序章-8 始まりのUNUSUAL
令和初の投稿!
そして、この話は長めに書いています!
まだVRに行きませんが、ここから事件が始まります
その事件こそ、VRに繋がります
どうぞ、ご覧あれ!
何で、こんな事になるんだ……
どうしようもない、感情。
なぜ、こんなタイミングで襲う。
そんな怒りが込み上げてくる。
「…………少々、喋り過ぎましたね」
ユイは腕時計を見ながら、言った。
「とりあえず、ここから出ましょう」
「………………」
……従うしか、ないか……
ユイの提言に、彼は頷くしかなかった。
「……あの、ユイさん」
ミッチーは、ユイを呼んだ。
「……何でしょう?」
「………………」
呼んだのに、ミッチーは沈黙していた。
少し俯いていたら、顔を上げて質問する。
「…………お父さん……は?」
気まずそうに。
「………………」
ミッチーの優しさ。
父親を心配するのは当然だ。
でも、彼は父親との〝溝〟がある。
そんな兄の前で口にするのも、辛いと思うだろう。
その現れとして、目線があってもすぐ逸らした。
申し訳なさそうな、表情で。
「……大丈夫ですよ」
ミッチーの表情を見て、ユイは答える。
「私の知り合いが護衛に付いていますから」
「……?」
無表情のユイから出た答えに、ミッチーは首を傾げた。
……知り合い?
誰なんだ、そいつは?
彼も分からなかった。
同じボディーガードなのは分かるが、その人が誰なのかは分からないのだ。
ユイ以外のボディーガードは、あまり会った事はない彼。
知るよしもないが、気にはなる。
「だから、安心してください」
「……う、うん……」
マニュアルの様に発言するユイ。
それにミッチーは、彼の懐から離れて頷いた。
……今は、それどころじゃない
いつ襲撃されてもおかしくない状況。
この疑問は後回しだ
だから彼は、そう思う事にした。
「と言う訳で、ここから出ましょう。いいですね、クッシー君」
顔を変えずに、釘を刺すかの様に、ユイは言った。
「……ッ」
釘を刺されるクッシー。
何かを耐える様な顔で、少し口を閉じた。
「……分かった」
次に出た言葉は、肯定。
自分の事より、友達の為にクッシーは頷いた。
「よろしい」
そう頷き返すユイ。
「じゃあ、これをお持ちください。クッシー君、ニィチ君」
そう言ってユイは、中国風コートの中から何か探した。
「?」
「………………」
何か分からないクッシーに、嫌な予感を覚える彼。
……まさか……
「気休め程度ですが、どうぞ」
ユイが取り出したのは、折り畳み式の黒警棒と黒いメリケンサック。
「お、スゲー」
「オイ……」
そのアイテムに感心するクッシーに、呆れる彼。
「護衛用、最新武器です」
「イヤすいません、ユイさん。ここで受け取って良いものでしょうか、これ?」
武器の事を簡潔に話すユイに、ツッコミを入れた。
彼等は武器を受け取ろうとしている。
受け取るのはいいけど、場所が悪かった。
「あれ、何か武器を渡そうとしてない?」
「えっ、嘘?」
「何? 何なの、あの人達?」
「テロリスト……?」
「イヤ、あっち子供だぞ?」
不穏な空気の中のざわつき。
即通報されるレベルだ。
「護身用です。大丈夫です」
真顔できっぱりと、ユイは言った。
「………………」
絶対、メンドくさい事になる
そう心の中で断言した。
「これがあれば、何とかなるね! 襲撃されても!」
もう受け取ってるし
さっそく装備するクッシーに、ツッコミを胸の中でする。
「……これ…………絶対ダメな……気がする……」
「……うん」
冷静な意見をするメイに頷くミッチー。
「ミッチーちゃんとメイちゃんを守る為です。事情は私から話しときますから」
そうユイは言った。
「………………」
ここまで言われた以上、警棒を受け取るしかない。
「……分かった。ありがとう」
お礼を言って、ポケットの中に突っ込んだ。
「では、通報される前に……混乱する前に行きましょう」
言ったな
自覚してる所を言ったな
もうテロリストとして捕まるかも知れないが、ユイはこの場を離れる。
その背中を見て、クッシーを見る。
「………………」
ユイの背に向けた感情は、諦め。
クッシーに向けた含みは、こうだ。
……行くぞ
その含みをクッシーは読み取り、拳を見せて歩き出す。
それに合わせて、彼も歩き出す
「……行こう、メイちゃん」
「……うん、ミーちゃん」
そんなやり取りをして、ミッチーとメイも続く。
「……大丈夫だ」
その会話を聞いた彼は、こんな言葉を口にする。
「オレが必ず、守る」
この言葉は、彼の決意。
大切な物をまた、失わない様に。
今度こそ、戦う。
守る為に。
そんな決意。
まずは、脱出
それまでに、邪魔するヤツ等は――――――
――――ぶっ潰す
怒りと決意。
それらが混ざり、〝殺意〟が芽生える。
そんな感情を持って、この公園から退避を目指す――――――――。
だが、異変は起こった。
市民の森から出る直前、ユイは立ち止まった。
「!?」
「……どした?」
彼は疑問を持ち、クッシーは疑問を口にする。
この時に彼等はユイに続き、足を止めてしまう。
「?」
「……何?」
ミッチーもメイも、足が止まる。
不安を覚えながら。
「………………」
ユイの反応がない。
「え……あの……ユイさん? どったの? ねぇ? ユイさん?」
クッシーは軽々しく言いながら、回り込む。
「……」
嫌な予感を覚えながら、彼も回り込む。
そこで、目にしたものは――――――
「………………」
ユイは動揺した顔で、自分の手を見つめていた。
「……ッ」
そんな感情を出す事態、珍しい。
なぜだと、口にする瞬間。
ドクンッ!
「!?」
何かが満たされる様な、鼓動。
思わず胸を掴み、よろめいた。
「!? 相棒!?」
その異変に、心配の声をかけるクッシー。
「……!」
「お兄ちゃん!」
心配するメイとミッチー。
「大丈夫か!? オイ!」
クッシーの声が、籠る。
頭の中が霞む。
でも、それ以上の異常はない。
肩に掴まれた感覚もある。
「……あぁ、大丈夫だ」
だから、こう答えた。
その異常はもう、慣れた様に薄まっていた。
でも、何か漲る感覚は消えなかった。
「………………」
ユイは彼を見ている。
「……ッ」
それに気付き、ちょっとビクッとした。
でも、あの表情は分からなかった。
呆然、なのであろうか。
感情を出さない分、含みも何もかも読めない。
本当に分からなかったが、これだけは分かった。
……知っているのか……この感覚を……
そんな素振りを見せたから、そう推測できた。
「……!」
そう考えていると、急にユイは正面を向いた。
何か感じた様に。
「………………」
彼は前を見る。
そして、目にする。
おかしな光景を。
「……何だ、これ……?」
驚愕の声が漏れる。
茫然と立ち尽くしてしまう。
なぜなら、青いオーロラが発生していたからだ。
「……うっそっ……だろー……」
クッシーの驚愕。
「………………」
メイの茫然。
「……キレイ」
ミッチーの感想。
状況が頭に追い付いていないのだ。
「……魔術……結界……ですって……!?」
ユイの声。
冗談みたいな言葉に、驚愕した口調。
「………………」
ユイの驚愕した顔を見て、もう一度空を見た。
「……ナニコレ」
「何? 何かのイベント?」
「……キレイだなー……」
ざわつく客。
「……こんなの、あったけ……?」
「さぁ……」
警備員の私語。
そして、彼は思った。
……こんなの、マンガみたいじゃないか……
次回、襲撃開始
異常と幻想が絡まり合う
更新は今月、29日と30日にします
今後とも、よろしくお願いいたします!