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13/30

とりあえず、第13話 調整は、入ってナンボのもんですよ

それっぽいフレーバーな話です。


それでは第13話です。

はりきって、どうぞ。

説明会で演説をしたマイク男ことナッガーノが、自室で寛ぎながら案件の進捗状況を確認していると扉をノックする音が聞こえた。

コンコン。

「入りたまえ」

鷹揚にそう伝えると、一人の疲れきった顔をした男が扉を開けて入ってきた。

中華料理屋で店主をしていた男だ。

名をハーゲストという。


「失礼致します。ナッガーノ様、報告書を持って参りました。」

「全て無事に送り出したのかね?

報告書はそこに置いておいてくれたまえ」

ナッガーノは机の一角を指差してハーゲストに伝えた。

「いえ、まだ半分程しか終わっておりません」

「そんな事では困るよ、ハーゲスト君。私の前任者のせいで、この案件は遅れに遅れているのだ。」

一山程にもなる大量の報告書を机の一角に置いたハーゲストは、ナッガーノを見つめる。

「何かね?ハーゲスト君」

「先日の説明会の件で、お話が、、、。」

「その話は、この前もしたはずだ。君も納得しただろう。それにもう終わった事だ。我々にはまだまだ仕事が残っている。それを忘れたのか。」

「お話を伺っておりましたが、あれではあまりにも彼等が可哀想ではありませんか?」

「可哀想とはどういう意味だね?」

「はい、まず彼等は自分が取れる選択肢を十分に説明されていません。そして、今後彼等がどうなるのかも説明されていません。私が伺っていた説明会とは全く違うものになっていました。」

「そう言うがね、ハーゲスト君。君も見ただろう。リストアップされていた魂達は全てアナザワルドに送られる事を自ら望んだんだ。まぁ、確かに君に伝えていた説明会に若干の修正を加えたのは確かだがね。」

「しかし、あれでは、、、。サクラもだいぶ入っていましたし、それに彼等はアナザワルドに転生ではなく、転移できると思っていましたよ。」

「転生ではなく転移だと思っていた?

死んで身体を失ったのに転移など出来るわけないだろうが、死んだ奴等の欠片を集めて繋ぎ治せとでも言う気か?

どこぞの小説サイトの知ったかぶりするクソ読者が言いそうな事は気にするな。

良いかね、ハーゲスト君。我々には仕事が与えられたんだ。地球にある100個の人間の魂を記憶の洗浄をした上でアナザワルドに送れと。我々はそれを実行した。何が問題なのかさっぱりわからんな。」

「ですから、相手に冷静な判断をさせな」

「ハーゲスト君、よく聞きたまえ。魂を他の世界に送ることは簡単には出来ないのだよ。それは君も知っているはずだ。向こう側が受け入れの意思を示し、こちらも送り出す意思を示す、さらに魂自身が向こう側に行きたいと思わねばならないのだ。付け加えるなら、送り出される魂は孤独である方がよい。孤独でない魂は他の魂との繋がりによって地球から離れることが難しくなるからね。」

「神が魂の移動にそれだけ厳しい条件を付けられたのは、魂自身にも選択をさせたかったからではないのでしょうか?」

「だから、魂に選択をさせただろう。私は彼等の背中をほんの少し押しただけだ。進んだのは彼等の意思だ。

1番重要な事はだ、良いかい、我々が神に与えられた職務を果たしたと言う事なのだよ。」


説明会の数日前、ハーゲストの元上司は他部署へ異動となり、ナッガーノが新しい上司の席に座った。

ナッガーノは、魂達に対して行っていた懇切丁寧なケアを廃止し、職務を速やかに遂行する事を部下達に徹底させた。

魂の意志を重要視する方針からの変更は、部下達に戸惑いを与えていた。


「それからね、ハーゲスト君、あの中華料理屋は廃止だ。類似する店舗も全て廃止する。魔素を含んだ料理を食べさせて、魂の強化をすることなどは我々に課せられた職務ではない。撤収しておいてくれたまえ。」

「そんな、、、人間の魂は、あの世界では強い存在でありません。強化されていない魂が、あの世界で天寿を全う出来るとはとても、、、。」

「ハーゲスト君、何度も言わせないでくれ。我々の職務は100個の魂をあちらまで届けることだ。届けられた魂が天寿を全う出来るかどうかは関係ないんだ。天寿を全うする事の素晴らしさを否定する訳ではない。天寿を全うし、魂の格を上げ、昇進していく。とても素晴らしい事だ。ただね、やはりそれは我々の職務では無いのだよ。

ハーゲスト君、君はまさか、職務に背いて堕天する気かね?」


堕天、その言葉にハーゲストは怯え、かぶりを振る。

「そ、そんな、まさか、私はそんな事を考えた事は1度もありません」

「それならば結構、これからも我々に与えられた職務をともに遂行していこうではないか」

「はい、勿論です。職務に邁進いたします。」

「分かってくれたようで何よりだ。まだ仕事が残っているのだろう。早く終わらせてきなさい。次の仕事も待っているんだ。」

「はい、失礼致します」


足早に部屋を出るハーゲストを見送った後に、ナッガーノは独り言ちる。

「どうしようもないな、アイツは。人は見たいものしか見ないか、人間も我々も何も変わらんな。

さて、前回のストロングスタイルは思っていたほど受けが良くなかったからな、新しい物でも考えるとしようか。」



付き合いの短さが影響し、ナッガーノもまた自分の目線でしかハーゲストを理解していなかった。

ハゲに複数の仕事を与えてはいけないのだ。

ハゲにストレスを感じさせてはいけないのだ。

2年間中華料理屋でハゲとバッテリーを組んでいた男に聞けばこんなコメントを残すだろう。

「あっちゃー、ハゲに複数の仕事を指示して、さらにプレッシャーですか、こりゃ、間違いなくしくじりますね。

ハゲはね、タスクが4つ以上になると、しくじる確率が激増するんですよ。これは統計的な事実なんですよ。だからね、俺はいつもハゲのタスクが3つ以下になる様に調整して注文していたんですよ。まぁ、それでもしくじるのがハゲって奴ですけどね。」


案の定、ハゲはかなりの数のミスをしていた。

そう、いくつかの魂達の記憶の洗浄を行わなかったのだ。

それが故意だったのか過失だったのか、その答えはハゲにしか分からない。

ここまでがプロローグみたいなつもりです。


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