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第三十九話

 「その中に突撃するのは無謀だな」


 キマイラとメリザンドの戦いに巻き込まれるのを恐れ遠巻きに見ている蛮族達に視線を移す…


 「それにしても毒を塗った短刀だったんだが…効いていないと見える。ならば他をやるか」


 「待て!相手は僕だ!」


 「知らん」


 半ば呆然と佇んでいた蛮族達にキマイラは突っ込んでいった。

 人影に紛れ、鎌のような腕で通り魔の如く無差別に切りつけ、殺傷していく。

 一応捕虜がいる可能性もあるため山で使ったような毒煙は使えない。

 おまけに体を変化させて本気を出そうものならメリザンドの的になってしまう。

 

 (もどかしい)


 悲鳴を上げ絶命していく蛮族達。

 彼女は追いかけてキマイラを探しているが恐慌状態の人間が二万人以上…

 おまけに恰好や髪の色なんかは他の蛮族達とほとんど同じ、簡単に見つかるわけがない。


 「近くに居るはずだ!落ち着け!」

 

 混乱の最中、このように冷静に指揮をしようとする者がいた。

 殺されるかもしれないと恐怖に震えながら、それでも剣を掲げ皆を奮い立たせようとする。


 「敵は一人!俺達が束になれば恐れることは…」


 そこまで言って、彼の言葉は遮られた。

 額に突き刺さった短刀によって。


 「うわああああああッ!!」


 彼が討ち倒されたことで、蛮族達は完全に正気を失った。

 

 「皆!落ち着いて!クソッ!!奴は何処だ!?」


 メリザンドが周りを見渡してもキマイラの姿は見えない。

 だが確かに被害は増え続けている。

 逃げる味方に踏み潰され、彼の鎌で狩られる。

 

 




 「ヴィクトリア様!奴が攻撃を開始しました!」


 馬上にて遠眼鏡を構えた兵士が叫ぶ。

 キマイラが襲撃している村から少し離れた林に、彼らは潜んでいる。

 数はおよそ三千程。

 

 「私は此度の戦において指揮を任されてはいません。将軍、どうされますか?」


 斥候の隣でヴィクトリアは呟く。


 「…慣れませぬな。どうにも」


 「ならば昔のようにヴィクトリアと呼び捨てにされるが良いかと…私もその方が慣れております」


 「それは出来ませんな。ヴィクトリア様。昔は私の部下だったとしても」


 「ハハハッ!相変わらず頭の固てぇ奴だ!!まあいい、で?どうする?」


 「参りましょうぞ。進軍開始!奴らに報いをくれてやれ!!」


 彼らの馬は蛮族達の居る村に向かって咆哮をあげながら突撃していった。






 「クソッ!!待て!!」


 「なかなかやるな」


 一方のキマイラ。

 隠れては現れメリザンドに傷をつけようと迫る。

 だが彼自身も攻めあぐねていた。


 (あの鎧…どう突破すべきか…)


 雷の鎧、それが原因だ。

 魔術師である以上マナが枯渇すれば魔術の行使はできないだろうが…

 そんなものを悠長に待ってはいられない。


 (そういえばこの短刀は…)

 

 人波に紛れ、人を切り裂きながら手に持っているクラウから貰った短刀に目をやる。

 柄の部分を押すと射出されると…

 遠巻きに彼を探しているメリザンドに近づき、これを打ち込む。

 ひるんでくれればそこで攻撃できるだろう。


 「出てこ…」


 ひゅん、風を切る音と共に雷の鎧に身を包んだメリザンドに飛んで行った。


 「そこかっ!!」


 命中した。

 だが彼女はひるむことなく向かってくる。

 残った短刀の柄を捨てると、突進してくる彼女を避け近くにあった柵の残骸に屈みこんで隠れた。


 「何だ。飛んでくるものは防御できないのか」


 顔だけ出して挑発すると、彼女はキマイラ目掛けて雷を撃ってきた。

 慌てて顔を引っ込める。


 「うるさい黙れ!」


 再度雷を撃とうと彼女は構えた。

 だが彼女がそれを撃つことはなかった。


 「ん?」


 突如巨大な影が現れ、キマイラとメリザンドは上を見上げ、驚愕した。

 巨大な龍が空を舞っている。


 「ちょっと待ッ!?」


 彼女は叫ぶが、そんなのはお構いなし。

 龍はその巨大な足でメリザンドを掴むと、飛び去った。


 「逃げた…のか?」


 立ち上がって呆然と龍を見送っていると、付近にいた蛮族達が悲鳴をあげた。


 「メリザンド様!!そんな嘘だ!我らを見捨てるなど!!」


 彼らにとって彼女は心の支柱だったのだろうか、さらに恐慌状態となった蛮族達。

 逃げる者、覚悟を決めてキマイラに立ち向かおうとする者、様々だ。


 (何かおかしいな…)


 「何はともあれ、残ったのは貴様等だけか。ならこの状態で戦う必要もないな」


 彼は一気に体を変貌させた。

 

 「貴様等にもお返しをさせてもらうぞ」


 巨大な獅子、蛇の尾を持ち、背には山羊が生えた禍々しい化け物。

 矮小な人間の姿で戦う必要がなくなった彼は…


 「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」


 咆哮をあげながら突進、逃げる者も向かってくる者も構わず攻撃した。

 

 



 

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