第一部・プロローグ
私は眠気がまだ残っている中、目を覚ました。昨日は何故か異常に疲れていたみたいだ。何があったのだろう。
十一月はよりいっそう寒くなっていく、そんな季節はフカフカで暖かい布団が恋しい。私は少しの間、掛け布団にくるまっていた。今日の朝は本当に寒いのだった。眠気と寒さで最悪な朝だ。
私はふと壁の時計に目をやる。時計は短い針が数字の七を、長い針は十二を指していた。
つまり、今は七時……?
何かを忘れている、そんな不安に突然私はとらわれた。その瞬間、眠気が一気に吹っ飛んだ。
何か……、何かを忘れている。
考えに耽っていると、ガタガタガタと何かの音が耳元で鳴り響く。私は首だけを音の方向に向ける。するとメタリックブルーの携帯電話がバイブレーションを鳴らしている様子が目に映った。
私の携帯電話にはアラーム機能がついているが、アラームをセットした覚えなど無い。となると、メールが届いたか電話か、私は自分の携帯を手に取った。
何かイヤな予感……。大切な事を忘れている予感……。
私はバイブレーションの長さに冷や汗をかいた。メールであれば十秒でバイブレーションが止まる設定をしているのだが、明らかに十秒は過ぎている。
つまり、間違いなく着信。
誰からなんだ?
私は慌てて携帯電話を開き、画面を見た。
『山口紗理奈』
私はこの瞬間、三日前からの出来事を思い出した。