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第五十話

 「早いな…」


 ミリーを抱えて飛ぶキマイラがそう漏らした。


 「キマイラさん、今全速力ですよね…」


 「ああ…」


 二人の先を飛ぶのはテュポーン。

 身体の四倍以上はあろうかという巨大な翼で羽ばたき、彼が通った後には雲が出来ていた。


 「キマイラさん、降りていきます」


 彼は急に翼を折りたたむと、落下するように降りていく。


 「俺達も行くぞ」


 「あー…もしかして」


 「喋るなよ」


 「ああ、やっぱり」


 キマイラも同じように翼を折りたたみ落下する。

 何度も経験してきて慣れてきたが、それでも怖いものは怖い。


 「…あの女の姿は見えないが」


 「そうですね」


 着地と同時に激しい衝撃が頭のてっぺんからつま先まで響く。


 「ハーリン家の魔術というのはこれほどの威力があるのですね。先の戦争に参加していなくて良かったです」


 「聞こうと思ってたんですが…ハーリン家って…?」


 「おや?ご存じなかったのですね。エイラ殿の一族の名です」


 「俺も知らなかったぞ。エイラの名は」


 「…話さないほうが良かったかもしれませんね。暫く喋ることも無かったからか口が軽くなっています」


 少し顔を背けながら顔を僅かに顔をしかめるテュポーン。


 「お前はエイラの過去を知っているのか?」


 「少しだけです。しかし女性の過去を本人の許可なく話すのは無礼でしょう。さて…」


 「さて?」


 ミリーが首をかしげるのと同時に、周囲に大勢の人影が現れた。


 「何だ?こいつらは…?」


 「ど、何処から…」


 キマイラ達の前に現れたのは全く同じ顔の女性たち。

 それだけでも不気味なのだが、背中には蜉蝣のような羽が生えている。

 そんな異様な存在がキマイラ達の周りを取り囲んでいた。


 「…ここまで来ていただいて申し訳ありません。ですがここから先は私だけで行かせていただきたいのです」


 彼はそう言いながら、羽の生えた女性の隣に行く。

 

 「彼女の名はエキドナ。我が主、ペーター・ベルガー様が創造した最優の兵器です」


 「…俺たちを始末するのか?ここで」


 「ッ!!」


 エキドナと呼ばれた彼女はというと紅い瞳に白い髪、死人のような白い肌の少女。

 美しい顔ではあるが表情が無いせいで敵意があるのかどうかも分からない。


 「私も兄弟を殺める気はありません。ですが付いてくるというのであれば…多少の手傷は覚悟してもらいます」


 「大人しく尻尾を巻いて消えろと?」


 「…お願いします」


 「なぜそこまでする?」


 自分一人で戦うよりも、キマイラとミリーとで連携をとる方が確実に倒せるはずなのになぜそれをしようとしないのか。

 キマイラはそう思っていた。


 「…彼女、メリザンド殿を逃がしたのは私です。三度剣を交えてそれでも仕留めきれなかった」


 「それで?」


 「彼女を逃がす時、私は約束を交わしました。『次があればきっちり決着をつけよう』と」


 そう言いながら、彼は懐から短剣を取り出した。

 象牙で出来た柄の部分に女性の顔が彫られている。

 

 「うまく言えませんが…これは私一人で決着をつけなければならないのです」


 「……」


 「お願いします」


 「…しくじるなよ」


 「ええ、勿論です」


 そう言い、キマイラはミリーを抱えて飛び去った。


 




 「良かったんですか?あの人だけで行かせて」


 風で赤髪をたなびかせ片目を閉じながらキマイラに問うた。


 「いざとなればエキドナが加勢するだろう。問題ない。それに…」


 「それに?」


 「なんとなくだが、あの場ではああするのが正解だと思った」


 「ふふっ、そうですか」


 「何故笑う?」


 「笑ってませんよー」


 




 一方テュポーン達は…


 「行カセテ良カッタノ?」


 綺麗な声だがとてもぎこちない声でエキドナは問うた。


 「うん。私がしでかしたことだからね。私が後始末をしないと」


 「…本当ニ、テュポーンダケデ戦ウノ?」


 「正直それが望みなんだ。彼女と邪魔が入らない場所で全力で戦いたいんだ」


 「死ヌカモシレナイノニ?」


 「うん」


 テュポーンがそう返すと、表情は変わらないがどこか彼女は寂しそうに俯いた。


 「ソレガ、テュポーンノ望ミナラ…」


 「ありがとう、エキドナ」


 彼女の額にキスをすると、彼らは焼け野原になった大地を歩き出した。






 


 

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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それではまた、次話にご期待ください。

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