第四十八話
西の都、トゥールス。
『帝国の武器庫』とうたわれている。
この都の武器、兵器の生産量は大陸でも随一で約七割の武器がここで生産されている。
都の周囲には高い城壁が設けられ外から侵攻してくる敵に強い。
そしてそんな都に、彼らはいた。
「我らは貴様等が『海の蛮族』と呼ぶ者だ。本来は違う名があるが、今はこう名乗ろう」
蛮族達である。
都の中心で人を集め、回りから王と呼ばれている男が演説…というより要求をしていた。
「既に城壁は閉じた。出ようとする者は殺す。だがここに残り、我々の為に武器を作ろうと言うならば我々は受け入れる準備がある」
「そんなの信用出来るか!このクソッタレの野蛮人共!」
敵である彼等の言い分に反発する男が一人立ち上がった。
「貴様等が生きる道は一つだ」
王が指を鳴らすと、隣にいた男が喚く人間に向かっていき…
「ッが…ああ!」
長剣で心臓を突き刺した。
「こうなりたくなければ。我等に従え」
血にまみれた剣を受けとり、王は怪しく微笑んだ。
「…なんとも」
クラウとミリーから傷の手当てを受けつつ、キマイラが憎々しげに呟いた。
場所は皇帝のいるテベレスの石橋付近。
彼等の居る幕舎の外では騎兵隊が弓や曲剣で武装し残党狩りの準備を進めている。
「西の宰相は大分前から裏切っていたようでかなりの数の兵士が送り込まれています」
「他の場所にも敵がいるな、ここを襲ったのもそういう奴等だろう」
「すまぬ…」
皇帝は頭を下げた。
幕舎には帰ってきたヴィクトリアと将軍もおり、話を聞いた瞬間に頭を抱えていた。
「陛下、西に行きましょう。北と南の伝令を出して部隊を下げさせます」
「そうしよう」
敵の正確な場所も数も、これで分からなくなった。
「キマイラよ。西へと行ってくれ。あのメリザンドとやらはそなたと相性が悪すぎる」
「エイラはマナの補給に行き、クラウはそもそも戦闘力不足、ドリュアスもだ。一体だれがここを守護する?」
「…それは」
皇帝が頭を悩ませていると突如として雷鳴が聞こえた。
「来たな。さてどうするか…」
「キマイラさん、その…」
「なんだ?」
「私とキマイラさんであの人を挟み撃ちにすればいいんじゃ…」
それまで黙っていたミリーが口を開いた。
「メリザンドの魔術は本来、一対多数で真価を発揮します。今、彼女の周りに人間はいない。恐らく本気でかかってきますよ」
「でも、昔戦争があった時には、勝てたんでしょう?」
いつに戦争があって、なおかつどんな作戦をとったのかは分からない。
だが一度勝てたのなら何かしら突破口ああるはずだ。
「…正確に言うと、メリザンド個人には勝てていません。彼女が属していた派閥が敗北したから虜囚になり、処刑されただけです。結果的に生きていましたが…」
「そんな…」
「勝てる可能性があるとすれば…」
「なんだ?何かあるのか?」
顎に手を当て躊躇うような仕草を一瞬みせる。
「テュポーンとエキドナ…」
悩むクラウの代わりに、ドリュアスが答えた。
「儂の弟と、妹じゃ。確かにあ奴らならあの女とも互角に戦えよう」
「そんな人間がいるならなぜ教えんのだ」
皇帝が眉を吊り上げて抗議してきた。
「残念じゃが行方不明じゃ」
「そうか…いよいよ打つ手がないな。どうするか…」
「…ドリュアス。聞いてもいい?」
「なんじゃ?」
「その…テュポーンって人の見た目ってどんなの?」
「ジョンさん!居ますか!?」
本陣の近くの森、先程襲われた森をミリーは歩きながら叫んでいた。
「居ないのかな…」
『栗色の髪と黒い瞳の青年、キマイラと同じく変化できる』
「ドリュアスの言ってた特徴と一緒だし、ジョンさんが間違いなく…ジョンさむぐッ!?」
叫ぼうとした瞬間誰かに背後から口を塞がれた。
「お静かに…」
落ち着いた声だ。
「ぷはっ、じ、ジョンさんですか?」
手を放してもらい後ろを振り返る、そこには先ほど会ったジョンと名乗る人がいた。
「貴方の本当の名前は、テュポーン…ですよね」
「………」
「私を助けた時のあの見た目といい、その髪と瞳の色…間違いない」
「ミリーさん。私は別にその人とは関係ありませんよ。私はただの…少し変わった力のある人間です」
「だったら確認のためにドリュアスを呼びましょうか?」
「……」
ドリュアスの名前を出した瞬間、黙り込んだ。
「貴方に何があったのかは知りません。ですが今は貴方の力が必要なんです。お願いですから来てください」
「……私は、エルフリーナお嬢様に合わせる顔が無い。お断りします」
「来てください。それも含めてドリュアスから説明があります」
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