笑顔の母親を見て、何だか私まで嬉しくなると共に少しばかり恥ずかしくもある。
極力結婚相手に関しては私の好きな異性と、と言うのが両親の口癖でもあった為、両親が持ってくる婚約候補やお見合い話などをことごとく拒否していたため結婚は諦め始めていたのだと聞いて、こんな事ならばスフィアよりも早くカイザル様と出会いたかったとも思ってしまう。
しかしながら出会ったところで、ほんの少し前までカイザル様を嫌っていたように、幼少期に出会ったとしてもきっと私はカイザルの表側だけを見て、内面は一切見ようともせず一方的に嫌っていたであろう事が容易に想像できてしまう。
よく今まで内面が美しい者が良いだの何だのと言っていたものだと少し前まで自分の事が恥ずかしくなると同時に、内面だ何だと言ったところで私自身カイザルの外面しか見ていなかったのだから、いかに私の思想が浅いものであったかを思い知らされる。
「それにしても、お兄様の件があり、カイザル様に恩があるからと言っても悪い噂しか聞かないあのカイザル様と婚約をしたいと言った時、お父様もお母様もよく許可してくれましたね」
「そりゃそうですよ。 カレンが婚約をしたいと言った男性ですもの。 それだけで私もお父様もカイザル君を信用できるに足る人物と判断できるわ。 それだけ私たちにとっては百の噂よりもカレンの言葉の方が信用度が高いと言うだけよ」