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怒りの矛先

「問題はないか?」

「はい。 ご主人様がご購入されました奴隷たちも全員とても優秀で教え甲斐がございます。 死の淵から助けてくださったという恩義と、もう一度生きる事ができるという希望が原動力なのでございましょう。 その気持ちは痛いほど分かります。 私も一度同じような経験を致しましたので。 しかしながらそのお陰で私は目を覚ますことができ、本来仕えるべき真のご主人様であられるカイザル様を見つける事が出来、日々ご主人様へ使える至福の喜びを噛みしめている──」


 そしてメリッサは大好きな趣味の事を聞かれたオタクを思わせるような勢いと熱量でいかに俺が優れているか、そして人として、異性としてもお慕いしているか等を一気に捲し立てながらマシンガンのように喋り始めるので、俺はその内容を右耳から左耳へと流しつつ小さいながらも形になって来た俺の『秘密結社』の本部(仮)へと足を運ぶ。


 いつか本部もしっかりとした作りの邸宅にしたいものだ。


 想像しただけで夢が広がる。


 俺の俺による俺の為の秘密結社であり、秘密結社の頭も当然俺。


 男ならばワクワクしない訳がない。


 そして誰が教えたのか俺の姿を見た奴隷達やメリッサの部下達は戦闘訓練中だったのか訓練を一端止め片膝をつき俺へ頭を下げる姿勢を取る。


「訓練中だったか。 邪魔して済まない、このまま続けてくれ」


 そんな彼女達を横目にしながら本部(仮)へと入り、これからの事についてメリッサと話し合う。


 メリッサに伝えたことは戦力向上の為に俺の前世の知識を伝える事と、日本語などの読み書きの説明である。


 そして奴隷達はそれらをまるで乾いたスポンジに水を灌ぐかの如く吸収していきみるみる育っていくのであった。





「使えない屑がっ!!」

「も、申し訳ございませんっ」

「もうよいっ! 俺の視界から消えろっ! 今すぐにだっ!!」


 死亡フラグを回避するために順調な日々を過ごしている俺とは対照的に、クヴィスト家の空気は日に日に悪くなって行くのが肌で感じる事が出来た。


 一向に帰ってこないメリッサや死ぬ気配すらない俺に、気づいたらいなくなっていくメイド達に父親であるグルド・クヴィストは誰が見ても分かるくらい日に日に苛立ちを隠せなくなっており、ついには使用人へ怒鳴りつけ始める始末である。


 自分の判断ミスによる苛立ちを使用人に当たり散らすその様は前世のブラック企業で勤めていた時の上司の姿にそっくりであり、俺は心の底から父親を軽蔑する。


 しかしながら使用人にその怒りが向けられ怒鳴り散らす分にはまだましで、俺にその怒りの矛先を向けられる時があるのだが、正直たまったものではない。

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