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第五十二話

 「ここが合流地点だ。止まれ!」


 皇帝の号令で全員が馬を止める。

 空は既に暗い。

 野営の準備をするように指示をだした。


 「休息をとるぞ。兵士達も疲弊している」


 「食料の配給を手伝ってきます」


 「頼んだ。それと酒も少量なら配給していい」


 場所はトゥールスに続く大きな道。

 石畳が敷かれきっちりと整備されている。


 「キマイラさん。降りられます?」


 「ああ」


 キマイラ達も馬から降りる。

 

 「これだけの部隊で足りるのか?」


 周りの騎兵を見ながらつぶやいた。

 たった百機、敵がどれだけいるのかすら分からないのにも関わらずだ。


 「特殊攻撃部隊がどれだけいるのか分かりませんが大丈夫じゃないでしょうか?」


 「その攻撃隊とやらは強いのか?確かクラウが一人連れてきていたが」


 「ああ、我が帝国は軍縮するにあたって少数精鋭の部隊を元々編成していた。一人一人が百人の敵を相手にできるだけの力を持った兵士達だ」


 「……」


 訝しむような視線を送るキマイラ。


 「まあ百人というのは誇張かもしれん。だが間違いなく強力な部隊だ。それだけは保証する」


 「…そうか」


 「さて…そなたらは食料の配給でも貰ってくるといい。爺が担当している」


 「承知しました。皇帝陛下」


 




 「そら、こいつがアンタらのだ」


 「ありがとうございます」


 配給担当の兵士から干した肉と鉄板のように固いパン、それと革の水筒に入った葡萄酒をもらう。

 蜂蜜酒をもらっている兵士もいたが、その辺はまちまちなのだろう。

 どれも日持ちはするが味はさしてよくないものだが、それでも腹を満たすには十分だ。

 

 「キマイラさん、貰ってきました…よ?」


 キマイラのもとに戻ると、彼は既に地面に寝っ転がって何かを咀嚼していた。

 

 「あの…何を食べてるんですか?」


 「…これだが?」


 彼がそう言いながら出したのは道の端に生えていた雑草。

 

 (…ドリュアスがそこら辺の雑草むしって食べてるなんて言ってたけど。本当だったんだ)


 「キマイラさん。ちゃんとしたご飯があるんですから。これを食べてください」


 「必要ない。ミリー、お前が食べてくれ」


 うーん、と首を傾げながら唸ってみる。

 彼が雑草を食べている横で普通の食事をするのは流石に気が引ける。

 できれば一緒に食べてほしいものだが…


 「よっと…」


 パンを半分に割り、干し肉を歯で無理やり割いてキマイラに渡す。

 


 「…必要ないと言ってるだろう?」


 「食べてください。私も気が引けます」


 「…分かった」


 ミリーの圧に押されむくりと起き上がりパンと干し肉を受け取る。

 かなり固いはずだが構わずばりばり食べていく。


 「…美味いな」


 「雑草よりおいしいでしょう?」


 そう笑いかけると、彼はばつの悪そうに顔を背けた。


 「葡萄酒は…キマイラさんが全部飲んでください」


 「どうしてだ?」


 「何故か分からないんですが…一度だけ一緒にクルトおじさんとお酒を飲んだ時に止められてます『お前は絶対に酒を飲むな!!』って凄い剣幕で」


 「酒乱か、ミリー」


 意外だった。


 「キマイラさんは飲めるんですか?」


 「ザルだ」


 「なんとなくそんな気はしてました」


 そんな風に談笑していると不機嫌そうな兵士が五人程現れた。


 「えっと…何か…?」


 「アンタには用はない。あるのはその男だ」


 「キマイラさんに?」


 ちらっと彼を見るが兵士には目もくれず、ちびちび酒を飲んでいる。


 「おい化け物、俺たちはあの山の生き残りだ。何か言うことは無いのか?」


 「無い」


 兵士たちに向き直ることもせず、表情を変えることも無い彼にいら立ちを覚える兵士達。


 「俺自らが山を出て戦ったわけでもなく。最初に山に入ってきた人間を追い払いはしたが、それだけだ。仕掛けてきたのはそっちで戦闘前に警告もした」


 「貴様ッ!」


 キマイラの襟首を掴んで無理やり立たせる。


 「…それだけの人数で俺に勝てると思ってるのか?」


 「勝つとか負けるとかじゃない。死んでいった奴の仲間には俺の友人も居たんだ」


 「で、仇討ちの為に挑んでお前も仇を討ってもらう側に回るわけか」


 「ッ!!」


 激昂して殴りかかろうとする腕を誰かが掴んで止めた。


 「何だ喧嘩か?面白そうじゃねぇか私も混ぜろよ」


 「ッ!皇后様…」


 「だから口調…」


 「陛下まで…」


 皇帝とヴィクトリアが止めに来ていた。

 彼女の方はとても目を輝かせていたが…


 「そなた等には悪いが…彼に挑んでも勝てる見込みは無い。先に仕掛けたのも我らだ」


 「しかし…」


 「手を引いてくれ。私はそなた等の仇討ちなどしたくない」


 「……」


 しぶしぶといった風に、彼らは去っていった。


 「ありがとうございます。両陛下」

 

 「つまらん…ステゴロならいいんじゃないのか?」


 「駄目に決まっているだろう?不和の原因を作るものじゃない」


 「男は喧嘩して友情を作るもんさ」


 「ふう…キマイラ」


 「何だ?」


 「食事のついでに少し話をしようではないか」


 「分かった」


 ミリーとヴィクトリアを残し、二人は道端の茂みに入っていった。

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