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第八十一話

 「クソッ、クソッタレ!!どうしてこうなった!?」


 「偵察に向かわせたところ、海岸線には軍艦と海軍兵がかなりの数うろついています」


 「陸は砲兵と投石器、バリスタ、歩兵、化け物が二体に魔術師多数…」


 森に逃げ潜んだ蛮族達だったが彼らの顔には絶望の色が浮かび、その場で休息を取っている人間も疲れきっている。


 「王よ!砲撃が始まりました!!」


 「来たか…」


 砲撃の音が辺りに響き渡る。

 抵抗しようにも大砲に囲まれているような状況では難しい。

 最後の頼みのハーレも目を覚まさない。


 「逃げるぞ」


 「王様、もう逃げ道などありません」


 「かくなる上は、全軍総攻撃です。我々の力と意地を見せつけましょう」


 砲撃が始まり、王の下に集まる彼等。

 敗北するのが見えている彼等は全滅覚悟で突撃しようとしているのだ。

 

 「行きましょう!王様!」


 「どうせ俺達に帰る国も守るべき家族もいない。あなたについていきますよ」


 「お前達…」


 「投降しても、奴らは我々を許さないでしょうしね」


 王は無言で受け渡された槍を握りしめ、その場にいる人間に向けて言い放った。


 「この砲撃が終わり次第、突撃に移る!神への祈りを済ませておけ!!」


 




 「前方に動きあり!蛮族共だ!」


 突撃してきた蛮族達に対し、帝国軍はバリスタ、大砲、矢で応戦する。

 通常なら恐れをなして逃げ惑うような苛烈な攻撃の数々だが、彼等は逃げるどころかむしろ士気が上がっていく。


 「くそっ…槍隊構えろ!突破されるなよ!!」


 あと少し、あと一歩、ただそれだけを繰り返す。

 そうすればいずれあの憎い敵に剣を叩きつけられるからと。

 

 「我に加護あれ!!」


 矢を受け、腕が千切れながらも一人の蛮族が大砲が並べられた陣地までたどり着いた。


 「ギャアアッ!!」


 「かかってこい!!もはや死など恐れんぞ!!」


 槍で腹を突かれればむしろ前進して帝国兵の首に剣を突き刺す。

 他の蛮族達もそれに続いて突撃。


 「奴に続け!!」


 「帝国兵を討ち取れ!」


 彼が息絶えると同時だった。

 砲撃から生き残った蛮族達が殺到する。

 一時的だが、蛮族側が優勢になった。


 「させませんよ!!」


 「消え失せろ」


 だがそんな状況は長くは続かない。

 キマイラとテュポーン。

 化け物と化した二人がまるで道端の石を蹴り飛ばすように蛮族達を蹴散らしていく。

 

 「来てくれたか!用心棒だ!」


 「やっちまえ!!」


 咆哮を上げながら爪で薙ぎ噛み砕き、猛進するキマイラ。

 対称的にテュポーンは蛇と化した下半身で薙ぎ払うのみ、決して誰も殺していない。


 「テュポーン、お前…」


 「私は人間は殺せない。そう誓っていますから」


 「この場では言うべきじゃないな」


 暴れまわる二人を止めることが出来る者は一人もいなかった。


 「こいつは無視して進め!!進み続けるんだ!!」


 「一人でも多く道ずれにしてやる!!」


 そんな彼らを無視して進もうとするが、その願いは殆ど叶わなかった。

 彼らから逃げられたとしても帝国兵が放った矢や突き出された槍の前に倒れ、鮮血を地面にぶちまけることになる。

 蛮族達は悉くが倒れ伏し屍の山を築き上げた。


 「もうやめるんだ、蛮族達よ!こんなものはもう戦争じゃない!全員死ぬ気なのか!?」


 テュポーンがそう叫ぶが、彼らの耳には届いていない。


 「無駄だテュポーン。こいつらは最初から自分の命なんて気にしていない」


 「しかし…」


 せめてもの情け、早くこの地獄を終わらせるためにキマイラはより一層力を入れて暴れ始めた。

 身体から蛇を生やし、その口からは毒を蛮族目掛けて勢いよく霧状にして吐いた。


 「がああッ!?」


 「何だこの霧は…」


 肌が爛れ、あるいは溶け、浴びた端から倒れていった。


 「次は何処だ…」


 「キマイラさん、もう必要ありません」


 いつの間にか人間の姿に戻っていたテュポーンがキマイラに手を触れながら、悲しそうに呟いた。


 「…そうか」


 気付いた時には辺りに蛮族達の気配は消え失せ、不気味なほどの静寂がその場を支配していた。

 

 

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