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第二十五話

 「ドリュアス!!ドリュアスッ!!何処だ!?」


 帝都から帰ってきたキマイラだったが、目の前の光景に唖然とした。

 見たこともない人間達が血を流して倒れ、地獄絵図と化していたのである。


 「何処だ!?ドリュアス…兄さん!!」


 声の限り叫ぶ。

 しかし返事は無い。

 館の中に入り、部屋という部屋を片っ端から探していく。

 折り重なった死体をひっくり返し、館内を走り回る。

 彼は何処にも居ない。


 「…何処に行ったんだ」


 「キマイラさん…」


 「お前!?一体ここで何があった!?」


 聞き慣れた声に振り返る。

 血塗れの上着を羽織ったミリーが立っており、彼女は見慣れない男を抱えている。


 「…キマイラさん。この人…治せますか?」


 抱き抱えた男をキマイラに見せる。

 焦っているのが見て分かったが、彼は文句を言わず見てくれた。

 

 「……死んでる。俺でも死者までは治せない」


 「そうですか…」


 分かりきっていた答えを聞き、落ち込むミリー。


 「お前、兄さ…ドリュアスを見ていないか?何処にも居ないんだ」


 「…私は途中で連れ去られましたから。何処に居るのかまでは」

 

 うつむきながら答える。


 「探さないと…ドリュアス…ドリュアス」


 ふらふらと館の外へと出ていくキマイラ。

 

 「私も…行かないと」


 彼一人に探させる訳にはいかない。

 自分も彼に世話になった人間なのだから。


 「ここで待ってて。すぐに帰ってくるから」


 返事など返ってくるはずもなかった。






 「…キマイラさん!こっちです!!」


 「何処だ!?」


 館の裏の森の中、血が点々と奥へ奥へと続いている。

 それを見つけたミリーが先へと進み、見つけた。

 折り重なるように倒れている暴漢達と、木に体を預け座っているドリュアスを…


 「意…外に早かった…な」


 槍の先や矢が突き刺さり、切り傷も沢山ある痛々しい状態。

 苦しそうに脂汗をながしながら無理矢理笑顔を作っていた。


 「ああ、兄さん!なんでこんな…」


 「キマイラさん!血を…」


 「儂らのような者に…キマイラの血は効かん…無駄じゃ」


 「だったら運びましょう!家から薬の類も持ってきてます。館なら治療が出来る!」


 「あ…あ」


 「早く!」


 「わ、分かった」


 狼狽えるキマイラを叱咤して走る。

 彼女自身は先に走っていく。

 離れとはいえ、荒らされた後。

 荷物が無事とも限らない。


 




 「あった!良かった無事だ」


 荷物はほとんど荒らされていなかった。

 

 「そこに寝かせて下さい!」


 机を指差しながら、必要な道具を取り出す。

 小振りなナイフ、薬の入った瓶、綿の布、綿、酒瓶…


 「大丈夫なのか?」


 「井戸から水を汲んで下さい。手を洗ったら布で傷口を押さえて!矢は…貫通してない…ドリュアス。押し込むからね!我慢して!」


 「ああ、分か…た」


 金槌を取り出した彼女は腕に刺さった矢を途中でへし折り、折れた先端を金槌で力一杯叩く。


 「ぐあぁッ!!」


 「おい!」


 「矢尻にかえしがあるから、そのまま抜いたら傷口が広がります」


 貫通した矢を引き抜き木箱から曲がった針と細い糸を出す。


 「やさしく…頼む」

 

 「大丈夫なのか…?」


 「出血と感染症が怖いですね。傷は塞いで、あとはドリュアスの体力次第です」


 傷口を糸で縫い合わせる。

 彼は顔をしかめるが、治療には必要なことだ。

 綿を酒で濡らして傷口を拭き綿をあてがって包帯を巻く。

 一連の動作に全く迷いがなかった。


 「なんで人を殺す技術や道具の発展は早いのに、人を治す技術や道具の発展は遅いんですかね…」


 「………」


 ぽつりと呟いたミリー。






 「一通り傷の処置は終わりました。後は安静にして1日おきに傷の消毒をしましょう」


 傷の手当てをしていると、もう夕暮れ時。

 疲れはてたミリーはその場に座り込んだ。


 「ありがとう」


 「とりあえず運びましょう。机ごと館の中…は今は駄目か」


 先ほど見た館の荒れようを思い出し、頭を抱える。

 このまま野晒しはあまりにも…


 「どうしたら…」


 そんなことを思っていると、キマイラの背後になにやら空間の歪みが現れた。

 そしてミリーはそれに見覚えがある。


 「大丈夫ですか!?皆さん!」


 焦った様子のクラウが現れた。


 「ドリュアス!?何があったんですか!?」


 包帯まみれの彼を見てあたふたするクラウ。

 何故か安心した。


 「暴漢達に襲撃されたの。ドリュアスはその時に…」


 「そんな…今すぐ治癒の魔術を」


 キマイラ達を押し退け、彼に手をかざす。

 いつぞや見た緑色の光を放ち始める。


 「…医者泣かせだね。その技」


 

 

 

 

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