看板娘
「看板娘」
作 六六
看板娘(高校生くらいで凛々しい)
高校生(冷静にツッコむ人。学校帰り)
(オチは2パターン用意しました。)
高校生、下手から歩いてくる。
高校生「……たまにはいつもと違う道行ってみるかと見知らぬ商店街に足を踏み入れてみれば、何か変なやつに遭遇してしまった」
右手に人参、左手に長ネギを持った看板娘、お客さんの方を向き、左右に揺れてリズムをとりながら歌う。
看板娘「火曜と水曜はおっとっく!♪」
高校生「……」
看板娘「火曜と水曜はおっとっく!♪」
高校生「……」
看板娘「お野菜~、何でも~、はーんがーくー!♪」
高校生「……」
看板娘、突然高校生の前に駆けていく。
看板娘「ねぇあなた! 私はこの商店街の中でもトップの売上を誇る『青柳鮮魚店』の看板娘! あなた、学校帰りの高校生ね? さぁ、安いからお魚買っていきなさい!」
高校生「じゃあさっきの歌と手に持ってるそれは何なの?」
看板娘「え? こっちがサンマでこっちがマグロで……」
高校生「どう見ても人参と長ネギだろうが」
看板娘「あれ、間違えちゃった。あなた、待ってなさい! すぐに正しい商品を持ってくるわ!」
高校生「い、言っとくけど何持ってこられても買う気はないぞ……?」
看板娘は上手に行って戻ってくる。
両手で合計8本のうまい棒を持っている。
それを振りながら看板娘は歌う。
看板娘「火曜と水曜はおっとっく!♪」
高校生「え、そっからやるの?」
看板娘「火曜と水曜はおっとっく!♪ お魚~、何でも~、はーんがーくー!♪」
高校生「お野菜どこいったんだよ。つーか何だその手に持ってるの」
看板娘、突然高校生の前に駆けていく。
看板娘「ねぇあなた! 私はこの廃れた商店街の中でもまぁまぁの売上を誇る『赤崎青果店』の看板娘! あなた、学校帰りの冴えない高校生ね? さぁ、ちょっとお高めだけどお野菜買っていきなさい!」
高校生「なんか色々グレードダウンしちゃってるなぁ!」
看板娘「コンポタ? チーズ? それともたこ焼き?」
高校生「それ野菜じゃなくて思いっきりうまい棒」
看板娘「あれ、また間違えちゃった。あなた、待ってなさい! 今度こそウチの商品を持ってくるわ!」
高校生「そもそもお前はどの店の看板娘なんだ……?」
看板娘は上手に行って戻ってくる。
右手にマグカップ、左手にポーチを持っている。
それを振りながら看板娘は歌う。
看板娘「火曜と水曜はおっとっく!♪」
看板娘、高校生を見て首を振り、一緒に歌うよう催促する。
看板娘はニヤリと笑う。
看板娘「せーのっ!」
二人「火曜と水曜はおっとっく!♪」
高校生「……はッ!」
高校生は我に返り、少し看板娘から離れる。
看板娘は気にせず続ける。
看板娘「雑貨は~、何でも~、はーんがーくー!♪」
高校生「もういい加減覚えそうこの歌……」
看板娘、突然高校生の前に駆けていく。
看板娘「ねぇあなた! 私はこの寂れて廃れてどうしようもないくらいにお店が少なくなった商店街のとうとう最後の一店舗『緑谷雑貨店』の看板娘! あなたは、この商店街に久しぶりに訪れたお客様ね? おじいちゃんの形見のお店を潰すわけにはいかないからけっこうお高いけど、雑貨買っていきなさい!」
高校生「え……」
看板娘「中でもこのマグカップがオススメね。一個一万円よ!」
高校生「とてもそうは見えない……! ぐ、けど……なぁ……!」
看板娘「ねぇ、買って……?」
看板娘は切なさと寂しさを醸し出してお願いする。
高校生「……わ、わかった、買う!」
看板娘「ま、おじいちゃんの形見云々の話は嘘だけどね!」
高校生「……は?」
看板娘「言質は取った! さぁ買え! 財布寄越せ!!」
高校生「はぁぁぁぁ!? や、やめろぉ!」
看板娘は財布を探して高校生の鞄をチェックする。
看板娘「あ、あった!」
高校生「お、俺の財布がぁぁぁ!」
看板娘は財布を奪い取って高校生を突き飛ばし、離れる。
看板娘は財布から5000円を取り出して財布を雑に高校生に返す。
高校生「え……なんで5000円?」
看板娘「まぁ今日は水曜日だからね」
高校生「……水曜日」
看板娘「そっ。つまり半額よ! 感謝なさい!」
高校生「……」
看板娘「はいこれ、ウチの自慢のマグカップ! ……ふふふ、1000円で仕入れたマグカップなのに、これは得したわね! ふふふふふー、ふふふふふふふー」
看板娘は去っていく。
パターン1
高校生「……いや、5000円でも十分こっちが大損なんですけど」
パターン2
高校生「……火曜と水曜はおっとっく!♪ …………」
高校生は沈黙。
高校生「……は??」
END