頭が高い
「そ、それで……どうだったのでしょうか?」
「や、闇ギルドマスターであるベルムードからはお兄様の欲しいものというのは奪えたのでしょうか?」
そして弟妹は恐る恐るといった感じで今回の件について聞いてくるのだが、その瞳には恐怖心の他に期待と尊敬も混じっているような瞳をしているのは気のせいだろうか?
もともと強さこそ正義で弱者は罪であるという偏った思想を少なからず持っていたであろう弟妹なのでなきにしもあらずなので否定しきれないところが恐ろしい。
「ああ、問題なく欲しいアイテムは手に入れる事ができた。 そしてそれはクヴィスト家を切り盛りしてくれたお前達のお陰でもある」
そして俺はベルムードから欲しいアイテムを無事奪えた事を話すと、俺の代わりにクヴィスト家を切り盛りしている弟妹に俺が欲しかったアイテム以外の戦利品を投げ渡す。
「これぐらいあれば貴族間の交流や領地経営にも余裕が出るだろう。 マジックアイテムに関しては売るなり利用するなり好きに使っても構わない」
「「あ、ありがとうございますっ!! お兄様っ!!」」
確かに俺は今まで弟や妹から日々暴力や嫌がらせを受けて来たのだが、俺は俺で今まで弟や妹に対して兄らしい事など一度もして来なかったのも確かである。
その罪滅ぼしという訳ではないし、むしろ俺の兄らしい事ができなかったなど等いうのは弟妹が俺に対して行ってきた事と比べれば『そんな事』レベルなのだろうけれども、それでも今更俺が兄貴面するのもどうかと思う。
それでも、歪ながらも弟妹の兄であろうとする事くらいはさせて欲しい。
ただの自己満であり『兄らしい事など一度もして来なかった』と微かに感じる罪悪感を払拭して少しだけでも楽になりたいのだ。
そんな事を思いながら俺はベルムードから奪った指輪を右手人差し指に嵌めて早速裏庭の修練場で使ってみる事にする。
すると周囲は膨大な魔力に包まれ、次の瞬間には漆黒の巨躯を持つドラゴンが現れていた。
「お前が我を召喚したのか?」
そして目の前のドラゴンは俺を見下ろしながら自分を召喚したのは俺かと聞いてくる。
今回俺がベルムードから奪った指輪の効果であるのだが、込めた魔力量に比例した召喚獣を一体だけ使役できるというシンプルな効果なのだが、効果がシンプルな程強力であるというジンクスが某カードゲームにあるようにこの指輪もその効果は使う人によっては非常に強力である。
「トカゲ風情が、ご主人様の前だというのに見下ろすなど、頭が高いですっ!!」
そんなドラゴンに対して俺よりも先にブリジットが頭が高いと叫ぶのだが、そもそも立った時の高さが十メートル前後はあるのでそこは許してあげて欲しい。




