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第十九話

 「では達者でな。ミリー」


 「はい、エイラさん。クラウちゃんも元気でね」


 「はい」


 「それにしても…以外に似合うものだな」


 今のミリーは彼女からもらった服を着ている。

 木綿生地で袖口が膨らんだ白いドレス、麻でできた深緑色の上着。

 

 「元々着ていたのと似ていますから。本当にありがとうございます」


 「喜んでくれはならなによりだ。ああ、キマイラもまた会おう」


 夜明け、彼女等は荷仕度をすませたあと、館の門の前に来ていた。

 笑顔で手を振りながら、クラウは来たときのように魔術で空間を歪ませる。


 「………」


 ミリーの隣にはキマイラがいて、無表情で二人を見送っている。

 仏頂面で佇む白服姿の彼はいつもと比べると少し違う、今日は革靴を履いている。


 「…クラウ」


 「はい?」


 「そいつを頼んだ」


 「………はい」


 含みのある声、クラウは返事をするとエイラと共に消えた。


 「行っちゃいましたね」

 

 「ああ」


 出会いも突然なら別れるのも突然、嵐のような二人だった。


 「キマイラさん、私、少し村に戻ってきてもいいですか?家から物を持ってきたいので」


 彼女達がある程度館の掃除をしてくれたとはいえまだまだ必要なものが多すぎる。


 (正直あそこには戻りたくないけど…)


 背に腹はかえられない、使えるものは使おう。


 「なぜ俺に許可を取る?」


 「数日前館から離れた時、怒ってたみたいでしたから」


 「別に怒っていない。勝手にすればいい」


 彼はミリーを見ないでそう言った。


 「はい、じゃあ行ってきます」






 「よいしょ…」


 道なき道を進んで行く。

 途中まではキマイラが連れて来てくれたからある程度分かるが。


 「歩きで半刻位かな、確かこっちに開けた場所が…」


 枝をかき分けなんとか出る。

 すると…


 「あ…」


 狼の群れに出くわした。


 「……………」


 (まずい、襲われる!!)


 ミリーは思わず身構えた。


 「あれ?」


 (狼達が襲ってこない?)


 尻尾を振りながら座っているだけだ。

 なんなら欠伸している狼もいる。


 「一体どうして…」


 「クゥン」


 一体の狼がミリーの足元に寄ってきた。

 甘えるような声を出しながら顔を擦り付ける。


 「えーと、とりあえず敵意はないのかな?」


 彼女は構わず村の方へと歩を進めた。

 そして…


 「村は目の前…だけど…」


 茂みに身を隠しながら、さあ村に入ろうといった所で問題が起きた。


 「なんで兵士がいるの?」


 目の前の光景に頭を痛めた。

 村の周りには堀が作られており、その周りを兵士たちが巡回している。


 「仕方ないな…夜まで待って暗闇に紛れていくしかないか」


 空を見上げてみる、まだ太陽は真上。

 長い戦いになりそうだ。






 「さて、行こうか」


 日はすっかり落ち、人影がまばらになった。

 監視の兵士が何人かいるが見た目だけならミリーはただの村娘。

 なんとか騙しとおせるはず。

 意を決して、村の入り口に向かって歩き出す。

 幸い月明かりで足元はある程度見える。


 「止まってください。貴女は村の住人ですか?」


 案の定入り口で軽装の兵士に止められた。


 「はいそうです。畑で道具の整備作業してたら遅くなっちゃって…」


 「ふむ……」


 兵士は訝しげに彼女を下から上まで舐めるように見つめてくる。


 (駄目かな、これは…)


 「働き者ですね。どうぞ。最近そこの山に化け物が出るようです。気を付けてくださいね?」


 「はい、ありがとうございます」


 (通った!?)


 何とか平静を装い、村に入っていく。

 もともと自分が住んでいた村、どこを通れば人通りが少ないかなんて熟知している。


 「ここを曲がって…真っすぐ行けば…」


 着いた。

 木造の小さな家、ミリーがもともと住んでいた家だ。

 この国の薬屋の印、麻の葉を模した紋章が扉に焼き印されている。


 「ただいまー…」


 扉を開けて中を見る。

 だが当然、誰もいない。


 「荒らされてない。良かった」


 彼女がここを出て行った時から、ほとんど物が動いていない。

 薬草の粉末が入った木箱、藁を積み上げリネンのシーツを敷いたベッド…

 雑多なものが置かれている机の上から蠟燭を手に取り火打金で火口を作り、火を灯した。


 「とりあえず服、毛布、あと火打金と石、蝋燭の予備とお金、その他諸々…どうやって持って帰ろうか…」


 毛布に一式包んだところで気付く。

 行きは何とか大丈夫だったが、さすがにこれだけいろいろなものを持って行ったら呼び止められるだろう。


 「…一体どうしたら」


 ふいに扉が開いて、思わず身構える。


 「ミリー?なのか?」


 聞き覚えのある声だ。

 同時に酷くどす黒い感情が彼女の中に生まれる。


 「クルト…」


 「……」


 振り返ると彼女を殺そうとした張本人、赤ら顔のクルトが立っていた。

 

 


 


 

 


 



 


 

 

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