第六十八話
「どうなっている?これは…」
「ロイスか!!よくぞ戻った!向こうの状況はどうなっている!?」
蛮族達の王の元に龍が舞い降りる。
魔術師のロイス、彼は周りを見て呆れていた。
がむしゃらに突撃していく兵士達、バタバタとなぎ倒されそれでも突撃を止めない彼ら…
もっと違うやり方があるだろうにと思わずにはいられなかった。
「…向こうは全滅だ。敵の魔術師に一掃された」
「何だと!?」
「こっちはどうなってるんだ?手筈が違うぞ。トゥールスで武器をかき集めるはずじゃなかったのか?」
「トゥールスの人間に攻撃を受けてな…」
なさけない。
魔術師を連れていながらただの人間にすら敗北するとは…
「それでメリザンドは?」
「あいつは敵がきた瞬間に逃げたよ」
「そんな馬鹿な…」
王は頭を抱えた、彼の中で彼女は忠誠心に厚い戦士であった。
それがまさか敵前逃亡するなど…
「何かの間違いじゃないのか?」
「事実だ、それでどうする?もうトゥールスの港に残してきた部隊とここしか居ないぞ?」
「ええいクソッ!!」
現在ここに集結している蛮族はおよそ三万、港には船を置いてきている上こちらに馬などの足が無い…
「まずい…まずいぞこれは…」
このまま敵に増援が来るか、もしくはハーレが敗れてしまったら…
間違いなく敗北する。
「当初の予定ではドレスリンを襲撃、制圧しつつ本隊がトゥールスで武器の補給、ウッディーネを落とせば終わるはずだった」
そんな状況と知ってか知らずか、彼の声は冷静そのものだ。
「第一俺達の『友人』だったはずのトゥールスの宰相はどうした?あいつの情報どうりならここまで困ることはなかっただろうに」
「武器はあったさ…情報どうりに…剣や槍、大砲の類いもな…だがほとんど使い物にならないものばかりだった粗悪な鉄で出来たものや振れば折れそうな剣、頼みの大砲は割れが見えていた」
「自分の命をかけて俺達を騙した訳か…中々やるな」
「関心している場合か!ともかくまずはハーレの救援を頼む!あれがお前の言っていた『ベルガー家』の者だろう?」
ロイスは静かに轟音と砂煙が舞う方に目をやる。
死人の巨人と互角に渡り合う三つ首の化け物…
「いいだろう、やってやる」
「ああ、頼む」
「俺の力を存分に見るがいい」
そう言った彼は口笛で龍を呼び寄せ、化け物目掛けて飛んでいった。
「ガァッ!!」
「…ッ!!」
野獣の如き咆哮をあげながら攻撃を仕掛けるミリー。
一見すると彼女の有利に見えるが、胸中には焦りが出ていた。
(…もう、限界が近い)
身体が言うことをきかなくなってきていた。
もう少しすればいつぞやのように人間の姿に戻り身体が崩れ去ることになるだろう。
(弱点は…無いの?)
彼女はすでに巨人の様々な部位を攻撃しているがすぐに再生してしまう。
何処かに必ず弱点があると思っていたが…
「ガァッ!!」
何度目かの爪での攻撃、最早数えるのも億劫になり始めたころに『それ』は見えた。
「ッチ!!」
「ミツケタ!!」
分厚い腐肉で出来た胸の内、攻撃で露出したところに顔の半分が腐り落ちた女性が見え視線が合った。
間違いない、ミリーはそう核心する。
「させんぞ!」
「ナッ!?」
止めの一撃とばかりに振り下ろそうとした爪。
だがそれは何者かの体当たりで防がれた。
「ベルガー家の化け物!ようやく見つけたぞ!」
「ジャマナ…アトスコシナノニ…」
龍に跨がり飛んでいるロイス。
彼女の攻撃を阻んだのは彼だった。
「ロイス!?何故ここに!メリザンドと一緒じゃないの!?」
「黙ってろ。さあ俺と戦え。化け物よ」
「………」
彼女は心の中で歯噛みする。
あと少しで倒せるのに…
「ウゴケ…ワタシノカラダ!!」
最後の力を振り絞り、全力で巨人の胸に爪を突き立てる。
「ぐっあぁあああああああ!!」
「ハーレ!?貴様!!」
龍は無視、動けなくなる前に止めを刺す。
敵の魔術師と思われる悲鳴が響いた後、死人の巨人は徐々に崩れ始めた。
「あ、貴女の勝ち…みたいね…」
崩れさった後に残ったのは半身を爪で引き裂かれたハーレだった。
間違いなく瀕死の重症、なのだが…
「ア、アアッ……」
ミリーも無事では済まなかった。
化け物としての形態を維持出来ず人間の姿に戻ってしまっていた。
「…何だ?お前人間だったのか」
「うっ…ぐぅ…」
腕がずるりと落ち、足がひとりでに千切れ…
最早芋虫のように這いずり回る事しか出来ないミリー。
「気が変わった。お前は連れていこう」
「な、何…?」
苦しそうに呻く彼女などお構い無しに、龍に命じて掴み上げさせる。
「待ちなさい…ロイス…」
ハーレの言葉には耳を貸さず、彼は何処かへと飛び去った。
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