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あとは若いもの同士で

 そう言うとグレイスは今日一番の大声で「ガハハハハハッ!」と笑う。


 その姿を見てはとてもではないが「あなたの娘であるカレンドールさんとは婚約するつもりはございません」とは言い出せない雰囲気である。


 そもそも娘の親の前で「いらない」と言える勇者がいるのならば連れてきて欲しい。


 しかしながらここで断らなければどうなるか、火を見るよりも明らかであり、俺の選択肢は『婚約を断る』しかないのである。


「それはそれは、たまたま運が良かっただけですよ。 そして自慢の娘さんでこれ程まで美しい容姿をしているのですから私に嫁ぐよりも弟であり現当主でもあるグエンに嫁ぐ事を薦めますよ。 それに私の噂はルイス家当主であるグレイス様の耳にも届いている事と思います。 こんな私に嫁がせるよりも弟の方がやはり──」

「嫌です。 私はカイザル様と婚約しに来たのであり、カイザル様以外の人と婚約するつもりは毛頭ございません」


 しかし俺の言葉はカレンドールさんによって遮られ、更にカレンドールさんは俺以外とは婚約をしないと言うではないか。


 そもそも何故カレンドールさんは俺の元へ婚約をしに来たのか、理解に苦しむ。


 これでも自慢ではないが俺は学園では有名のクズであり、当然カレンドールさんにも嫌われている筈である、


 でなければあの時俺に決闘など申し込みに来る筈がない上に、あの時のカレンドールさんの目は確かに俺を侮蔑している目をしていた。


 であるにもかかわらず、あの決闘の日から数日しか経っていないと言うのに何故いきなり俺の下に婚約をしに来るのか。


 しかも何故か弟と妹がこの婚約に乗り気なのも意味が分からない。


 そもそも、このグレイスの話を聞く限りあの時の黒い仮面をつけた変装をカレンドールは俺であると見破っているという事なのだろうが、一体どうして見破られてしまったのか。


「ガハハハハッ!諦めたまえ、カイザル様。 娘はこの性格のせいで今まで婚約者を作らなかったのだからなっ! もはやこのまま婚約者は作らないのではないかと思っていところだったので──」

「お父様」

「何だい? カレンドール」

「ここからはカイザル様と二人でお話をしたいのですけれども……」

「おお、そうかそうかっ! 察しが悪くて悪かった。 あとは若いもの同士で仲を育んでくれたまへ」


 そしてグレイスはそういうと「ガハハハハハッ!」と笑いながら部屋の外へと出ていくのだが、去り際俺に一瞬だけ向けたその目は「娘を泣かせたらただではおかないからな、小僧」と言うと部屋から出て行くのであった。

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