序章-7 始まりのCHAOS
7話で(序章6話だけど)、PV500突破!!
なので、急展開する話だけど、ちょっと長めにかいています!
どうぞ、読んでください!
黒開暦5年7月17日
午後0時3分
大阪城公園・市民の森
騒然とする人込みの中をかき分け、急いでミッチー達の所へ戻っていった。
「……!」
彼は、見つけた。
あの3人を。
「ミー! クッシー! メイ! 無事か!?」
即座にそう叫んだ。
「! お兄ちゃん!」
不安そうに座っていたミッチーは、彼の声に反応して立ち上がった。
そして、彼に抱き付いた。
「ッ」
その反動で声が漏れた。
「……心配、したんだから……」
よほど、彼の事を心配していた様だ。
ミッチーの声に、彼はこう思った。
……心配、してたんだな
そう思って、ミッチーの頭を撫でた。
「……そっちも……無事……だね」
不器用にメイは言った。
さっきまでミッチーの隣で、なだめていたのだろう。
「ああ、無事だ。心配させて、すまなかったな」
彼はメイとミッチーに、そう答えた。
でも、問題は――――――――
「……オウ、相棒」
クッシーだ。
彼に気付く前は、険しい顔をして立っていた。
「無事だと思ったぜ」
そう言いながら、歩み寄った。
けど、いつもとは違った。
いつもより軽さがない。
いつもより笑顔が引きつっている。
「……ああ、無事だ」
だから、彼は言わなきゃいけない。
「それより、クッシー」
「ん?」
このセリフを。
「あんまり、気を詰めるなよ」
「………………」
そのセリフにクッシーは、きょとんとした
「……プッ、クフフッ」
でも、それは一瞬だった。
軽く笑って、軽く言った。
「いや~、バレた? アハハハッ」
「……情緒不安定……」
そうツッコミを入れるメイ。
でも、これがいつものクッシーだ。
けど、まだいつもの状態ではなかった。
「……でも。相棒が言うんなら、やっぱあいつ等なんだな」
軽い笑顔なのに、目が笑っていなかった。
その目に感じるのは、復讐に燃えた怒りだ。
「――――――」
たまに見る目だから、そこまで恐怖はなかった。
むしろ、心配になった。
復讐の先にあるのは、悲しみと虚しさだけだ。
それに〝事情〟を知っている分、必ずクッシーは自分の身を犠牲にする道を選ぶだろう。
だから、心配になったのだ。
「………………」
そのクッシーの言葉をどう返そうか。
そう迷った時に、〝ある人〟が答えた。
「……ええ、その通りよ」
「!」
女性の声。
不穏な喧騒の中で聞こえた。
声の方に振り向くと、人込みの中を避けて来る女性がいた。
夏なのに、中国風コートにスーツの女性。
不自然な格好だが、知り合いだ。
「ユイさん……」
彼はその女性の名前を呟く。
肩まで長い内ハネヘアの女性の名は、虹架 結。
安東家を守る、凄腕ボディーガードなのだ。
「この付近にいる不審集団は、そいつ等で間違いないわ」
表情変えずに、ユイは詳細を口にした。
「「!」」
その詳細に、彼とメイに緊張が走った。
「え」
それはミッチーも同じだった。
そして生まれる不安で、彼の服を握り締める。
……まさか、本当に……
「……そう何スね」
ユイの言葉を、静かに受け止めて、クッシーは呟く。
恐ろしいほど、低い声で。
恐ろしいほど、鋭い目で。
着実に、殺意が膨れた。
「そうよ」
そんなクッシーに対して、ユイは顔色1つ変えずに言った。
「――――日本国内、最大の過激派宗教団体・《ハレルヤ教団》」
不審集団の名を。
「以前、〝前暦〟から博士に嫌がらせをしていた宗教。違法軍隊・《ヴァルハラ義勇軍》を持ち、それを使って襲撃行為を行っているわ」
そして続け様に、ユイは説明する。
「……それに……《ハレルヤ教団》は……過激な布教に、洗脳・誘拐等もしてるから……。結構危険な、宗教組織……なの……」
メイの捕捉説明。
「そう、そんな組織が近くに来ている」
メイの捕捉を頷いて、ユイはまた口を開く。
「予想される目的は、3つよ」
ユイの言葉が出てくるほど、周りの緊張感が高まってくる。
「1つは布教活動」
ユイは述べる。
指を一本立てながら。
「2つは襲撃」
ユイは述べる。
指をまた一本、立てながら。
「そして、3つは――――――」
そして、また指を一本立てた。
指三本を立てたユイは、また述べる。
「〝ゲームサーバー〟よ」
「――――――!」
その予想に、彼は衝撃を受けた。
「……サーバー……」
メイも同様。
動揺しながら、呟く。
「……お兄ちゃん……」
ミッチーの目線。
誰かを心配する様な、声。
「……それって、つまり――――」
そして、クッシーは気付く。
衝撃的な予想でも、その予想を直感的に連想してしまった。
最も強い、確証のある予想を。
「……」
ユイは頷いて
「〝オブシディアンクリスタル〟」
言った。
「「!」」
彼とミッチーに、再び緊張が走る。
「マジか……」
外れて欲しかった様に、呟くクッシー。
「………………」
そしてメイは、言葉を失った。
こんな状態でも、ユイはまだ口を開き続ける。
「《日本大災害》で消滅した都市――――――〝旧都〟から発掘された宝石。普通から見れば、ただの黒曜石」
サーバーのコアとなる、〝オブシディアンクリスタル〟の説明。
「だけど、中身は違った」
無表情のまま冷静に
「電磁記憶ができる特質を持っていた」
前置きから核心へと近づかせる。
「それを利用して、アンドロイドやモバイルを作った。だから、皆はこう例えた」
核心の話。
最初の言葉はこうだった。
「〝魔導石〟と」
「………………」
彼は分かった。
いや、元から分かっていた。
この話の続きを。
「こう言えば、宗教組織である《ハレルヤ教団》は欲しがる。まして、〝VRゲーム〟と来ました。過激派で、オーディン崇拝。これだけ揃えば、答えは見えてくる」
答え。
もう皆は分かっている。
《ハレルヤ教団》の、本当の目的を。
「〝デスゲーム〟」
「――――――」
分かりきっていた答えなのに、言葉の重みで緊張感が走ってくる。
「………………」
メイは沈黙している。
「………………」
ミッチーも同じだった。
「〝オブシディアンクリスタル〟……モバイルやサーバーのコアとなった、黒曜石……」
クッシーは呟く。
悔しそうな、様子で。
「………………」
彼は思う。
何で、こんな事になるんだ……
不穏な空気に、衝撃的な言葉
ゲームイベントが中断されるか、それとも……?
次回もお楽しみに!
※僕の都合上の理由により、5月は休載させていただきます
予定としては、6月の15か16日に更新します
皆様のご理解を頂ければ、幸いです