その日までに
ぼくが生まれるより前の遠い遠い昔。
この地球では、国というおおきな集団が殺し合いをしていたそう。
これを戦争といったそうだ。
銃や飛行機という乗り物や戦車という乗り物を使い、多くの人々を殺しあったという。
ぼくはそんな乗り物は見たことがない。でも、本で写真としては見たことある。
戦争は結局は多くの人が死んでも終わらず、『かく』という武器を使ったって。
けれど、この武器は大きな炎と激しい風を巻き起こし、
周りのものを吹き飛ばした。『かく』という武器が落ちたところには何も残らず、
多くの人が死んだ。落ちたところから遠い人は急いで地下に逃げ、生き残ったそうだ。
それがぼくのご先祖様だ。
それからとても時間が進んで、ぼくはお母さんと壊れた町の中を歩いている。
遊びで歩いているんじゃない。お仕事だ。
ぼくとお母さんが手を握り、片手には荷物が入った鞄を握っていた。
いま歩いている道はデコボコでとっても歩きにくい。
歩きにくくて嫌だ。でも、お仕事。
がまんしなきゃ。とっても歩いた。
遠くに丘が見えた。その丘へと向かって歩く。
丘に着くとぼくらはまわりをぐるっと見た。
一面、土ばかりだ。
ぼくらが歩くと土の煙がふわっとあがる。
なんか嫌だ。
お母さんはぼくのほうを見てた。
わかるのは目の部分だけだったけれど笑ってた。
お母さんが「ここにしましょう」とぼくに言った。
ぼくは「うん」と応えた。
握ってたお母さんの手を放し、急いで丘の一番高いところに走った。思いっきり。
高いところに着いたぼくは手に持っていた荷物を土の上に置いた。
置いた荷物の中からスコップを手に持った。
ぼくは地面に座って、土を掘り返した。中くらいの穴ができた。
そこにぼくはまたも荷物から袋を取り出し、袋の中から種を取り出した。
種を手に持ったぼくはそのまま穴の真ん中に種を置いた。
そして、掘った土を種の上にかけ穴を埋めた。
荷物の中から金属性の水筒を取り出し、ふたを外した。
そのまま種を埋めた土の上から水をかけた。
お母さんはぼくと同じように金属性の水筒から、
今より前にすでに埋めて印をつけていたところに水を注いでた。
ぼくも近くにあった種を埋めたところに注いだ。
土に種をまき、上から水をかける。これがぼくの仕事だ。
「全部終わった?」とお母さんがきいてきた。
ぼくは「うん」とこたえると立ち上がった。
水筒を荷物の中に戻すと体中の埃がついた部分を手でパンパンと落とす。
体中の埃を全部落として、お母さんのところにいった。
そして、お母さんが「帰るわよ」といったから、また手をつないだ。
ぼくたちはぼくたちが歩いてきた道を戻って帰っていく。
歩いていくと少しづつ周りの様子が変わる。
足元くらいの草が右と左に広がっていて、
星空のように花が咲いている。
風がぼくたちの間を通り過ぎると、周りの花もゆったりと揺れた。
まるで、ぼくたちを楽しませるように踊っているみたいだ。
さらに歩き続けるとそこにはさくらの木が見えてきた。
お父さん達が、がんばって育てきたさくらの木たちだ。
ちょうど花が咲くタイミングだったみたいで、とってもキレイに咲いている。
ぼくたちが右と左でさくらが咲く木の間を進む。その間にも風がさくらを揺らして、
たくさんのさくらが空中に飛んだ。これが、お父さんが言ってた”さくらふぶき”なのかな。
どんどん進んでいくと金属でできた大きな建物が見えてきた。あれはぼくたちの家だ。
お父さんが家の周りで仕事している。大きい斧で木を切り薪を作っていた。
ぼくたちに気がついて「おーい」なんて声をかけくる。家の周りにはたくさんの木が並んでいる。
このたくさんの木はおとうさん達が土だけの地面からここまでにしてきたとお母さんが言ってた。
ぼくはお父さんのようになりたい。
「お疲れ。今日終わった?」と話しかけるお父さんに「終わった」とお母さんが答えた。
お父さんはその答えに笑顔で「そうか」と言ってうなずいていた。
お父さんはぼくをみて言った。
「いつか。いつか緑色に覆われた世界をもっとみせてやるからな。お父さんとお前の約束だ」って。
ぼくはお父さんに「その日まではがんばろう」って言った。
約束の証としてお父さんと指きりげんまんをした。
おわり