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第八十三話

 キマイラ達はその後、戦勝を祝う式典には参加せず、ドレスリンの館へと帰った。

 帰り際にヴィクトリアは再三キマイラ達を軍に勧誘していたがキマイラとエイラはついぞ首を縦に振ることは無かった。


 「うわぁ…」


 「何とも…」


 「まあ仕方ないですよね。だいぶん放置してましたから」


 帰っては来たが館は荒れ放題、ミリーが来る前よりも酷かった。

 幸い蛮族達の死体はエイラ達が片付けてくれているが。


 「また一緒に掃除しましょう。まずは中ですね。クルトおじさんのお墓も移さないと」


 「…ミリー」


 「はい、なんでしょう?」


 赤髪をなびかせ、腕まくりをして館に入っていこうとするミリーをキマイラは引き留めた。

 キョトンとした顔を向けてくる彼女。


 「お前、やっぱり人間の所で暮らしたほうが良い。今ならお前も帰れる」


 彼女は今や戦争勝利の英雄の一人、無下にする人間などいないだろう。

 それに…


 「お前も懲りただろう。傷ついて。何度も殺されそうになって…」


 「そうですね。でもそんなのは関係ありませんよ。私はここに居たいんです」


 「何故?」


 「さあ、何故でしょうね?ふふっ」


 「おい待て!」


 彼女は微笑みながらキマイラと一緒に館へと走っていった。






 「キマイラ殿は勝ったようですよ。エイルバー様」


 蝋燭の明りだけがゆらゆらと揺れる暗い部屋の中でエイルバーとベッファが話し合いをしていた。

 露骨に不機嫌そうなベッファと違い、エイルバーは喜色満面。

 ベッファが部屋に入ってくる寸前まで彼は大酒を飲んでいたことも理由の一つだろうが…


 「みたいだな。さてそろそろ俺たちも動くぞ」


 「ええ」


 「…『例の本』を探さないとな」


 そうつぶやくと、エイルバーは蝋燭を消して部屋の外に出た。






 「まさかお前が軍に来てくれるとはな。嬉しいぞ」


 「ありがとうございます」


 微笑みながら握手を交わすのはクラウとヴィクトリア。


 「お前の能力は有用。いや暗殺にとんでもなく向いてるそれ相応の報酬も約束しよう」


 「はい」


 クラウは既に軍服に着替え、いくつかの勲章を胸に付けている。

 誇らしそうな顔をするクラウだったがどこか含みのある顔をしていたように見えた。


 「さてまずは…」


 「キマイラの報酬代わりの情報ならすでに他の人間に探させているぞ?」


 「いえ、他にやることがあるんです。ああ無論軍の仕事の合間にやりますのでご安心を」


 「やること?誰か他の人間探しか?それとも殺しか?」


 「そんな物騒なことじゃありませんよ。私の所有する資産。全て売却します」


 「ハァッ!?」


 驚愕するヴィクトリアをみて彼女は呵々大笑した。

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