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とりあえず、第17話 みんな大好き、中世ナーロッパ

今回は初めてのお外デビュー編です。

それでは、第17話、はりきって、どうぞ。

産まれた時から母の推しメンではあったものの、とうの昔にオシメを卒業し、スーパー推しメンにクラスチェンジした俺は、家の外の世界にも興味津々だ。


首が座り、ヨタヨタと歩く事も可能な俺は、母におんぶをされて、初めて家の外に出る事になった。

初めて家の外に出た時は感動したし、驚きもあったし、そして少し悲しくもなった。


鍛冶工房兼家から食料品や日用品が揃う市場まで直線にして200mぐらいだろうか、狭い道を右左折しながら市場へ向かう。その道中で出会う人々は実に面白かった。

二足歩行するトカゲ、2足歩行する猫、四つん這いの大きな犬は、、、うん、道路の隅で地面に向かって吐いてる犬獣人だった。お天道様もまだ高いって言うのに飲み過ぎか?

そして、道行く人のファッションだが、まず頭髪は非常にカラフルだった。

赤、青、緑、茶色、etc,,,不思議と黒髪には出会わなかった気がする。

老人になると髪が薄くなり、白髪が目立ち始めるのは、こちらの世界でも同じようだが、頭髪がカラフルな老人が居ないわけでもない。


さて服装だが、これは家族を見ていたから何となく察していた。

染色などはほとんど行っていないようで、服の生地は生成りのようだ。

それゆえ、茶色、灰色、白のような色合いの生地でシャツや、ズボン、スカートが作られていた。

この辺りは温暖な気候のせいか、服を着込む人は居ない。

そして足元だが、サンダルを履いている人がほとんどだ。

子供や、獣人などは裸足もいた。元気一杯な印象だった。

履物は植物や木、そして皮で作られているようだ。

街並みに目を向けると、道路は舗装されておらず、剥き出しの土。

建物は、木であったり、レンガであったり、漆喰のようなものが塗られていたり、一言で言うとバラック街。

二階建てや、平屋が混在しているが、明らかに後から増築しました感のある家も多い。

そんな訳で、建物の統一感はほとんどない。

市場まで来ると、そこはたくさんの人で賑わっていた。

常設なのか屋台のような露店、リヤカーのようなものに野菜等の商品を詰んでそのまま売っている人、ゴザを広げて商品を陳列している人も居る。

この賑わいなら、この地域の危険度は低いのかもしれない。

商品が並び、品不足という感じは受けなかった。


やはりというか、少なくともこの市場では、定価という概念は発達していなさそうだ。

母も知り合いらしき店の主人と、世間話を交えながら、値段交渉をして、必要な食料などを購入していった。

自分の足でこの市場に来れるようになる日が待ち遠しいと思った。見ているだけでも十分に楽しめそうだから。

通貨は、この市場では銀貨、銅貨、青銅貨、鉄貨、さらにそれを半分や4分の1に割られたものが使われていた。

貨幣の種類とレートは、ある程度決まっているようだが、まだハッキリとは分からなかった。

言葉を覚え色々と母に質問をするようになった俺が、ただ黙って周囲を観察している様に母も気付いたようで、あれこれと説明してくれる事もあった。

母の説明を聞いて相槌を打ったり、「あれは何?」等と可愛らしく質問をしていた俺だが、母の何気ない言葉に心底驚いた。

母は街の遠くに見える塔のような建物を指さしてこう言った。

「アル、見てご覧なさい、あの塔はこの街で1番高い建物よ。すごーく高くて、そうねぇ20メートルはあるんじゃないかしら。」

あ、どうも申し遅れました。私、鍛冶屋の次男坊アルです。

いや、違う。そこじゃないな。

母の使った言葉だ。

20メートル。

その言葉は、俺にはとても懐かしく、地球の匂いを感じた。

その後、急に寡黙になった俺は、母におんぶされたまま帰路についた。


家に着いた俺は、母が使った「メートル」という言葉の意味を考えている。

母に聞けば、知っている事を教えてくれるだろうが、まだ聞けていない。

この世界に生まれた当初は、激アツ赤ちゃんデビューとか、

お子ちゃま大魔法使い爆誕とか、頭のおかしい妄想をしていたのは確かだ。

だが、最近はそういった妄想からくる言動は自重しているのだ。

この自重が成功しているかどうかは不明だが、普通の子供として生きていこうとしている。

能ある鷹は爪を隠す、とか言うつもりも少しはある。

いやー、この明晰な頭脳が国家規模の勢力に拉致されたら激ヤバじゃないですか?と言うのもある。

あるにはあるが、それらを超えて、俺はこの家族が好きなのだ。

俺は彼らに嫌われたくないのだ。

精神年齢が40歳を超えた子供なんて異常だ。

俺は彼らに嫌われたくない、恐れられたくない一心で、ちょっと好奇心旺盛な子供として成長していこうと思っている。


そんな訳で、ドパッ発表会も無期限延期だ。

今ならドパッをガチれば、団扇とタイマン張るぐらいは出来そうだが、もう少し温めておこう。

具体的には、兄がドパッをした後に、少し遅れてドパッがベストではなかろうか。

兄に劣等感など与えるつもりは毛頭ない。

兄より優れた弟など存在しないと、誰かも言っていたしな。


さて、母の使った「メートル」という言葉について考えよう。発音は若干違ったが、地球でもアナザワルドでも同じメートルが使われているのが重要だ。

自分の体が小さいし、定規もまだ見た事はない。

しかし、住民の身長を2メートル以下と仮定し、それを基準に家の高さと遠くに見えたあの塔を比較する。

あの塔は20mと言われれば納得出来るシロモノだった。


偶然、全くの偶然で地球と同じぐらいの長さの単位をアナザワルドでもメートルとしている可能性はある。

そもそも、あーいう長さの単位って何処ぞの権力者の体の一部の長さを基準にしたりするんだろ。

だから地球の1メートルとアナザワルドの1メートルが同じであっても、それほどおかしくもないのかもしれない。

だが、俺は地球からの来訪者だ。

それも前世の記憶をしっかり残したままの。

あのマイク男がやったのかどうかは分からんが、俺たち以外の地球からの来訪者がいなかったと考える方が不自然だろう。

俺がアナザワルドに転生して1年半、たったこれだけの期間でメートルといった度量衡を拡げる権力を持てる奴がいたとは考えにくい。

母からメートル換算に不慣れな感じは受けなかったし、母に対して「お母さんはいつからメートルを使っているの?」なんてイカれた質問はしたくない。


あの時、説明会にいた俺達の内10000人が、いや、詐欺師スタイルのマイク男の事だ、サクラを仕込んでいた可能性は捨てきれない。

俺と同じチケットでアナザワルドに来た者達が、同時刻に転生を受けていない可能性はある。

では、俺がそいつより遅く転生したか?

これは新しい情報が得られるまで考えても無駄だろう。

「あの説明会でのマイク男の第一声は引いたよな?」と、話せる同邦人を見つけない限りは、これ以上の推論は意味がなさそうだ。

ただ、これからの俺の目標がひとつ決まった。

今までも情報は出来るだけ求めてきたが、それと同時に、俺と同じ来訪者の痕跡を探ることも重要だ。

それは、最終的に俺のためになる事だと思う。

俺と同じ来訪者が居ると仮定して、そいつが何をしたいのか、または何をしたのか、どれも簡単に分かるとも思えないが、とても重要な事だと思う。

俺は自重して生きるつもりだが、自重しない奴だっているだろう。そういう奴は要注意だ。コッチに害が及ぶ可能性だってある。常識の範疇を超えた特異点みたいな野郎を見つけたら、、、。

とりあえず今は、ソイツが平和的な奴である事を祈るばかりだ。

出たなぁ、中世ナーロッパ。


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