目を覚まさせてやる
「カレンドールは、今この状況を何もおかしいとは思わないのかい?」
「おかしいとは何をもっておかしいと言っているのかしら? おかしな事など何もないわね。 クロード殿下がゲスで、クズで、ゴミ虫のような人物で、カイザル様は逆に私の人生を捧げても良いと心からそう思える人物であり、だからこそ私からカイザル様へ婚約を申し出ました。 これのどこがおかしいと言うのかしら?」
しかしながら、カレンドールは何がおかしいのか全く分からないようである。
「その状況がおかしいと思わない事こそが、カレンドールがおしくなった何よりもの証拠だろう。 少し前まではカイザルの事を嫌っており、俺に好意を寄せていたのに何で今カレンドールは俺を嫌っているような発言をして、何でカイザルに対してはまるで好意を寄せているような発言をしているんだ? それはそこに死んだ魚のような目をしているカイザルがブリジット同様にカレンドールを何らかの方法で洗脳したからに他ならないっ!」
「死んだ魚のような目は余計だ、クソゲス野郎」
「結局あの時はブリジットが洗脳されている証拠を見つけ出す事ができなかったのだが、カレンドールのおかげでやはり君たちはカイザルによって洗脳されているのだという事が確信できた」
「おい聞けや。 無視か?」
なんかカイザルのいる方向から雑音が聞こえ始めたのだが、これはカイザルが俺まで洗脳し始めているのだろう。
このまま真実を話されて万が一ブリジットやカレンドールの洗脳が解けるかもしれないと焦っているのだろうが、残念だが俺には洗脳魔術やスキル系を弾く事ができる護身用のアイテムを装着している為、カイザルの思い通りにはできないし、させない。
そして必ずブリジットとカレンドールの目を覚まさせてやるのだ。
そう思うと同時に、ブリジットやカレンドールの意思を踏み躙るようなカイザルのやり方は絶対に許してはならないし、それ相応の報いは必ず受けてもらう。
「違うでしょう? クロード殿下のクズでゲス具合が誘拐時、スフィアに対する対応で露呈してしまった結果であり、身から出た錆、自業自得だと思いますけど? そしてカイザル様の素晴らしさに気付く事ができた。 何故こんな簡単な事もわからないのかしら? こんな人物が将来国を背負う皇帝になる予定だと言うのだから笑えないわね」
そしてカレンドールは俺の考えを聞き終えると、鼻で笑ってこうなったのは全て俺のせいだと言うではないか。
この俺が一体何をしたというのか。