第壱話 何者
いくたび時代、何万を超える人が戦にでた。そして時代を動かした何万という意思ともにそれは等しく死者を生んだ、時代の変革のためならと多くの者たちが戦にでた、声を上げ焼け野原を駆け、己の意思と人々のために戦た。そして不思議力を使う者達が現れた、
だがな、そんな者たちを怖れる者達が現れその者らを追い払ってしまった。いらい、その恐れられた者達を見たという者はおらぬ。
「お祖母ちゃんそれって、本当?」
「ああ、本当じゃよ」
目を輝かせながら聞く小さな女の子に、優しく答えるお祖母さん、すると女の子が不思議そうに聞く。
「でも、その人達どこいちゃたのかな?」
「さーねー、私にも解らんね・・・。でも、最近はその者達をこう呼ぶようになった」
「なになに!?教えて!」
「・・・妖怪とな」
リリリリリリリリ・・・
鳴り響くアラームの音、朝カーテン隙間から部屋中に日の光が差し込む、大きく寝返りしてベットの上から落ち、落ちた時の音と衝撃で目が覚めた。
「うぅ・・、夢?」
まただ、またあの夢だ・・・。たまにでる小さい頃のどこか懐かしい夢、お祖母さんの夢。小さい頃は遠く都会に住んでたから、和香で静かな田舎に住んでるお祖母さんがよく聞かせてくれた昔話しが大好きだった、多分その時の話しを夢で見てるんだと思う。だが覚えているだけでも作り話だと思う、子供に聞かせる話なんて興味が広がるように童話から引用したり少し大げさにするものだ。
起き上がり、力のないまま制服に着替え眠気も取れないまま、リビングに行き机の上にラップして置いてあった昨日作った夜ご飯の残りを食べる。人気のない空間を紛らわすかのようにテレビをつけてニュースを見る。すると市内での殺人事件が報道されていた。内容は異常で凄惨な現場だとまとめられている
「また、殺人事件・・・」
食べ終はって皿を流しに置いた、玄関で座り丁寧に靴を履く、誰もいない家に声を出す。
「行ってきます」
外に出ると晴々した空が強い日差しが照りつける、【高椅 池菜】は高校生、桜も散り始めて、春も後半の時期、学校行くためにいつもと同じ道を歩く。
学校に付いて、下駄箱で靴を履き替えると同級生に挨拶をされて挨拶し自分の教室に向かう、教室に入り自分の座席に座る、すると教室内で変なざわつきがあった。
「おい、見たかよ今日のニュース」
「殺人事件でしょ、私怖い」
「でも、殺人を起こしたのがゴリラだって話だぜ。」
「そう、でその殺人現場には、死体が無いんだって・・・、大量の血痕だけが残ってるらしい」
また、殺人事件で教室がもこんなに有名になってるとは。でも確かに不思議だここ数ヵ月に市内での事件が多くなってる、犯人は全然捕まってないし、死体も見つかって無いらしい。
鐘が鳴り、生徒は席に戻る、先生が前にたって、険しい表情をして話し始めた。
「えー、最近殺人や色々と犯罪が、学校の近くにも起こっています。なので今日は10分繰り上げで授業を行います」
それを聞いた瞬間、クラスが歓喜声を上げた、先生が間だ喋ってるのもお構いなしに話し始める。
私は特に気にしないで外を見ていた、見てると学校の外にフードを被った背の低い子供みたいな怪しい人がいた。
「何、あの人」
ジーと見詰めていると、遠いいからよく見えなかったけど、何か喋ったようにも見えた、その後にどこかに去っていった。
「変な奴・・・」
結局、鐘が鳴るまで教室は静かにならず、先生の話しも聞いていなかった。
「次の時間は、体育か・・・」
次の時間は、体育の授業で体育館に向かう、体育服や中靴をもって移動する、体育館に向かうのに一階に降りて外の道を使う、行くときに校庭が見えるのだが、たまたま校庭を見ると、校庭の真ん中に黒い影のようなモヤが見えた気がした。
「何だろう、あれ?」
そう言うと、モヤは消えてしまった。
「消えた・・・」
でも、少し嫌な感じがした・・・な。
体育は得意なのだが、朝の夢やさっきの黒いもや、色々と気になり上手く出来なかった、一番気になったのは白いフードをした子供。
こんな時間学校にも行かないで外にいる、さらに今は春の後半、暖かい中で雨も降っていないのにフードを被っているのは不自然だ。
「どうして、学校の中を・・・、へぶ‼」
そんな事を考えていると、ボールを顔にくらい授業は終わった。
昼休み、教室で一人弁当を食べようとしていると、クラスメイトで仲の良い女子が話しかけてきた。
「ねぇ菜池ちゃん、知ってる?最近、起きてる連続殺人」
スマホを片手に、私の前の席に座った、体を横にして顔だけをこちらに向ける。
「あー、あの死体が無いとか言う、あの連続殺人?」
「そう、その連続殺人なんだけどさ」
スマホの画面をスライドさせながら話す、どうやらネットにその殺人の事をまとめた記事があったらしい。
「なんか、学校周辺の住宅街で起こってるらしいの、そして私たち高校生がよく殺されてるらしいのね・・・」
その話しを聞いた時、白しフードを被ったあの少年が思い浮かんだ、こんな時間に一人不自然だからか思い出してしまった。
「それだけじゃなくてね、なんかスゴいらしいの」
「スゴい?何が?」
持っていた、スマホの画面を見せ、その画面には被害にあった現場の写真があった。
「被害現場の状況が・・・、窓や壁が破壊されて、一番酷いのだと壁に穴が空いてるとこもあるんだって」
「へー、そうなんだ」
「ほら!!、見て!!」
そう言って、スマホの画面を見せてきた、確かに・・・何と言うかエグい写真だ、血が飛び散ったあと凹むレンガ、壊れた壁。
どうりでさっきゴリラとか言ってたのか、確かにこれを見ればゴリラと言うだろ、やっぱりさっきの少年が?でも人間にできるのかこんなことが・・・。
「ねぇ、どう思うこの殺人?」
「えぇ?、どう思うって、そんな、連続殺人とかどうして殺るとか気が知れないよ、うん」
急に聞かれたので動揺してしまった、でも気が知れないのは本当だ。私は昔から正義感が強く、昔から余計な事に首を突っ込む、だからこんな事が出きるなんて不思議でしょうがなかった。
「ねぇ、これって夜に殺されてんるだって、だからネットでは妖怪って言われてるんだよ」
「妖怪・・・!?」
けっこう驚いた、いつもなら信じないが・・・、でも、今日の夢やさっきの影がどうも引っ掛かった。
「そんな、妖怪なんているわけないじゃん~、信じちゃダメだよそんなの」
「そうだよね、妖怪とかいないよね」
「そうだよ、アハハハハハ・・・」
その場はごまかしてしまった。
学校が終はって、私は川の土手にいた、何か考え事をするときや、悩み事があるとここに来る、ここにいると何か落ち着く。
「何年ぶりだろ、ここ来るの・・・」
何となく懐かしい思いと共に、さっきの話しを思い出す。
「妖怪が・・・、本当にいる・・・?」
信じていなかった訳ではないと言えば少し違う、昔お祖母ちゃんからおとぎ話のように聞いていたから、いるんだろうなとは思ってたけど、本当に実在すると言はれると、どうも信じがたい。
考えている、何かが体に触れる。
「何?さっきから?」
どこからか明るい茶色をした小さい子犬がすり寄ってきた。
「ワッン!!」
「子犬だ!!可愛い~、飼い主は・・・・」
周りを見ても、飼い主らしき人はいない、撫でていた子犬を持ち上げて、青空高く上げて聞く。
「あなたの飼い主は、どこ?」
その子犬に聞くと、尻尾を振り、首をかしげて
「ワン!!クン~?」
可愛く返された。
可愛い過ぎるはねこの子犬・・・。
「もしかして、野良犬?」
と考え下ろすと、土手の舗装された道から何か走って来た。
「何?」
凄い走る足音と砂煙が、怒鳴った声が聞こえと共にやってくる。
「おい!!、待ってー!!」
と言って、警察官に追い掛けられてるのは、大量のドーナツを抱えたり加えたりして、走って警察官から逃げてる白いフードが着いてる、服を着た少年。
あれわ、たしか・・・朝見た少年?
すると、少年と目が合い座っていた菜池の影に隠れる、警察官が菜池の前に立ち止まる。
「何だね君は?、彼の親族かね?」
背中に隠れる少年を見つめ、顔を下に向けたまま顔を上げない少年を見て、仕方なく助ける事にした。
「ええ、みたいな者です・・・、彼が何を?」
「彼がね、ドーナツ屋で食い逃げをしたんだよ」
「食い逃げですか・・・、何円ですか、私が払います」
「そうか、それは助かるよ」
物解りがいい警察官で助かった。
「えっと、いくらですか?」
「えっとだね、一万二千円だよ」
「一万・・・、二千円・・・」
その値段を聞いて、一瞬固まった。
「えっと、いくらでしたっけ?」
「一万二千円だよ」
何度聞いても、値段と警察官の笑顔は変わらず、一万二千円を払う事にした、大赤字だ。
すると、フードを取り少年がおどおどしながら聞いて来た。
「ありがとう、何で、俺を助けたんだ?」
「それは、あなたに聞きたい事があって」
「聞きたい事?」
「そう、あなた今日がっ・・・」
といいかけた時、少年が納得したような表情で。
「あー、何で学校を覗いていたか、それを聞きたいっでしょ?」
私は、ビックリした、だって自分が言ようとした事を先に言はれたから。
「制服を着てたから、もしかしたらな~と、当たってた?」
「そう、凄いね、君・・・」
少し、冷や汗をかきながら、少年を見つめる。
「で、何が聞きたいの?、助けてくれたし何でも聞いてよ」
たくさんもった、ドーナツを食べながら聞いて来た、何でも聞いていいと言うので率直に聞いてみた。
「どうして君は学校を覗いてたの?」
「どうしてって・・・、何となく?」
「学校はどうしたの?」
「学校は行ってない。あんまり馴れなくて」
「そうなんだ」
どうやら、私の勘違いだったみたい、あの黒い影のモヤと関係があると思ったんだけど。
「はぁ・・・」
「?、どうしたのため息なんか」
「いや、何でもないわ」
「よかったら、聞かせてよ」
何となく、彼には何でも話せるような気がした、それから少年とは色々な話をした、話していると少年は少し変はった事を言う、気がついたら学校で見た黒い影の話しをしていた、少し驚いた表情少年は聞いていた。
「そんなのを見たんだ!!、凄いねお姉さん、でも、少し怖いね・・・その話し」
「ねぇ、君は、妖怪って信じる?」
「妖怪・・・?」
なぜこんな事を聞いているのか、解らなかったでもこの子に聞いて見たかった。
「いないんじゃないかな?」
「そうだよね・・・、いないよね、ふつう・・・」
そう言って、曲げてた膝を伸ばして、夕暮れになってオレンジ色になった空を見上げて、残念そうに言った。
「私が何で妖怪なんているか聞いたのは、連続殺人が妖怪の仕業なんじゃないかって・・・、友達が言ってたから、ちょっと気になって」
少年は菜池の顔を見つめて、「そうだな~」と呟いて少し考えた。
「まあ確かに、連続殺人をやってるから、そいつはもう人じゃなくて、妖怪と言はれちゃうかもね」
その答えに、少しガッカリしたのと同時に安心感が込み上げてきた、どっちかと聞かれたら、少し寂しい感覚だった。
「そっか、やっぱりお祖母ちゃんの話しは・・・」
私の表情見て、少年が立ち上がって私を見下ろした。
「でも、いない0を信じるよりも、いる1を信じた方が良いと思う、僕はそう思う」
笑顔でいるその表情と、風で揺れる白い前髪と真っ直ぐ景色をみる黒い瞳、オレンジ色の空が少年に合っていて一瞬見詰めてしまった。
「うん、そうだよね、信じてみる」
夕暮れになり、人がいた土手の道も人が少なくなり、風が強くなった事を草木と肌が教えてくれた、少し寒さを感じながら街灯が明るく光っている事に築き、帰る事にした。
「ありがとう、話を聞いてもらって、もう帰るよ」
「そう、僕もありがとう、助けてくれて」
「良いのよ、もう食い逃げなんなしないでよ、お金もキッチリ返してもらうから。」
「あー、頑張るよ・・・」
その場で少年と別れた、でも少年とはまたどこかで会えそうな気がした、そんな気がした。
帰り道は暗く、建物の明かりと等間隔で並ぶ街灯の明かり、道を照して星の見える夜空を隠す、車が通るが道路は静かに感じる、今日の夜ご飯を考えながら帰り道のスーパーで買い物をする、スーパーの恥にあるペットコーナーに目がいった。
「あのこ、野良犬だったのかな、ご飯とかどうしてるんだろう・・・」
野良犬が気になり、ペットコーナーでドックフードを買い物カゴに入れてお会計を済ました。
暗い夜道を歩いていると行き交う車の間から、奥の道に少年が見えたような気がした。
驚いて、もう一度見ると姿がなかった。
どうして、こんな場所にいるの?
そのあと家に帰った、家に入ってリビングでスーパーで買った物をしまい終り、二階にある自分の部屋に戻った、部屋の中でベットにた折れ込み今日あった事を思い出していた。
今日は色んな事が起こりすぎて疲れた、黒い影、泥棒少年、妖怪の噂・・・、どれもあまり関わりたくない。
「あー!!、もーなんなのよ!!」
と大声を出してストレスを少し解消した、少し時間が過ぎ「よし!」と顔を上げると、ドックフードが扉の前に置いてあった。
それを見て、さっきの子犬を思い出した、そして子犬がどうなってるかを考えたら、居ても立っても居られなくなった。
あ~もう!!、何でこんなこと!!
さっきより人の通りが少なくなった道、静かに光る街灯の下を駆け足で子犬がいた土手まで向かう、向かっている途中で学校の前を通るのだが、前を通っていると少年が見えて、学校の体育館横の狭い暗闇に消えていった。
それを見た、菜池は嫌な予感がした。
今日、学校で見た黒いモヤ。それを知っていたような感じで外から見詰めていた少年、妖怪、殺人事件・・・。
駆け足をやめて走って門を越える、門から校庭を横断しても体育館まではそこそこの距離がある、走って向かう。
「ワッン!!」
向かう途中で後ろから子犬の声がした。
「えぇ?」
驚き、後ろを振り返ると暗い校庭にポツンと口をニッコリさせてこちらを見ていた、よく見ると探していた子犬そこにいた。
「ワンちゃん!!、どうして学校にいるの?!」
驚きながらも会えたことが嬉しくてそばによって抱き抱える、小さい体だけど温もりを感じて、ふわふわとした毛並みが触っていて気持ちが良い。
そん事をやっていたら、後ろから声がした。
「おい、その犬から離れろ」
私は驚いた、体育館裏からこの距離を一瞬で音もなく後ろに立ってたこともそうだが。
「何よ、何であなたここにいるの?」
ついさっき話していた、少年とはまるで別人のような顔でこちらを見る。
「いいから、その犬から離れろ・・・。」
広い校庭に、静かに重くその言葉をいう、言い方と表徐を見て謎の緊張がはしる。
すると、抱き抱えていた子犬が腕から降りて、少年に威嚇をしている。
「グルルルル・・・」
「どうしたの、そんなに威嚇して。」
すると、犬の様子がおかしい、毛が逆立ち体が大きくなる。
「え?、何・・・。」
私は大きくなる子犬を見て後ろに下がる、下がってると躓いて尻餅をついた。
子犬が私と同じかそれ以上の大きになった、さっきの小さい体の子犬の姿はもう無かった。
「・・・やる気みたいだな。」
少年がそう言う、腕を前につきだして手のひらから青い炎を出す、すると炎から長い何かが出てきた。
「あの長いのは・・・、刀?」
青い炎から出て来たのは、紛れもない日本刀、刀を鞘から刀身を抜き、刃文から反射する月の光でこちらを照す、そして少年は構えて言った。
「・・・来い、化け犬。」
「グガアアアァァ!!」
生き物だとは思えない声をだし、化け犬は少年に襲いかかった。
前足で襲ってきて刀で受け止めそれを押し返す、反撃をし反対の前に切りつける、体の下に滑り込んだり跳んだり、小さい体を上手く活かして戦っている。
でも、その攻撃は効果がないようだった、何回か切りつけても皮膚が硬く傷が浅い、それに気がついたのか打撃技を加え始める。
すると、化け犬には打撃もあまり効果がないようだった、少年は池菜の方に近づけないように少しずつ遠くに化け犬を誘導していく。
離れていく少年と化け犬を眺めている、池菜は混乱をしていた先程まで腕の中にいた子犬が自分と同じぐらいの大きさになって見る影もない、そして河川の土手で出会った少年がその化けた子犬と刀で戦っている・・・。
「何が・・・起こってるの?」
少年と子犬だった化け犬が戦っているのをただ眺めている、夜の学校に刀を持った少年と化け犬、静かな校庭には化け犬が地面を強い力で叩く音と少年が化け犬の体を斬る音だけが響く。
「やめてー!!」
すると池菜が校庭の全体まで聞こえるんじゃないかと言う大きな声で叫んだ、池菜が叫んだら化け犬が池菜に向かって走っていく
「あのバカ!!」
少年は急いで化け犬の行く手を遮った、少年を無視して、潰す勢いで止まらずに少年に突っ込んだ。
「ぐぅぅぅあぁぁぁ、、!!」
大きな体とその大きさからでる速さ、それを刀身で強引に受け止める、物凄い音を出しながら地面を削りとるようにして踏ん張り、池菜の数センチ手前で止まった。
止まった瞬間に化け犬が左足で少年を叩き飛ばす、少年は突進を止めた直後、反応が一瞬遅れて呆気なく右に叩き飛ばされた。
凄い速さで右てにある学校のプールの冊に冊が契れるぐらいの速さで突っ込んだ。
少年を叩き飛ばしたあと化け犬は池菜を見つめる、牙を剥き出しだったさっきと違って、優しく静に見つめる。
「あ~、イッテて~」
すると数秒後にプールの方から少年の声がした、プール側の光の当たらない木下からゆっくりと足音がする、化け犬は足音のする方をまた威嚇するように睨む。
「あー、まじで痛い、右肩外れて、左目も見えない状態、両腕も折れたかな、脚にもヒビがはいってるかも、うわ爪で喉まで切れてるよ・・・」
そう言いながら木下から現れた少年は、なぜ生きているのかが不思議なぐらいの重傷だった。
そして、私と化け犬の間に立った。
「あな・・・、たどうして生きてるの?」
「どうして生きてるか、知りたいのか?」
言うと「じゃあ、教えてやる」といい少し笑った。
すると、青い炎が少年と池菜を囲むように燃え盛り、それに驚いたのか化け犬は後ろに下がった。
少年の傷が蒸気と生々しい音を出しながら、傷口が治っていく、そして少年のおでこの右から角が生えてくる。
「君はいったい・・・」
「そう言えば名を言っていなかったな、【白鬼】妖怪だ、お前らで言うとこの、えーとたしか――――――鬼だ」
「お、に? 」
彼が確かにそう言った、傷口が癒えて、そして頭から生えている角、疑う余地など無い。
「ガウゥゥゥゥゥ、、、」
炎円の外から聞こえるうなり声、白鬼が持っていた刀で自分の手のひらを斬る、切り口から紅色の血が流れて刀を伝って地面に落ちる。
すると、刀が紫赤い炎をまとう。
【鬼式徐霊術 ー火炎の狂鬼血ー】
白鬼は円の中から前方に跳んび、化け犬の懐に入り込み鞘に入った刀で居合の構えをとる、静かで沈んだ冷静な目をして。
そして、目にも止まらない速さで鞘から刀を抜いて斬った。
さっきまで皮膚が分厚く筋肉が固くて斬れなかったが、まるでとうふを斬るように刀が肉を斬る。
「グアアアアァァァ・・・」
化け犬の痛がる鳴き声が響く、血が斬り口から大量出血している、白鬼が大量の化け犬の血浴びて真っ赤になる。
「やめて!!、殺さないで!!」
池菜がそう言ったことに反応せずに、もう一度斬る。
叫ぶ化け犬の痛みを感じるように池菜は見つめる、白鬼はため息をついて横に倒れた化け犬を見下ろしていた。
「どうして、こんな事をするの・・・」
悲しく言う池菜をみて、刀を納める。
「安心しろ、本当には斬ってない」
「え?」
「斬ったのは、あの子犬の中に溜まっていた〈気〉。まあ、分かりやすく言うなら、霊力みたいな物だ、だから殺してない」
そう言っていると、化け犬が子犬に戻っていく。
池菜はそれを見て子犬に駆け寄る、側まで行き子犬を抱き抱える。
確かに、弱ってはいるが生きている。
「このままじゃ駄目だ」
そう言って近ずく白鬼は、指先だけを歯で噛んで血を出しで子犬に近寄る
「何をするの?」
「このままだど、また霊力が溜まる、だから封印を施す」
そう言うと、膝をついて子犬の腹に何か文字を書いていた、何を書いてるかは解らなかった。
「これでいい・・・」
立ち上がり私と子犬に背を向けて去っていく。
「まって!!、あなたは何者なの?」
「あぁ?、さっき言ったじゃねぇか」
月明かりに照らされて、白い髪と黒い瞳が輝いていた。
「白鬼、妖怪だ。」
ニヤリと笑う彼の顔は、ずっとこれから先忘れることはなかった。