欲しがり妹は終わらない
※ これを悪役令嬢を主に扱うシリーズに入れるか迷いましたが、悪役令嬢ものの定番設定である欲しがり妹が出てくるのでブチ込みました。 ご了承をお願いいたします。
※※ 前提として、この姉妹の設定は特にありません。 貴族の令嬢なのか、現代っぽいどこかの家の姉妹なのかさえ、未設定です。
どこか異世界の出来事として見てくださいますよう、お願い申し上げます。
姉が大好きな妹。
妹をそこそこ大切にしてきた姉。
妹の可愛いおねだりに、ついつい甘やかしてしまう姉。
そして……。
本気になった。
なってしまった妹。
お姉さま?
わたしホレシュガルーナは、お姉さまが大好きです。
だから…………………。
お姉さまの使っているペンをちょうだい!
お姉さまの使っているノートをちょうだい!
お姉さまが愛用している日記帳をちょうだい!
お姉さまが昔身に付けていたリボンをちょうだい!
お姉さまが昔身に付けていたペンダントをちょうだい!
お姉さまが以前、ホレシュガルーナとお揃いねって笑顔を見せてくれた、コサージュをちょうだい!
お姉さまが以前わたしを守るために受けた傷を治療する時に使った、お姉さまの血が染み込んだ包帯をちょうだい!
お姉さまに何度頼んでもくれなかった、大切なぬいぐるみをちょうだい!
お姉さまに何度頼んでもくれなかった、お父様からのプレゼントであるバレッタをちょうだい!
お姉さまが婚約者からもらった、綺麗なカメオをちょうだい!
お姉さまが婚約者からもらった、枯れない花束をちょうだい!
お姉さまがいつも使っている、お姉さまの香りが不断にこもった寝具一式をちょうだい!
お姉さまがいつも着ている、お姉さまの全てを表す普段着をちょうだい!
ううん、これらは別に本当に欲しいものじゃないの。
本当に欲しいのはね?
お姉さまの気持ちが欲しいの!
お姉さまの愛情が欲しいの!
お姉さまのココロが欲しいの!
お姉さまの視線が欲しいの!
お姉さまからの注目が欲しいの!
お姉さまに手を握って欲しいの!
お姉さまに手を包んで欲しいの!
お姉さまに体ごと包んで欲しいの!
お姉さまの唇が欲しいの!
お姉さまの唾液が欲しいの!
お姉さまに舌をからめて欲しいの!
それでね?
お姉さまの髪が欲しいの。
お姉さまがわたしの声を聞きとる耳が欲しいの。
お姉さまがわたしを映す瞳が欲しいの。
お姉さまがわたしを呼ぶ声が欲しいの。
お姉さまがわたしに寝る時に落としてくれる唇が欲しいの。
お姉さまがわたしを触れてくれる手が欲しいの。
お姉さまがわたしを自慢の妹だと抱き締めてくれる体が欲しいの。
その体を動かす血肉が欲しいの。
それを支える骨が欲しいの。
わたしが愛してやまない、お姉さまの姿が欲しいの。
わたしが羨んでやまない、お姉さまの魂が欲しいの。
わたしが欲してやまない、お姉さまの全てが欲しいの。
ねえお姉さま?
わたしにちょうだい?
ありがとう、お姉さま。
これでお姉さまの全てはわたし、ホレシュガルーナのものよ♪
って、全部もらったのだから、私がお姉さまなのよね。
あらあら、私ったらはしたない。
何でもかんでも欲しがるなんて、可愛い妹のホレシュガルーナみたいだわ。
………………あら?
そう言えばホレシュガルーナはどこへ行ったのかしら?
私の可愛いホレシュガルーナー!
私が大切にしていたものをいつも欲しがっていたホレシュガルーナー!
またあなたを撫で撫でしてあげますわよー! いらっしゃーーい!
…………不思議ね?
いつもはこう呼び掛けてあげれば、そうしない内に飛んででもやって来ていたのに。
ホレシュガルーナー!
ホレシュガルーナーー!!
どこかしらー!
ホレシュガルーナーーーっ!!
姉の全てを手に入れ、妹は姉となる。
姉となった妹は、今度は愛する妹を失ってしまう。
だが、愛は続く。
新たな妹を見つけ、姉となった妹が、愛する妹へ全てをあげる為に。