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第七十七話

 「う…ん…」


 「気が付いたかの」


 「ドリュアス…?」


 ミリーが目を覚ますと場所は森の中。

 そばにはドリュアスと兵士が鎮座している。


 「何があったの…ここは…」


 状況が何一つ読み取れない。

 ここは何処なのか?

 ドリュアスが穏やかな顔で座っているところを見るに助かったようだが…


 「お前さんが食らいついた龍はキマイラが始末した。それと港に関しても…」


 「スラウニア海軍がトゥールスの港に到着した。戦闘はあったが損耗は軽微。勝ったんだ」


 「ウッディーネ…は?」


 ミリーが魔術師の一人を倒したはずだが、それでも数が圧倒的に足りなかったはず…


 「今エイラが向かっておる。キマイラも、皇帝達もじゃ」


 「おまけに各地に送っていたウッディーネ陸軍も集結し始めた。勝てるぞ、この戦争に」


 嬉しそうに話す兵士だったが、彼女の心中は複雑だった。


 (結局私、キマイラさんの力に頼りきって…何もできなかった)


 落ち込みながら空を仰ぐ。

 そうして暫くすると、何処からか羽音が聞こえてきた。

 虫のようだが、それにしては大きな音…


 「あれって…」


 木々の間から見えたのは翼を生やした人間達。

 見たことのある栗色の髪の青年と、それを支えながら飛ぶ白髪の少女。


 「テュポーンさん!?」


 「なんじゃと?」


 つられてドリュアスも空を見上げ、目を見開いた。


 「テュポーン!!降りてこい!!」


 「兄様!?」


 驚いた声をあげながら、彼らは降りてきた。






 「ようやく来たか!!キマイラ!クラウ!」


 「エイラか!?何があった!?」


 クラウに連れられ、ウッディーネ前まで来た二人。

 だが二人が見たのは地獄のような光景だった。

 お互いの兵士達が咆哮をあげながら、剣を叩きつけ、折れた槍で殴り付ける。

 倒れた兵士は敵味方問わず踏み潰され息絶えた。


 「混戦状態だ!迂闊に手を出せん!」


 彼女は少し離れた場所で様子を伺っていたが彼女の炎は広範囲を攻撃するもの、味方を誤爆してしまう。


 「クラウ、エイラ、腕はなまってないな?」


 「はい!」


 キマイラは落ちていた斧を、クラウは短剣を、エイラは自前の長剣をそれぞれ構えた。


 「飛び込むぞ!」


 「ああ!」


 「はい!」


 敵味方で混沌とする場所に彼らは飛び込んだ。

 背中を向けている敵に斧を叩きつけ、長剣で突き刺し、短剣で首筋を切る。

 そうして突き進んでいくととんでもない声量の咆哮をあげながら、女戦士がキマイラ目掛けて突っ込んできた。


 「ハイヤァッ!!」


 「グオッ!?」

 

 聞きなれた声と共に振り下ろされた曲剣を斧の柄で受け止める。


 「ヴィクトリア…か?」


 「ああ糞馬鹿キマイラか!?」


 返り血で顔が汚れていて一瞬判別がつかなかったが、紛れもなく彼女の声だった。


 「ッ!どけッ!」


 片腕だけでキマイラを弾き飛ばすと、後ろから迫って来ていた蛮族を切り伏せた。


 「説教は後にしといてやる!手ぇ貸せ!」


 「ああ、分かった…」


 彼らは互いに背中合わせになり、迫り来る敵を倒していく。

 頭を叩き割り、首を切り落とし、滴り落ちた血が乾くより早く次の血で上書きされていく。

 

 「次はどいつだ!かかってきやがれ!!」


 戦場の熱気にあてられ、誰かがそう叫んだ。

 だが次の瞬間には背中から刺され絶命する。

 四方八方から敵が襲ってくる。

 中には先ほどのヴィクトリアのように味方でも構わず攻撃する者もいた。


 「あとどれ位倒せばいい?」


 「知るかそんなもん!敵に聞きやがれ!」


 いくら切り伏せても次がくる、キリがない。

 このまま最後の一人になるまで戦い続けるのだろうか?

 そう考えていた時だった。

 

 「双方武器を下ろせ!!最早戦うことはない!!」


 剣戟と鬨の声で埋め尽くされた戦場にも響き渡るほどの声。

 その場にいる者全てが声の主の方を見た。


 「我が名はテュポーン!東の地、ドレスリンにてメリザンド・ベルナールを打ち倒した者である!」


 「そんな…馬鹿な……」


 空を飛びながらそう告げるのは栗色の髪をなびかせるテュポーン。

 鎧の欠片を掲げて叫ぶ。


 「蛮族共よ聞け!東に攻め行った同胞は全滅した!トゥールスの港に残してきた兵士と家族の命は、我等帝国が握っている」


 政治家のような、もしくは劇団員のような光景。

 そして演説をする彼の周りに無数のエキドナが集まってきた。


 「降服せよ!さもなくば我等の力と怒りを見るぞ!」


 それからは様々な反応が見られた、彼の言葉を信じ戦意を失う者、訳もわからず手当たり次第に攻撃するもの、呆然と立ち尽くす者…

 様々だ。


 「勝ったんだな…テュポーンは…」


 「みてぇだな」


 蛮族達の鬨の声は次第に消えていった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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