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第七十話

 「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」


 凄まじい雄たけびを上げながら死人の群れに突撃していくキマイラ。

 周囲の敵を踏みつぶし、爪で引き裂き建物を破壊しながらただひたすら突き進む。


 「よし!運び出せ!周囲の警戒を忘れるな!」


 「後ろからも来てるぞ!民間人に近付けるな!」


 そんなキマイラの後ろを行くのは皇帝達。

 向かい来る死人を切り倒し、大砲と弾薬を運び出す。


 「本当に…化け物だったのですね。あの青年は」


 「ああ、だが今は味方だ。安心してくれ」


 「ですがいずれはこちらに牙を剝くのでは?」


 不安そうな表情を浮べる技師。


 「…この戦争が終わればその対策も考える。幸い対話が出来る相手だからな」


 「……」


 対話…

 人よりも圧倒的に強い彼がそれに応じるのだろうか?

 とても不安だ。


 「だがまずはここからの脱出だ。最短の道を選ぶが注意しろ」


 「ハッ!!」


 周囲の兵士と同じく皇帝も剣を抜き、周囲の取りこぼした死人を切り払う。

 歳をとり力は落ちているもののその剣技には微塵の衰えも無い。

 

 「急げ!あいつがへばる前にな!!」


 大砲を押しながらヴィクトリアが叫ぶ。

 鉄の車輪を付けているとはいえその重量もある。

 瓦礫だらけの道を行くのは容易ではないため必然的に回り道をする羽目になる。

 

 「他の部隊は!?」


 「のろしは上げた!気付けば撤退する!」


 半ば叫びながら皇帝たちは出口を目指した。

 だが道には死人の群れがいるためそれも思うようにはいかない。


 「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」


 咆哮をあげながら先頭に行き死人を蹴散らすキマイラ。

 

 「やっぱりいいなアイツ!欲しい!」


 ヴィクトリアが興奮しながら叫ぶ。


 「気持ちは分からなくもないが後にするんだ!ヴィクトリア!」


 戦いながら脱出まであと半分の所まで来た時、キマイラの身に異変が起きた。


 「限界だな!助けに行ってくる」


 彼の身体が見る見るうちに人間の姿に戻り、そのまま地面に倒れてしまった。

 化け物としての活動の限界、これからは彼無しで出口を目指さなければならなくなった。


 「すまんな…お前たちはこの国の大事な国民なのに」


 キマイラの元に駆け寄りながら死人を見つめ、悔しそうに呟くヴィクトリア。

 彼らは元々はこの国の人間だった者達であるはず。

 本来は手厚く弔ってしかるべきはずだ。

 だが彼らは眠ることを許されず、挙句の果てに首を切り落とされ魂すら冒涜している。


 「奴らに報いはくれてやる。だから今は…」


 やや俯きながら、彼女は曲剣で目の前の死人を斬り払った。

 

 「我々に道を譲ってくれ…」


 大砲にキマイラを乗せ、彼らは再び歩き始めた。


 「…………」


 大砲に乗せられた彼を見て、皇帝はあることを思っていた。


 

 このままこの男の首を切り落とせば今後得体のしれない化け物に悩まされることは無くなるのではないか?



 自然と剣を握る手に力が入る。


 「陛下?」


 「……」


 いきなり剣を持ち立ち止まった皇帝に兵士が話しかけるが、どうにもその言葉は届いていないようであった。


 「危ない!!」


 「…ッ!?」


 目の前で死人が襲い掛かってきて、ようやく我に返った彼。

 危なげながら手にした剣で打ち払った。


 「大事ありませんか!?」


 「あ、ああ。大丈夫だ」


 (…馬鹿げた考えだったか)


 仮にここで彼を殺せたとしても残りの魔術師がいる。

 下手な行動をすればこちらがやられてしまうだろう。

 先ほどの事は忘れ、まずは目の前のことに専念することにした。






 「ただいま戻りました!状況はどうなっていますか!?」


 トゥールス前にクラウとエイラが戻った。

 そこでは騎兵が待機していて皇帝達の帰りを待っていた。


 「クラウ殿!それにエイラ殿も!陛下達はトゥールスへ民間人の救出に向かいました。今我々は待機しております」


 「クラウオ姉チャン!」


 真剣な話などどこ吹く風で馬から飛び降り、クラウの元へと駆け寄るエキドナ。

 どうにかしてくれないかとエイラに視線を向けるが光の速さで目を逸らした。


 「私はどうするか…迂闊に攻撃できんな」


 「エイラ殿にはウッディーネに向かって頂きたい!今ミリーさんが行ってます!」


 「分かった、では行く……」


 最後まで言い終わる前に一本の矢が彼女の脇腹に突き刺さった。


 「…ッ!?」


 「敵だ!!数は不明!」


 驚愕する彼女達をよそに、トゥールスとは反対方向から現れる蛮族達。

 彼等は完全に背後を突かれる形になってしまった。


 「エイラ!」


 「どうやら暫くミリーの所へは行けないな…」


 

読んで頂きありがとうございます。

意欲向上の為、評価、ブックマークをしてくれると嬉しいです。

それではまた。

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