第一章-12 不穏なFIRST EVENT
彼女から出た言葉は、本当に信用する事が出来るのであろうか?
それとも、自分〝だけ〟が逃げているだけだろうか?
「それについては、本当に言えない……」
「…………」
「でも、シャドウくんが〝傷付いて〟いるのが、分かったから」
「……ッ!?」
そんな真正面に、言われても。
「触れられちゃったから、あんな《嫌なこと》を言ったのも。分かったから」
そんな眼を、向けられても。
「全部、ワタシが悪かったよね?」
だから、そんな言葉を。
「本当に、ごめんね。シャドウくん」
「――――――」
そんな事で、謝らないでくれ。
後悔とか、罪悪感で、後ろに引っ張られる。
どうか、頭を上げて欲しい。
ここで〝敵〟が来たら、彼は本当に――――――
「……あれ?」
そう言えば、〝モンスター〟が、出てこない?
唐突に沸き起こった《違和感》。
彼に浸るべき感情がすべて。
〝嫌な予感〟に支配される。
「アイリス、お前は――――――」
ここで確認を取ろうとした瞬間。
ピピピピピピッ!
ピピピピピピッ!
「ッ!?」
「え!?」
〝O・D・モバイル〟から、謎の着信音が鳴り響く。
「………………」
先の戦闘の時も、モンスターには遭遇する事がなかった。
もうすぐ8時になるタイミングで鳴ると言う事はつまり、《乗っ取られた運営》からの《通知》が届いた、と言うになる。
「何!? あ、もばいる? なのかな……?」
アイリスもモバイルを取り出して、中身を確認しようとする。
それに合わせて、彼も同じ様に確認した。
そして、こんな通知が届いていた。
『ファースト・イベント』
「――――――」
何処と無く不穏で、身の危険さえ感じる。
でも、これを押さなければ話が進まない。
詳細を開いた時に、表示された文面はこうだ。
『これより、ファースト・イベント「来訪の試練」を開催いたします!』
『今から30分後、《始まりの街》・〝カーディナル・ミッドタウン〟に《軽銀歩兵》の部隊が攻め込んで来ます』
「――――ッ!?」
内臓が冷える。
思考が一気に消される内容。
『これを阻止する事が出来ません。クリア条件は部隊の〝壊滅〟と、指揮官の〝撃破〟です』
『どちらかを達成すれば、イベントクリアとなります』
『また、同日の9時30分までに達成できなければ、イベントは失敗。この世界のモンスターレベルを数値5まで、引き上げさせてもらいます』
『それでは皆様、ご健闘を』
『運営より――――――』
「――――――」
読みきって、沸いた感情が。
情報がぐちゃぐちゃになって、混乱する。
「……え、何これ……? どういう、意味なの……?」
アイリスも顔色が変わって、青ざめている。
「……ッ」
息が苦しくなる。
こんなの、生かす気がない。
どのみち殺し合いを、機械的に行うつもりか。
民間人だけの犠牲を払い、〝魔術的〟な。
〝呪術的〟な《儀式》を成功させるつもりか。
様々な憶測、仮説を立てて。
理性的に落ち着かせようと、無意識に働く。
「…………」
しばらく冷たい、静寂が続きそうだったが。
突如、状況が一変する。
バキバキバキ、メキメキメキ!!
「……ッ!?」
「え!?」
マップの〝警告〟。
正常に意識が戻る。
目の前に盛り上がる、白い〝結晶化〟。
「――――――」
また沈黙になるが。
今度は緊張感と、言い知れぬ〝何か〟で渦巻いている。
『――――――』
ピシッ、ピシッピシッ!
産まれた、目を覚まそうと〝殻〟を。
――――――〝結晶〟を、突き破った。
「……ッ!?」
『――――ウルルルルルル……!!』
現れたのは狼。
一回り大きくて、暗い色の毛に覆われた野獣。
それが3匹〝ポップ〟したのだ。
「……ッ!!」
明らかに敵意を、殺意を向けている。
ここからは、本当に。
《デスゲーム》が始まると、そう彼に告げられた気がした。
『……ガアアァァァァ!!』
一瞬の沈黙を破って、咆哮を上げながら。
暗い保護色の狼たちは襲いかかる。
「――――――」
いきなりだけど。
その手に《R.P.G.C》を持っていたから。
「――――ふん!!」
『――――ギャァァァッ!!!』
リーチの長い、3匹まとめて。
彼は反撃した。
《デスゲーム》、本格的に始動する
次回もお楽しみに!!
次の更新日は25日か26日です!!
今年最後まで頑張ります!!