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第六十六話

 キマイラがトゥールスで、ミリーがウッディーネで戦っている最中、荒れ果てた荒野で二人が戦っていた。


 「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」


 「…ッ!!」


 変化し、雷をものともせず突き進んでくるテュポーン。

 そして…


 「………」


 無言で雷撃を放つメリザンドである。


 (…頑丈すぎる)


 焦りを見せないテュポーンと違い、メリザンドの方はというと心中穏やかではなかった。


 (もう何度も『杖』で攻撃しているのに消耗すら見えない。文字通り化け物だね…)


 とはいえメリザンドの方も勝ち目がないわけではない。

 キマイラやミリーと同じく、彼にも変化していられる時間には限りがあるからだ。

 その証拠に彼は今全力で向かってきている。

 防御を完全に捨てて、攻撃のみに集中しているのだ。

 

 「…ッ!」


 「避けるのがお上手ですね…攻めきれない」


 「お褒め頂き恐悦至極」


 時間を稼ぐ、彼女の頭にあるのはそれだ。

 

 「僕の技は効いていないのでしょうか?全力を出しているつもりですが…」


 「さあどうでしょうな」


 予想は出来ていたが飄々と呟くだけで真意が全く見えない。

 

 「さあ、お互いに時間はありません。どうか悔いなき戦いを。心が躍る戦いを」


 「その通りだ。テュポーン殿」


 彼女の短剣が煌めき、周囲に巨大な雷球が出現する。

 その数六発。

 そのどれもが近づいただけで身を焦がすような高熱を放つもの。


 「…一発づつしか放てないものかと思っておりましたが」


 「マナさえあれば何発でも撃てますよ。さあ、どこまで凌げるか…僕に見せてください」


 綺羅星の如く降り注ぐ雷の雨、それらすべてを彼は体で受け止め続けた。


 「…グッ、ウウッ」


 何度も繰り出される雷撃に彼は初めて苦悶の声を上げた。

 その巨体にも段々傷ができ血が滲んできている。

 彼女の口元が不思議と緩んだ、徐々に自身の方が優勢になりつつある…と」

 

 「Gaaaaaaaaaaaaaaa!!」


 彼女は身を翻し、テュポーンの拳をよける。

 彼の攻撃は威力はあるが大振りで軌道も読みやすい。

 一般人ならいざ知らず、数々の修羅場を潜り抜けた彼女ならば避けることも可能だろう。

 

 「止めッ!」


 距離を取り、同じように雷球を発生させ、投げつけようとした。

 しかし…

 

 「何ッ!?」


 突如テュポーンは変化を解いたかと思うと姿を消した。


 「ど、何処に行った!?」


 雷球を消し、周囲を警戒するが、彼は居ない。

 遠目に見えているエキドナだけだ。

 

 「何処に…」


 「こっちですよ」


 「なっ!?」


 テュポーンの声が聞こえた瞬間、彼女は背後から背中を手刀で刺された。

 

 「…全く、卑怯なことを…マグワイヤ家の転移魔術か…」


 口角から血を流し苦悶の表情を浮べるメリザンド。


 「私のこれは一度しか使えません。それも近距離しか移動できない…だから最後の最後に使うしかなかったのです」


 「そう…」


 手刀を引き抜くと、溢れた血が地面に滴り落ちた。

 しかし血は決して地面を濡らすことなく、砂となって風にまかれ消えていく。

 

 「楽しかったよ。少しの間だけでも主からの命令も忘れて…本当に楽しかった」


 「ええ、私もです」


 「地獄で待っているよ。貴方の事を」


 力が抜け、テュポーンに体を預ける。

 すでに彼女は手先から砂になって消えていっている。

 完全に消えるまで、間もないだろう。


 「それは不可能ですよ」

 

 「え?」


 きょとんとする彼女。


 「貴方は天国に行くのですから」


 その言葉に、彼女は穏やかな笑みを浮かべつつ…



 砂になって消えた。









 

 

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