主人である俺の責任
「君達には期待している」
「は、はいっ!! な、ならば手始めにこの首輪にリードをつけて散歩を──」
「却下だ。 それにそういう事に対しては一切期待していないから」
「そ、そんなっ!?」
「は、はいっ!! な、ならば手始めに僕と子作りをしましょうっ!! 僕のご主人様ともあろうお方に未だ跡取りが居ないというのは少し問題があるかと思わ──」
「それも却下だ。 俺まだ十代なんだけど? まだそういう責任はとりたくはないと何回も言っているだろう? 今はお前たちだけで精一杯だ」
「そ、そんなっ!?」
こういう時は怒ってばかりではダメなのだ。
期待しているから、怒っているんだという事を態度と言葉にしてやるのだが、少しばかり効きすぎたのか満面の笑顔でぶっ飛んだ事を奴隷の二人が俺に求め始めたので断ると、二人共断られるとは思っていなかったと言わんばかりに驚いていた。
一体どういう思考回路をすれば俺が了承すると思ったのか、理解に苦しむ。
しかしながら、奴隷たちはコレで良いとして問題はカレンドールさんである。
そのカレンドールさんはというと、未だに震えながら俺に向かって土下座をし続けているではないか。
正直言って、俺の良心が抉られるほど痛む。
そんな感情など所詮は偽善であると分かりきっているのだが、しかしながら心地いいモノではないし、ここで彼女に対して無下な態度をとってしまうと、俺の心に棘が刺さり一生涯今日の事を思い出す度にジクジクと痛むことを俺は前世の記憶で知っている。
それに、俺の奴隷たちのせいだしな……。
ならば主人である俺の責任でもあろう。
そう思うと俺はため息を吐きつつもカレンドールさんの元へ向かう。
「すまない、俺もここまでするつもりはなかったんだ。 結果こうなってしまったのは俺と奴隷との意思疎通ができていると勘違いしてしまった俺の責任でもある」
そして俺はカレンドールさんの下まで行くと、両膝を突き、視線を下げ、できるだけ優しい声音で話しかける。
「ご、御免なさいっ……許してくださいっ」
「あぁ、許すから。 だからもう怖がる必要も怯える必要もない。 それでも不安だというのなら俺はクヴィスト家の名にかけて誓うよ」
「あ、ありがとうございますっ! ありがとうございますっ!」
そして、その俺の言葉にようやっと俺が何もしない事を分かってくれたらしいカレンドールさんなのだが、これは流石に見てられないというか、精神的なケアが必要なレベル、それこそPTSDを発症していてもおかしくないのでは? と新たな罪悪感を感じ始めてしまう。
流石にこのまま返すのは可哀想なので俺は前世の知識からカレンドールさんは氷魔術が得意な家系であることを思い出したため、氷魔術を伝授とまではいかないまでも一度俺が見せてあげて氷魔術を向上させるきっかけになればという結論に至った。