ドラゴン≠カッコイイ
「ふむ……。 確かに小娘の言う通りであるな。 そもそも我が主が我を召喚出来た時点で、我が主は我よりも強い事は確実。 であれば我が主には敬意を表して接するべきであるな」
そして漆黒の巨躯を持つドラゴンは地面へと伏せる。
その姿はまるで大型犬が伏せをするかの如く、その姿は余りにも『漆黒の巨躯を持つドラゴン』からかけ離れており、まるで飼いならされたペットのような雰囲気まで漂うその姿から俺の中でドラゴン=カッコイイという図式がドラゴン≠カッコイイへと見事に変えられてしまった瞬間であった。
こんな姿、できれば見たくなかった。
しかしながらブリジットも俺の事を思っての行動だという事は理解できる為俺は心の中で泣いた。
「そうかしこまらなくても構わない。 召喚された時のように威風堂々とした態度でも良いんだぞ?」
「配下に対してその様な寛大な言葉、主としての器の大きさを改めて感じさせられますな。 その言葉だけ受け取らさせて貰おう。 規律は少しの綻びから崩れるもの。 それにドラゴンは主を敬う事も出来ない低能な生き物と裏で思われてはそれこそドラゴンの恥。 故に我が主に対しての接し方はこのまま変えない事をお許しお許しいただければと」
「わ、分かった……」
しかしながらまだ脳みそが筋肉で出来ているようなブリジットとは違って話せばわかる程の知能は持っていそうなのでそのまま威風堂々とした態度で構わないと言ってみるものの、その知能が仇になったのか接し方はこのままで行くと言うではないか。
むしろ、人間相手にへりくだった態度は逆に同族からドラゴンの恥と思われるのではないのだろうか?
とは思うものの、ドラゴン本人が考えた上での返事であればこれ以上この件について話すのも失礼だろうと断腸の思いで話題を変える事にする。
「因みに名前とかあるのか?」
「ふむ、名前は無いが人間どもからはファフニールと呼ばれているのは耳にする」
「そ、そうか……。 ではファフニールよ、これからよろしく頼む」
「かしこまりました。 我が主よ」
そして俺はゲームで得たドラゴンの装備一式をファフニールへ装備させ、今やる事は全て終わったので召喚を切り、ファフニールは目の前からいなくなる。
恐らく召喚前に居たであろう場所へと戻ったのであろう。
それとともに俺の中のファフニールのイメージもまた、新たに更新されてしまう。
「て、敵対心むき出しで反抗的な態度を取られるよりかはマシだと思う事にするか……」
そして、俺の後ろには目をキラッキラに輝かせて俺を見つめている奴隷達(弟妹含む)がいる事にこの後気付くのであった。