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第三十二話

 「到着は2日後か…ザクセン、死んでくれるなよ」


 皇帝は現在、軍を率いてアマルフィア海岸がある都市、ドレスリンへと向かっていた。

 兵士達のほとんどは弓を扱う騎兵だ。


 「久々に腕がなるぜ」


 馬上で拳を合わせながら不敵な笑みを浮かべるヴィクトリアに皇帝はため息を漏らした。


 「ヴィクトリア…」


 「ん?なんだよ?」


 「口調口調」


 「…失礼いたしました」


 外にいるとき、あるいは周りに人がいるとき、彼女には口調を改めるように言ってあるのだ。

 皇帝自身はこれを何とも思っていないのだが…


 「さて、行きますかの」


 「爺…」


 この人が許してくれない。

 曰く、皇帝としての威厳がうんたらかんたら…などと言っていた。


 「二人とも本当に行くのか?」


 「勿論ですわ。陛下」


 「儂ももう歳です。少しでも陛下のお傍に居たいのですよ。なに、槍使いはなかなかのものですぞ?」


 弓を掲げ、槍を上に突き出し、二人とも頑として譲らない。


 「分った。だが場所は戦場だ。自分の身は自分で守れ」


 「承知しましたわ」


 「御意」


 馬を走らせていると、隣に居た兵士が怪訝な顔で話しかけてきた。


 「陛下、前を…」


 「ん?」


 よく目を凝らせば進む先に少女が居る。

 膝をつき、頭を下げまるで臣下の礼を取っているのだが…


 「どうしたのだ?難民か?」


 服装や武器を持っていない所を見るに敵ではないようだが。

 隣でヴィクトリアが腰の長剣を抜き放つ。

 警戒心むき出しである。


 「クラウ・マグワイヤと申します。キマイラの使いで参りました」


 「キマイラ…あの青年か」


 山で出会った白髪の青年、あれだ。

 確か少女を連れていたはずだったが目の前にいるのは栗色の髪をしている、皇帝が出会ったのは赤毛だった。


 (確か名前はミリエラといったか…ほかにも仲間がいたか)


 「共闘のご提案に参りました」


 「共闘か。しかし解せぬ、キマイラは私の申し入れを一度は拒否した。私に恨みを持っているようでもあった…なぜ共に戦おうなどと思うようになったのだ?」


 「彼は陛下に限らず、すべての人間を恨んでおります。大切な人を殺されたせいで」


 「なら尚のこと我らに手を貸す理由が無いではないか」


 人間を憎んでいて、尚且つ今回のこれは人間同士の争い。

 放っておいて殺し合いをする人間を酒でも飲みながら高みの見物をしていればいい。


 「…『約束』でございます」


 「約束とな?」


 「彼が大切にしていた人間との約束、それを果たすために彼は戦います」


 「その約束とは?」


 「『戦争が起きたら止めて』です」


 「ハハハハハハハッ!!なんだそれは!?たった一人にそんなことを押し付けるのか!?どんな暴君だ!?それは!!」

 

 呵々大笑。

 皇帝は人目もはばからず笑っていた。


 「だが、それならば一人で戦えばよいではないか?わざわざ我らと手を組まずとも奴なら一人で十分戦えるだろう」


 「…敵が人間だけであるならば。それもできたでしょう。ですが敵には魔術師が居ます」


 「魔術師?」


 「強大な力を持つ魔術師です。キマイラだけでは勝ち目が薄い。そしてただの人間だけの陛下の軍だけでも勝ち目は薄いでしょう。ですが力を合わせれば勝ち目はある」


 「ようは自分だけでは戦えないから泣きついてきたわけか」


 「………」


 クラウは黙った。


 「まあよい。他の部隊と足並みを揃えねばならぬ。一度私のもとに出向くように伝えよ。共闘の申し入れは受ける」


 「御意のままに」


 ほっとした顔で立ち上がると彼女はそのまま立ち去ろうとして…


 「まて、そなたは人間なのだよな?」


 「……」


 クラウはいつものように空間を歪ませるとこう言った。


 「私は魔術師、人とは違います」


 「そうか」


 顔を引きつらせながら、皇帝はクラウを見送った。


 「だんだん自分の目が信用できなくなったぞ」


 「よろしいのですか?あのような者たちを引き入れて」


 消えた少女を見て隣でヴィクトリアが不安そうに聞いてきた。


 「少なくとも戦力にはなる。それにな…」


 「それに?」


 「身内に引き入れて管理したほうがまだ安全だ」






 「お帰りクラウちゃん。どうだった?」


 キマイラ達が潜伏する森に戻ってきたクラウ。

 ミリーが心配そうに駆け寄る。


 「わわっ?どうしたの?」


 「怖かった…初対面の人と沢山話したから…」


 駆け寄ってきたミリーに彼女は抱き着いた。

 目で見てわかるほど顔を赤面させ、ぷるぷる震えている。


 「クラウはそういう人間だ。昔は初対面ならまともに話せないぐらいだったんだがな。今はましだ」


 「そうだったんですね…クラウちゃん、ありがとう」


 とりあえず頭を撫でてみる。


 「ミリーさんも、身体はもう大丈夫なのですか?」


 撫でられながら上目遣いで彼女を見つめるクラウ。

 

 (…母性かな?クラウちゃんがいつもの2倍かわいく見える)


 「うん。もう平気」


 「良かったです。ああそれとキマイラさんは何処に?」


 「ああ、少し前に森の奥に行ったぞ。で?何をしに行ってたんだ?」


 エイラの問いに口ごもりながら…


 「皇帝に会ってきました。これよりキマイラさんと皇帝は共闘体制をとります」


 

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