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とりあえず、第12話 ストロングスタイル

ストロングスタイルとまともな会話が成立するのか?

第12話、スタートです。

天国は全面禁煙という事実に、俺は絶望し項垂れる。

誰だよ、俺はタバコの神の敬虔な信者だ、とか言っていた阿呆は。

タバコの神がいたら、全面禁煙なんて承知せんだろう。

あっても、分煙だろう。

さて、天国って場所がろくでもない場所だと確定したわけだが、どうするべきか?

ここから悪行の限りを尽くして、地獄へ行ってみるか?

地獄と言えば、悪の巣窟だろ。

そこも禁煙ってことは流石にないだろう。

健康に気を使う地獄とか、まさに地獄だわ。

まぁ、まだ俺が天国に行くとは決まっていない訳だし、ここは今後の展開次第だな。


「準備が出来たようだ。よし、お前も行ってこい。」

ハゲに告げられ、移動しようと椅子から腰を上げると、景色が一変した。

なんだ、一瞬で移動したぞ。

ハゲの仕業か?

やるなハゲ。

瞬間移動程度は、説明するまでもないほどハゲの中では普通の事なのだろう。


辺りは薄暗い。そして、温度と湿度は高い。

自分の回りを見回すと、たくさんの人がいる。

100人どころではなさそうだ。

何万という人数ではないだろうか。

白人、黒人、黄色人種。老若男女。

みんながひとつの方向を向いている。

みんなが見つめるその先には、光に照らされた大きなステージのようなものがある。

これは、、、フェス?

天国フェスですか?

勇ましい音楽が流れ始めた。

突如ステージ上が激しく明滅し、煙が沸き上がる。

しばらくして、煙が消えた後には、一人の男が立っていた。

白いガウンを着て、両肩には赤いタオルを掛けている。

音楽が停止した。


「元気ですかぁぁぁぁーーーーー!!」

男がマイクを右手に持ち絶叫した。

俺達は身動ぎも出来ない。

「オイオイオイ、返事が聞こえない、もう一度聞くぞ、

元気ですかぁぁぁぁーーーーー!!!」

「ウォォ」

ノリを理解した何人かは返事をしたようだ。

「お前らの元気はそんなもんじゃないだろう。腹の底から声を出せ、もう一度いくぞー、元気ですかぁぁぁぁーーー!!!」

「ウォォォォォォ」

今度はかなりの人数が声を出したようだ。

これならマイクの男も満足するか?

「死んだお前らが元気な訳がないだろうが、バカ野郎!!」

無茶苦茶だ。意味がわからない。


「さて、今日は不幸にも亡くなられた皆様に、素敵な提案を用意させて頂きました。」

なんだ、コイツ。急にテンションも口調も変えてきやがったぞ。

「ここにお集まりの皆様には、幾つかの共通点がございます。

1つ、既に亡くなられている。

2つ、生前孤独であり、世界に絶望していた。

3つ、別の世界でやり直したいという強い願望がある。


我々が至らないばかりに、地球での生活は苦痛に満ちたものだったことでしょう。

みな等しく神の子であるのに、何故貴方達だけがこんなにも傷つき、疲れ果てなければならないのか。

皆様のこれまでの苦痛を考えると、私、胸が張り裂けそうです。

皆様のために私が出来ることは何なのか?

不肖ながら私、皆様のために奔走し、方々にこの頭を下げて参りました。

そしてついに、ついに皆様のための特別なプランをご提供できる運びと相成りました。

皆様、前方のスクリーンにご注目下さい。」


巨大なスクリーンには、宇宙に浮かぶ惑星の映像が写し出される。

場面は切り替わり、西洋風RPGのような、剣と魔法、モンスターと戦う戦士達の姿が写った。

映画のトレーラーのノリだ。

周囲からは歓声があがる。


「皆様がご覧のこの惑星アナザワルドは地球をモデルに神が創られた惑星です。

ここには魔素という物が存在し、その魔素を利用した魔法があります。ほんの少しの練習で、ホラ、このような魔法を使うことが出来ます。」

正面に突き出したマイクの男の左手から炎が上がる。

炎は鳥のような形となり、空へと舞い上がる。

そして、沸き起こる歓声。

「このアナザワルドでも地球と同じようにいくつもの文明が栄え、そして滅びました。そして今、また新たな数々の文明を花開かせようとしているのです。アナザワルドで暮らす様々な種族や動物、植物達。古代の文明を探訪し歴史のロマンを感じるもよし、未知の食材を堪能するも良し、地球では見られない絶景に心を震わせるも良し。モンスターを討伐し英雄、果ては王となることもまた夢ではないのです!!

分かっております。

争う事を望まない方、そんな危険な事は出来ないと仰る方も大勢いらっしゃることでしょう。

普通の安定した生活、おおいに結構ではないですか。

無理に冒険をする事はないのです。

我々が貴人方に強制する事は何一つありません。」


みんな真剣に耳を傾けている。

マイク男の次の言葉を静かに待っている。


「神の肝煎りで造られたこのアナザワルドでは、たくさんの善良な魂を募集しております。

しかし誠に、誠に残念な事に、ここにいる皆様全員をアナザワルドにお連れすることは出来ないのです。」

マイク男の演説を我々は見守る。

「方々に頭を下げて、限定で10000名分のチケットを、なんとかご用意させていただく事が出来ました。」

巨大なスクリーンに「10000」の数字が浮かぶ。

「皆様、強く、強く念じて下さい。俺はアナザワルドに行きたいんだ、と。

強く強く念じて下さい。私は新しい世界で幸せになるんだ、と。

その皆様の願いがアナザワルド行きのチケットになるのです!!」

巨大スクリーンに映っていた10000という表示が9999に、そして9998、9997、、、どんどんとカウントダウンを始めていく。

「皆様、数には限りがございます。どうか強く強く念じて下さい。

チャンスは今しかないのです!!」

カウントダウンのスピードが加速していく。

俺はどうするべきだ?

どうしたいのだ?

あのゲームのような光景は確かに魅力的だ。

だが、こんな説明で皆納得できているのか?


周囲から声が漏れて聞こえてくる。

「頼む、頼む、俺にチャンスを与えてくれ」、「俺はやり直すんだ、もう一度やり直すんだ」、「幼女と、幼女と暮らしたい、ハァハァ」、「ネコミミ様、どうか私にネコミミ様の耳を触らせてください」

「現代知識で内政無双。現代知識で内政無双」

若干名、そく御用な願望が聞こえてくる。

ヒュン。

前方の男の姿が消える。

周囲がどよめく。

チケットとやらを手に入れたのだろうか。

スクリーンのカウントダウンは5000を切った。

すごいペースで数が減っていく。

「おめでとうございます。おめでとうございます。

既に沢山の方々が、アナザワルドに旅立っておられます。

新しい人生を、素晴らしい人生を送ろうとしておられます。

もうチケットは半分しか残っておりません!!

お早く、お早く!!

強く強く願うのです。

アナザワルドに行きたいと強く願うのです!!

その願いが貴方をアナザワルドへと導くのです!!!」

マイク男が群衆を急かす。


俺の周囲でも何人かが消えていた。

おそらくアナザワルドに飛び立ったのだろう。

カウントダウンは2000を切った。

アナザワルドに行きたいと叫んでいるやつまでいる。

周囲の熱狂が俺の心を感化する。

俺もやるしかない。

そして念じ始める。

(俺は何かに縛られたくないんだ。自分を殺して生きるのなんて死んでいるのと同じなんだ。俺を縛り付けるばかりだったこんな世界なんて真っ平ごめんだ。だからアナザワルド、もしもお前が俺を望むなら、俺を受け入れてくれるなら、俺をお前の元に行かせてくれ。俺に新しい人生を始めるチャンスを与えてくれ!!)


強く念じたその瞬間、俺の意識は途切れた。

続きます。


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