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第三十一話

 「キマイラさん…」


 戦場に到着したミリー達が目にしたのは鬼神の如く縦横無尽に暴れまわるキマイラの姿だ。

 

 「案の定一人で暴れてるな、暫く様子を見よう」


 草の生い茂る中屈み込み、様子を伺う。

 彼が芥子粒に見えるほど離れてはいたがそれでも十分に見える。


 「助けに行かないと、クラウちゃんどうにか出来ない?」


 「無理です。マナが尽きた」


 悔しそうに歯噛みするクラウ、彼女は地面に仰向けに寝ていた。

 傍らでドリュアスが座り頭を撫でている。


 「どのみち今行ってもあいつが全力で戦えなくなるだけだ。今は見守れ」


 いまにも飛び出しそうなミリーを制す。


 「あいつだって馬鹿じゃない。疲労や負傷で戦闘続行が不可能なら撤退する」


 「大丈夫なんでしょうか…」


 不安そうな彼女をなだめ、暴れ続けるキマイラを見守る。

 爪で引き裂き、巨大な顎で噛み砕く。

 館の山でかつて起きたであろう戦闘行動もこれと同じような状態であったのだろう。


 「信じろ。あれはエルフリーナが生み出した最強の兵器だぞ?」


 「水を差すようで悪いがの…多分違うぞ?」


 完全に動けるようになったドリュアスが少し俯きながら話しかける。


 「あれは恐らく、単体で戦うことを想定して作られておらん」


 「それってどういう…」


 「ベルガー家…いやキマイラ達を作ったペーター殿は…」


 そこまで言ったあたりで彼の言葉は轟音によって阻まれた。

 それは雷鳴である。

 だが空を見上げても雲一つない、雷など落ちるようには見えないのだが…


 「おい!キマイラが!!」

 

 「え!?」


 先ほどの雷が直撃したのか、キマイラは人間の姿に戻っていた。


 「まずい!救出するぞ!」


 「出ます!!」


 そのままキマイラの方へ駆けていくミリー。

 走りながら徐々に化け物へと姿を変える。


 「援護する」


 エイラはいつか彼女に見せたような炎の玉を周囲に出現させる。

 だがミリーが以前見たものよりも数倍大きな玉。

 それを敵の集団目掛けて一斉に射出。


 (綺麗…)


 それが人を殺すものと分かっていたがミリーはそう思わずにはいられなかった。

 彼女の頭上で流星の如く輝きながら進む炎の玉。

 やがてそれらは敵に降り注いだ。


 (キマイラさんは…何処に…)


 轟音と共に、彼女の放った玉は敵を吹き飛ばし、地面を抉った。

 土煙で前がほとんど見えない敵の真っ只中、ミリーは躊躇なく飛び込む。


 「誰だ?お前は?」


 居た!


 「キマイラサン」


 化け物と化したミリーは大きく口を開け、キマイラを咥えて走り去った。






 「…お前…なんでここに…」


 走りながら、キマイラはそんな事を聞いてきた。

 化け物の姿を見せたのは初めてなのだが、どうやら気付いたらしい。


 「こっちだ!早く!」


 炎の玉を次々と射出しながらエイラが叫ぶ。

 後ろを見れば追いかけてくる蛮族達がいる。


 「ノッテ!ハヤク!」


 エイラの前で止まり、3人を背に乗せて更に走る。

 

 「大丈夫かキマイラ?今治癒の魔術を…」

 

 痛々しい姿のキマイラに顔をしかめながら手をかざす。

 

 「エイラ…クラウ、ドリュアスまで…逃げていろと言っただろうが」


 目を丸くしている彼に、クラウが困った顔で答えた。

 

 「2人共言うこと聞かなくて…」


 「………エイラ、お前はなぜここにいるんだ?」


 「お前は私の友人だ。それにお前を死なせたらエルフリーナに顔向けできん」


 「…俺はもう、仲間が死んでいくのを見たくない。今ならまだ間に合う。逃げろ」


 「阿呆が。目を離せば簡単に死にかけるお前を放っておけんわい。儂は意地でも付いていくからな」


 「ミリーさん、ひとまず森の方へ。そこで休息をとりましょう」


 アマルフィア海岸から北へ3里程進んだ先に森がある。

 クラウに言われるまでもなく、彼女はそこを目指して進んでいる。


 「ワ、カリマ……シタ………」


 「ミリーさん?」






 「着いた。良くやってくれたな。ミリー」


 森の入り口付近まで来た辺りで異変が起きた。


 「ヨカ……ッタ」


 化け物と化したミリーが突如、人間の姿に戻った。

 裸のまま、苦しみながらふらふらと数歩歩く彼女。

 

 「う、うえええ…」


 口や鼻、目などからの出血。

 

 「なんで…こん…な」


 「クソッ!力を使いすぎたんだ。横になれ!早く!!」


 血塗れの身体を横たえる際、クラウは左肩に触れたのだが…


 「ヒィッ!?」


 皮と肉が剥がれ落ち、そのまま腕が地面に落ちた。


 「口を開けろ!ミリー!」

 

 「は…ああ…」


 開いた口にキマイラは腕を傷つけ、血を飲ませた。


 「エイラ、治癒の魔術を…その後は暫く様子を見よう」


 「何が起きたんだ。一体…」


 「無茶したんだ」


 ミリーに自分の上着をかけながらそう言った。

 出血も止まり、今は呼吸も安定している。

 徐々に腕も生えてきているようである。


 「…分かった」


 「クラウ…回復したら今度こそ連れていけ」


 「駄目……です。行か…な……いで」


 掠れたこえでミリーが呟いた。


 「…ミリーさんの言う通りです。貴方一人じゃ無理です。今だって私達が来なければやられていたはず」


 「2度目はない。メリザンドとかいう奴を倒せば後は人間だけだ。勝機はある」


 その名前にクラウが反応した。


 「メリザンド?」


 「蛮族共が言っていた。恐らくそいつが雷撃してきたんだろう。そいつを叩く」


 「なんでその人が…」


 「知っているのか?」


 「メリザンド・ベルナール。『雷神』と呼ばれた魔術師で大昔に戦争に敗れ、処刑されたはずです」

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