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《OCO》-オブシディアンクリスタルオンライン-  作者: 仲元心影
序章 『始まりの現実』
6/46

序章-5 始まりのTRAUMA

今月は何とか間に合いました!

今回はシリアス展開になります

どうか、最後まで読んでください!

黒開暦こくあれき5年7月17日

午前11時31分

大阪城公園・東外濠付近

 市民の森から出て、すぐにある所に来ていた。

『ねぇ、ちょっと。聞いてる!? ねぇ! ねぇってば!? あたし、もう時間がないんですけど!?』

 人込みの喧騒でも、モバイルからエミの声が聞こえる。


 ……そろそろ出た方がいいな


 そう覚悟を決めて、モバイルを耳に当てた。

「……何だよ」

『何だよ、じゃないわよ!! 何で無視するの!?』

 当然、エミの怒号が響く。

「……イヤ、場所がうるせーから……」

『はぁ!? こんなに叫んでんのに、聞こえない訳!?』


 怒鳴ってる自覚があるんだ


 そう思ったが、口に出す事はなかった。

 言ったら、さらにキレられるからだ。

『て言うか、一言くらい言いなさいよ!! このバカニィチ!!』

 否。

 もう十分ご立腹だった。

 ちなみに〝ニィチ〟という名は、クッシーが付けた彼のあだ名である。

「………………」

 これはもう、謝り続けるしかない。

 そう悟った彼は、実行する。

「……悪かったよ、エミ。お前に連絡しなかったのは、謝る。許してくれ」

 本日4回目の謝罪。

「オレはただ、約束のイベントがあってだな……」

『ハ? アンタ、イベントに行ってんの?』

 そして理由について、エミはイベントというワードに引っかかってしまった。

 恐ろしいほど、低い声で訊ねてくる。

「え」


 ヤバイ


 そう直感したので、急いで訂正する。

「あ、イヤ……ちょっと待て。イベントと言うのは、〝VRゲーム〟の方でな」

『――ッ』

「そこでミー達と、その……約束してしまったんだ」

 ブチギレ防止に、訂正言葉を濁す。

「それに関しては、本トにごめん。でも決して、サボりにきた訳ではないんだ。感覚で操作する〝フルダイブシステム〟なら、部活に活かせるだろ。な、エミ」 

 何とか訂正し、言い訳を言いきった。

『………………』

 でもなぜか、エミは沈黙していた。

「………………」

 なぜ無言なのかは分からないが、彼はこう思った。


 ……まさか、怒ってる……のか?


 激怒寸前かも知れない。

 そう思った。

「……なぁ――――」

 このまま黙っているはマズイので、呼びかけようとした。

 その時

『ねぇ』

 エミが口を開いた。

「ッ!?」

 その事で彼は一瞬、ビクッとした。

 確かに、低い声だった。

 でも、さっきまで怒っていた感じはなかった。

『ニィチ』

 まるで、心配される様な感じだった。

 そんな声で、名前を呼ばれた。

 そして、こう言われた。

『おじさんと仲直りしたの?』

「――――――――」

 彼は少し、動揺した。

 その言葉に動揺した。

 なぜなら、彼にとって一番聞きたくなかったからだ。

「…………何で、そんな事を聞くんだよ」

 〝おじさん〟――――彼の父親との深い〝溝〟がある事は、エミは知っているはず。

 なのにどうして、そんな質問をしたのかを訊ねる。

 理由は――――()()()()()()()()が。

『……それは、アンタが一番知っている事でしょ?』

 そんな文句を言って、答えた。

『〝VRゲーム〟を作ったのは、アンタのおじさんなんだから』

「………………」

 やはり、分かりきっていた答えだった。

 彼の父親は、〝VRゲーム〟の開発主任であった。

 その立場を利用して、ミッチーが〝ベータ版〟に参加できる様に手を回していただろう。

 無論、今回もそうだ。

 〝VRゲーム〟正式サービスプレイ権を獲得できるのは約1万人。

 多い様で少ないプレイ権を獲得できたのは、きっと父親が働いた結果だろう。

 でなきゃ、クッシー達と一緒に当選するはずはないからだ。

『……やっぱり、仲直りしてないのね』

 エミは察した様に呟いた。

『ずっとお母さんが心配していたわ。いつ、親子の溝が埋まるかなーって』

「………………」

 エミの言葉が痛い。

 まるで針の様に、心に刺さる。

『それとも…………まだ許せないの? 〝あの事〟に』

「――――!?」


 ドクンッ


 今度は釘の様な言葉が出てきて、突き刺さった。

 そして脳裏に嫌な思い出がよぎる。

 トラウマとも言える、嫌な思い出が。

『〝あれ〟は、仕方がなかったのよ』

 エミの言う事が、耳に入らない。

 よぎる。

 〝日本大災害〟が起きた日の事を。

 母の死を知った日の事を。

『誰も、あんな事になるなんて、分かるはずはないの』

 よぎる。

 ミッチーの記憶が無くなった日の事を。

 母の葬式を行った日の事を。

『だから……』

 よぎる。

 父が、〝戦争〟に関わった事を知った日の事を。

 父が、人の心を壊した事を知った日の事を。


――――――過る。

 父とケンカした、あの日を――――――


『もう許してあげて――――――』

「うるせぇ」

『――――――』

 今まで思い出さない様にしてきたトラウマが、痛い。

 そんな無意識の、発言。

「…………要件は、それだけか?」

 痛みからくる、イラつき。

 もう入ってくるなと言う、セリフ。

『………………』

 エミはまた、黙ってしまった。

「……なら、切るぞ」

『あ、待って!』

 そう電話を切ろうとすると、エミが待ったをかける。

『待って……』

 エミの心配する声から、悲しそうな声になっていた。

「………………」

 その声を聞いた彼は、手を止めた。


 ……何で悲しそうなんだよ……

 自分で話したくせに……


 そう思ったけど、電話を切れなかった。

 あんなエミらしくない、悲しそうな声を聞いたらからだ。

 そして彼は、モバイルを耳に当てた。

「…………何だよ」

『………………』

 そう訊ねても、エミは黙っていた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

次回は3月の30か31に更新します

次回もお楽しみに!



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