第四十六話
巻き上げられた土に爆風。
凄まじい爆音に驚きながら兵士達は村があった場所を見る。
「俺は幻を見てるのか?何もないぞ」
「安心しろよ。俺も同じものを見てる」
兵士達の言う通り、何もなかった。
エイラの放った魔術、『星』が炸裂し全てが消え失せた。
人も、家も、蛮族が築いた陣地も何もかも全てが全てが消し飛んだ。
後に見えるのは巨大な焼け跡のみ。
溶岩状に溶けた大地はまるでこの世の地獄である。
「なあ…俺達はもしかしてとんでもない奴らと契約したんじゃ…」
「…テベレス橋まで帰るぞ」
不安そうな兵士達。
「なんという…」
皇帝は目に映る光景に口を開けてただ佇んでいた。
「流石に疲れた…」
放ったエイラは疲れでその場に座り込んだ。
「…私は一旦キマイラの館まで戻る。補給が要るからな」
「…………」
「聞いているのか?」
「………………」
「おいッ!!」
放心状態の皇帝に叫んだ。
「あ、ああ分かった。我々は残党狩りに行く。感謝する」
ようやく正気に戻り始めた。
「陛下、少しお待ち下さい」
彼女に礼を伝えているとクラウが現れた。
「…西の侯爵の宰相に特殊攻撃部隊の人間か?」
皇帝は彼女が連れてきた人間にまず目が行った。
「こちらを、陛下に渡すようにと…」
彼は隊長から受け取った手紙に目を通し始めた。
みるみるうちに彼の表情が険しくなる。
「とんでもないことをしてくれたな。貴様…」
手紙を投げ捨て、激昂しながら襟首をつかみ上げる皇帝。
「…………」
手紙にはこう書かれていた。
「西の侯爵は宰相に毒殺された。宰相は蛮族と数年前より繋がり各地で略奪して得た宝石類、金銭などの一部を受け取っており、館の地下に侯爵の遺体とそれらの略奪品を蓄えていた…なんとも」
手紙の内容を読み上げながら、クラウの瞳が嫌悪に染まる。
「なぜこんなことをした!貴様はシャルルとは親子同然の関係だったはずだろうが!それほどまでに金が欲しかったのか!?」
「…金、ですか」
それまで黙っていた宰相が口を開いた。
「あんな金、使えるはずもない。他の都市から略奪してきた血塗れの宝など…」
「なら…なぜ…」
「…数年間、蛮族共は私に接触してきた。『我等を時がくるまで匿え』と」
怒りに震えながら、皇帝は話を聞く。
その手を腰の剣にかけながら。
「とんでもない数の船が押し寄せました。要求を飲まねば我らの都市を落とすとまで言って。要求を飲めば襲わないと」
「……」
「シャルル様は戦うと言いましたが…あの軍勢に敵うわけがない」
「で、貴様は奴らに抗うこともなく屈したと?他の都市を生け贄にして」
「貴様等には分かるまい!!我らの言葉には耳も貸さず歴代の皇帝は軍縮を推し進めてきた!その結果がこれだ!」
「抗うことなく敵に魂の売った貴様にそれを言う資格はない」
腰の剣を抜き放った。
「…私もいずれ貴様と同じところに行くことだろう。向こうで暫く待っていろ」
同時刻、キマイラ達…
「ゴホッゴホッ!無茶苦茶じゃねぇか!!」
「…助けてやったんだ。ありがたく思え」
土煙で目と鼻が痛い。
キマイラとヴィクトリアは赤子を埋葬していたせいで、逃げるのが少し遅れてしまっていたのだ。
結果彼らは、というよりキマイラは地面に穴を掘って彼女と共に逃げこんだ。
「出るぞ。早くしろ」
「ああ、ありがとうよ」
急だったとはいえかなりの深さを掘った。
人が三人縦に入れるほどだろう。
とはいえ穴の大きさ自体はさして広くない。
「せ、狭いなクソッタレ」
「……」
四苦八苦する彼女をよそにするする登っていくキマイラ。
負けじと彼女も登り、やがて穴から出ると…
「何とか出たな。…こりゃあ大惨事だな」
穴から出たヴィクトリアは唖然とした。
溶岩が冷え固まったような大地が村があった場所から円状に広がっている。
「馬は死んだな。歩いて帰るぞ」
「なんだ。てっきり置いていくのかと思ったぞ」
「そうしても良かったんだがな」
出撃する前、作戦を伝えるのと一緒にクラウから言われていたことがある。
『信頼を勝ち取るためにある程度は彼らを守ってください』
というものだ。
当の本人にそのつもりはなかったのだが…
「戦争は終わりだな。こりゃ」
「だといいがな」
メリザンドが死んでいれば安心も出来るのだが…
「ッ!?避けろ!!」
「なんだッ!?」
キマイラの眉間にいつか見たような光の束が当てられ…
「ギャアアアアアアアアアアア!?」
次の瞬間、キマイラの身体を雷が焼いた。
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