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第二十三話

 「お前の差し金か?エイルバー」


 キマイラは目の前にいる男を睨みつける。


 「あそこにはドリュアスがいる。そんなことはしない」


 「それと連絡によれば帝国軍でも野盗でもありません」


 黒髪の青年、ベッファが語る。


 「正確な数はわかりかねますが。アマルフィア海岸より最近出没している『海の蛮族』達が侵攻してきたようです。海が船で覆われるほどの物量だそうで東の公爵が応戦しています」


 「蛮族…」


 「火種なんて要らなかったな。戦争が始まるぞ」


 頭が痛くなる。

 せっかく勝ち取った平和を、どこの誰とも知らない蛮族風情に壊されるとは。


 「送ろう。一刻も早く戻ったほうが良い」


 「ああ、ありがとう」


 キマイラが礼を返すのも待たず、彼は空間を歪ませ始めた。


 「悪いが俺は行けない。だから、ドリュアス達はお前が守れ」


 「ああ」


 彼は歪められた空間に飛び込み、姿を消した。


 「…良かったのですか?あの兵器を帰らせて。今の奴は単体で我々が数で勝っています。十分倒せたはずでは…」


「あいつは俺の友人だ。傷つけることは許さん。それと…」


 「はい?」


 「あいつを『兵器』と呼ぶな。そんな言い方はこの俺が許さん」


 細かった目が見開かれ、その黒い瞳で彼を睨み付ける。

 あまりの凄味にベッファは後退りした。


 「…は、承知しました」


 小さくそう答えた。


 「キマイラ…俺はもう後戻りはできん。だからせめて、お前だけは…」


 「エイルバー様…」


 




 「なんじゃ?この音」


 「……麓の村から?」


 ドリュアスとミリー、二人で館の掃除をしているとなにやら怒号のようなものが遠くから聞こえてくる。

 

 「少し様子を見てくる。お前さんはここに…」

 

 ドリュアスの言葉を遮るように、館の前の森から矢が飛んできて、彼の胸を貫いた。


 「ドリュアス!!」


 「大事ない!!館に立てこもるぞ!!」


 突き刺さった矢を引っこ抜き、ミリーの手を取り館に逃げ込む二人。

 気付けば周りは剣や槍といった武器に革鎧で武装した暴漢達が取り囲んでいた。


 「扉を閉めろ!」


 「は、はい!!」

 

 扉を閉じ、閂をかける。

 だがすぐさま暴漢達が扉を壊さんと剣や斧を叩きつける。


 「ミリー!!2階に武器がある!取ってきてくれ!」


 「分った!」


 階段を駆け上がり、キマイラが生まれた部屋の扉を開け放つ。

 中には…


 「なにこれ…」


 見渡す限りの槍、剣、斧、弓、その他諸々の武器が乱雑に置かれているのだ。


 「とりあえずこれとこれを…」

 

 長剣と槍を手に、ドリュアスの待つ玄関に向かう。


 「ドリュアス!」


 扉を押さえる彼に槍を投げ、彼女自身は鞘から長剣を抜き放つ。

 

 (思ったより重いッ!!)


 扉を打ち破り、雪崩れ込んでくる暴漢達。


 「やあどうも!!」


 先頭にたって突っ込んできた男の腹目掛けて槍を勢いよく突き立てる。

 槍を抜いた後から鮮血が流れ、床を真紅に染め上げる。


 「人の家に勝手に上りこみおってからに!覚悟はできておろうなァッ!?」


 激昂しながら槍で迫りくる男たちを何度も突き刺し、館に入れない。

 だが別に入り口は玄関だけじゃない。

 入ろうと思えば他からも入れる。


 「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」


 窓を叩き壊し、何人かの男たちが入ってきた。


 「死んでくれるなよ!ミリー!!」


 「やあっ!!」


 迫りくる敵に両手で持った長剣で水平切り。

 だが後ろに下がられ簡単によけられてしまった。


 「このッ!このッ!」


 無茶苦茶に剣を振り回すが当たらない。

 だが少なくとも足止めにはなっている。


 「…ッ!!」

 

 一方のドリュアスはというと、その子供のような体躯に見合わない強烈な突きを繰り出していた。

 普段の温厚な彼の姿は影も形もない。

 怒り、目を見開き、ただ眼前の敵を討ち滅ぼす戦士となっている。


 「ええい!数が多いわ!雑兵風情が!!」


 「きゃあああ!!」


 「ミリー!?」


 ドリュアスが敵を倒していく中、彼女が暴漢の一人に捕まった。

 腕で首を絞められ、意識が消えかける。


 「待て!クソッ!待てッ!!」


 「ドリュ…ア…ス」


 爪で腕を引っ掻くが男には全く効かず、あっけなくミリーは連れ去られてしまった。


 「ミリー!!」


 助けようにも彼一人、多勢に無勢、敵わなかった。






 「うぐっ」


 捕まえられてしばらく、縛り上げられて山の麓にある村…

 ミリーが住んでいた村に連れられていた。


 「な、何で…」


 燃えている。

 彼女が育った村に火が放たれ、そこかしこに村を守っていたであろう兵士達が死んでいる。

 見知った人間の死体もある、無残に槍で突かれ、斬られ、死んでいた。


 「………」


 無言で村の中央に連れて行く男。

 そこには生き残った村人達が縛られ何人か集められており、回りを暴漢が囲んでいた。


 「み、ミリー…」


 「……」


 


 


 

 

 

 

 


 


 

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