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第四十四話

 キマイラ達が戦っているアマルフィア海岸の近くに位置する村。

 そこから南に三里程の森の中、およそ一千人ほどの兵士たちが馬を駆りながらアマルフィア海岸に向かっていた。


 「止まれッ!!」


 先頭を行く隊長が顔をしかめながら馬を止める。


 「貴様、何者だ?」


 彼らの目の前に明るい茶髪の少女が居る。

 だが周囲に村などなくたった一人でこんな場所をうろつくなど不審にも程がある。


 「…クラウ・マグワイヤと申します。特殊攻撃部隊の方達ですね?皇帝陛下より書簡を渡すようにとご命令を受けました」


 少女の正体はクラウであった。

 

 「書簡?皇帝陛下がだと?」


 「はい。こちらに」


 「ふむ…」


 クラウが手渡したのは幕舎を出る前に渡された手紙。

 ちゃんと封蝋もしてあるのだが…


 「確かに皇帝陛下の印だ。だがなぜ貴様のような者が持っているのだ?」


 中身を確認しながら尋ねる兵士。


 (周りの兵士も中々ですね。いつの間にか囲まれてます)


 「私は魔術師なのです。望んだ場所に一瞬で移動できます。だから私が伝令役に選ばれたのです」


 「瞬間移動?そんなこと出来るわけないだろう?」


 「……」


 馬鹿にしたような口調の兵士に苛つきながら、彼女は自分の後ろの空間を歪め始めた。


 「なんだ?」


 呆気にとられながら見ていると彼女は空間の歪みの中に消えて行った。


 「ッ!?何処に行った!?」


 目の前の光景に驚きながら周囲を確認する兵士達。


 「隊長!後ろです!」


 「なっ!?」


 クラウはいつの間にか、兵士の背後に立っていた。

 子どもらしい笑顔だったが『ざまあみろ』というように嘲っているようにも見える。


 「これで、理解していただけましたか?」


 「…失礼しました。貴殿への非礼を詫びましょう」


 先程までの態度を改める兵士。

 

 「…書簡には連絡するまで待機すべし、とあるがこれは…」


 「私の仲間の魔術師が大規模に攻撃を仕掛けます。それが終わるまで待機せよと…すでに海軍には連絡してあります」


 「なるほど承知。それでお尋ねしますが貴殿のその能力、運べる人員や物資に限りはないのでしょうか?」

 

 「いえ、限りはあります。せいぜい五人まで、皇帝陛下がいらっしゃる場所までとなりますと少し歩かなければなりませんが」


 「ふむ…クラウ・マグワイヤ殿。一つ頼まれてはくれないだろうか?」


 「どうぞ?」


 「おい!連れてこい!」


 隣に居た兵士に命じるて暫く待つ。

 そうすると縛り上げた誰かを連れてきた。

 豪奢な服を身にまとい、いかにも身分の高そうな男性だ。

 顔を殴られ鼻を折られ、血塗れだが…


 「…この人は…蛮族の捕虜ですか?」


 酷い見た目だが眉一つ動かさず凝視するクラウ。


 「いや、奴らではないが。だがもっと質の悪い人間です」


 「はあ…」


 「シャルル殿…西の侯爵は知っていますか?」


 「確か皇帝陛下と仲の良い方でしたか…そのシャルル殿が何か?」


 「こいつに殺されました」


 「なッ!?」


 驚愕するクラウをよそに、彼は手紙を差し出した。


 「この男と手紙、それと部下を一人連れて皇帝陛下の下へ飛んで欲しいのです。可能ですか?」


 「…可能です。必ずお届けしましょう」


 彼女は手紙を受けとると懐にしまいこんだ。


 「では決まりです。タイラー!クラウ殿と共に行け!」


 「了解!」


 名前を呼ばれ、元気に出てきたのはくすんだ茶髪の青年。

 

 「クラウ殿、彼を護衛として連れて行ってください」

 

 「承知しました」


 (…監視役ですね)


 「宜しくお願いします。クラウ殿」


 「はい」


 クラウは先程見せたように空間を歪ませ、タイラーと男を連れて消えた。

 一瞬の出来事にその場にいた兵士全員が驚いていた。

 

 「タイラー一人で大丈夫なんでしょうか?まだ入ったばかりですよ?それにあの魔術師が手紙の偽造をした可能性も…」


 「手紙の文字は陛下のもので間違いないし、尚且つ我等の正確な位置を把握しているのは陛下のみ。大丈夫だろう。奴も我等特殊攻撃部隊の一員だ。それになにかしら実績があったほうが奴も自信がつくだろう?」


 「…不安です」


 「だろうな。それは俺も同じだ。だが不安だからと何もやらせなければただの無能が出来上がる」


 「はあ…」


 「お前も出世すれば分かるようになるさ」


 笑いながら肩に手を置く彼。


 「…手紙が魔術で筆跡を完全模写したものだったら?」


 「………あ」


 彼の動きが固まった。

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