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第六十四話

 「よし突っ込め!」


 「行け行け行け!」


 そう叫びながら手投げ式の爆薬で死人を吹き飛ばし、彼らは進む。

 皇帝、ヴィクトリア、特殊攻撃部隊…

 それと槍をもったキマイラだ。

 騎兵隊とエキドナは待機している。


 「本当なのか?地下に空間があるなんていうのは」


 「ああ間違いない。地下水道、地下工房、火薬庫もある。無論そこが破壊されていなければだが…」


 「そうか…」


 皇帝の言葉によると、トゥールスの地下…そこには工房などが存在しているようだ。

 それも有事の際は封鎖できるように岩や鉄の扉などが存在しているという。

 蛮族達が侵入していなければ生き残りがいるかもしれない。

 彼らは今救出に行っている。


 「その道を左に…ああ糞ッ!また居やがった!」


 「どんだけ居やがるんだ!?後ろにも居るぞ」


 とはいえ今のトゥールスは死人の楽園、尋常ではない数が出てくる。


 「首を飛ばせ!少なくともそれで胴体は動かなくなる!」

 

 キマイラが何体か倒した死人は頭を潰せば少なくとも動きを止める。

 首を切り落とした場合は胴体は動かなくなり頭は生きている状態になる。


 「…ッ!」


 短く息を吐きつつ、剣で薙ぎ、突き進む兵士達。

 それを見て、キマイラは内心感心していた。


 (数は少ないが…人間にしては強いな)


 特殊攻撃部隊…皇帝達がそう呼ぶ兵士たちは全員一撃で首を切り落としている。

 それが叶わなかったとしても足を切り落として死人の動きを鈍らせるなどしている。

 通常人の首は頑丈に出来ていて、普通に斬っても途中で刃が止まってしまうものだ。


 「ぼさっとするな!」


 いつの間にかキマイラのすぐ横まで迫っていた死人を、皇帝が切り伏せる。


 「…すまん」


 「礼はよい。進め!早く!」


 彼らが目指すのは地下への入り口。

 彼らの足は自然と早くなった。






 「フンフンフーン」


 上機嫌に鼻歌を歌っているエキドナ以外、トゥールス前に待機している兵士たちの表情は厳しい。


 「嬢ちゃん。要るか?」


 「ナニコレ?」


 世話役をかって出た兵士は腰に下げている革袋から何やら茶色い爪の先ほどの大きさのものを出した。


 「胡桃だよ。栄養もある」


 「アリガトウ!オジサン」


 彼女は嬉しそうにそれを受け取ると、ぽりぽりと食べ始めた。


 「なあおい…あのキマイラとかいうやつはともかく、こいつは本当に化け物なのか?見た目だけならただの子供だぞ?」


 「分からん。だがどちらにせよ守らなきゃならんさ。無論トゥールスの生き残りもな」


 兵士たちが口々に噂するが、彼女はどこ吹く風だ。


 「まあとりあえず陛下が戻るまで待つぞ。放った偵察もいるしここに敵が来ないとも限らんからな」


 「ああ、そうだな」


 「オジサン達ハ私ノ力ガ見タイノ?」


 「…ッ!?」


 会話していた二人の表情が固まる、先ほどまで馬に乗っていた彼女が胡桃片手に音もなく隣に来ていたからだ。

 笑顔のはずなのに心なしか先ほどまでの無邪気そうな笑顔とは違うように見える。

 どこか無機質で…形容しがたい不気味さを放っている。


 「見セテアゲヨウカ?」


 「あ、ああ…見せてみろよ」


 ほとんど強がりだった。


 「ヨイショ…」


 彼女は少し背中を丸めると、少し力を入れると…


 「ヨッ…ドウ?綺麗デショ?」


 背中から蜉蝣のような羽を生やした。


 「…あ、ああ」


 「フフン。自慢ナノ」


 「そ、そうか」


 えっへんと胸を張る彼女。

 そこには先ほどのような不気味さは微塵もなかった。

 ほっと胸をなでおろす兵士達。


 「おいおい、勝手に動くなよ」


 「ゴメンネ、オジサン」


 そこに子守り役の兵士が歩いてきた。


 「…お前、よく引き受けたよな。この子のお守り」


 薄気味悪い子供、それも得体のしれない化け物の子供など手元に置くだけでぞっとする。


 「俺には子供がいるんだ。ちょうどこの子ぐらいの。だからほっとけなくてな」


 「お前に子供がいたのか!?」


 「ああ」


 彼は首から下げていた首飾りを見せる。

 それには女の子の顔が彫られたナラの木の板が付いていた。

 きっとそれが彼の子供なのだろう。


 「はー…なんというか意外だな。独身だと思ってたぞ」


 「女っけの欠片もないもんな。お前」


 「余計なお世話だ」


 「オジサン子供ガ居ルノ?」


 「ああ。戦争が終わったら真っ先に会いに行くんだ。なにがなんでもな」


 「そのためには生きて帰らなきゃな。頑張れよ。お前の家族に形見渡しに行くなんて御免だからな」

 

 「ああ、勿論だ」


 

読んで頂きありがとうとございました。

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それでは、また。

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