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とりあえず、第11話 薄々はね

この業界では、かなり前衛的で斬新なトラックが登場した前回。

今回も斬新な設定てんこ盛り。

それでは、第11話スタートです。

夢の中にいるのだろうか。

あまり現実感がない。

辺り一面を白い何かが漂っている。

ここはどこだ?

身体の感覚がない。

自分の身体を確認したいが何も出来ない。

分からないことだらけだが、視界に写るその光景の先へ進んでみたい。

前へ前へ、動けと念じる。

進んでいるのか?

回りに比較するものがないと自分が動いているのかすら分からない。

「おい、どこに行くんだ、大人しくしてろ」

誰かが俺に話し掛けたのか?

「何を言っている。ここにはお前と俺しか居ないだろう」

やはり、俺に話し掛けているようだが、俺の声も届いているのか。

「いかんな、間違えたか、ちょっと待ていろ。すぐに済む」

えっ、何を間違ったの?嫌な予感しかしない。

うぉ、何かが入ってくる、ダッ、ダメェー、そこはまだ誰にも触らせたことがない所なのぉ。

「気持ちの悪いことを言うな、もう終わった。」

しばらくすると身体の感覚が、少しずつ戻ってくる。

主に視界の変化が顕著だ。

ここは何もない空間ではなかった。

目の前に机と椅子が見える。

木製の机と椅子だ。

俺は小さな部屋で椅子に座っていたようだ。

自分の手と足も見える。

動くことも出来そうだ。

「貴重な体験をしたな。人間ではなかなか入り込めない空間をお前は知覚していたのだ」

後ろから声が聞こえた。

さっきから思っていた事がある。

俺はこの声の主を知っている。


男は、机を挟んで俺の前にある椅子に腰をかけた。

中華料理屋の店主だ。

店で着ているコック服とは違うが、あの頭の光り方はあいつしかいない。

店主はトーガのような布を纏っていた。

「あぁ」

声が出せた。

自分の耳で自分の声を感じることが出来る。

「あっ、オヤッサン、どうもです」

「うん、大丈夫そうだな」

「あの、薄々は気付いてるんですけど、、、これって、どういう状況でしょうか?」

「それを説明しても良いんだが、もう少ししたらお前達は私の上司から説明を受ける予定なんだ。だから知りたい事があったら、あの方に直接聞いたほうが良いだろう。」

うわぁ、ハゲってこんな喋り方するんだ。

ハゲは店では無愛想で、ほとんど無言だったからな。

しかし、ハゲの上司ねぇ、うーん、やっぱりあの人かな。

ここ数日の出現率からすると、あの人だよな。

完全に浮世離れムーブを噛ましてきていたし。

あれは完全に演出が入っていたでしょ。

あれが確定演出じゃなければ、逆に納得できませんよ。

台をバンバン叩いて、店員ともめて、出禁までありえますよ。


何となく自分が死んだんだなとは理解している。

トラックと衝突して、死んだんだと思う。

衝突時に身体の中から嫌な音が聞こえたもんな。


ほぼ確定で俺は死んでしまった訳だが、未練らしい未練はないと思う。

祖父母も両親も鬼籍に入っている。

兄弟姉妹もいない。

妻も子供もいない。余暇を一緒に楽しむような友人もいない。

要するに孤独なんだ。

俺が死んでも、悲しむ人は居ないだろう。

仕事も、俺一人が居なくなっても特に問題はないだろう。

誰かが俺の代わりにあの仕事をするだけだ。

コツコツと貯めた貯金が無駄になったのは、少し虚しい気がする。


質問はハゲの上司にしろと言われた。

そして「お前達」とハゲは言った。

俺達の集団は、どの程度の人数だ?

20人ぐらいだろうか、いや、100人を越えるかもしれない。

大勢が集まる説明会で、こちらの質問に丁寧に答えて貰えるとは思えない。

ハゲは説明する気もなさそうだが、どうしても確認しておきたい事がある。

ある程度ならハゲも答えてくれるに違いない、俺とハゲは名バッテリーだしな。


「ここって、死後の世界ってやつですよね?」

「うん、そうだな、お前達にはそんな所だ。三途の川って表現も近いな。」

「あの不躾な質問ですが、死後の世界って宗教的には、その、どの宗教が正確なのでしょうか?」

「うーん、どう答えたものか、お前の中にある宗教の感覚でおおよそ間違っていない。あまり心配するな。」

心配するなと言われても心配しかない。

だって、宗教ってたくさんあるぜ。

俺が知っているのなんて、仏教とキリスト教ぐらいのもんだ。

地球では、ちょっとした教義の違いだけで殺しあいにまでなっているっていうのに。

雑すぎだろ、ハゲ。

ハゲの思う正解が、空翔ぶスパゲッティモンスターとかだったらどうしようか。


遠回しに聞いても時間の無駄だな、時間の猶予もわからない。

聞きたいことをストレートに聞いてみよう。

俺にとっては一番大事なことだ。

「それじゃ、天国みたいな所って、やっぱり、、、禁煙ですか?」

「あ、あぁ、全面禁煙だな。」


神は、俺に大きな十字架を背負わせていたようだ。

当たり前です



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