第一章-11 〝人〟としてのNATURE
本当に遅れてしまって、すみませんでした!!
今回から話が急展開にしていきます!!
それでは皆様、ご覧ください!
「……何でもねぇよ」
そう言って、彼は辺りを見渡した。
月明かりが綺麗に周りの風景を映し出している。
暗い影の様な色をしたオークの木々と、内側に広がる草原の波。
ここで戦闘があったなんて、思えないくらい。
自然だけが広がっていた。
「………………」
やはりあのテロリストは〝消滅〟しただろうか。
どこにも見当たらない。
あの〝石くず〟も、〝弾痕〟も、〝白い血痕〟も。
何もかも、無かった。
「…………」
するとアイリスは、こんな事を言ってきた。
「あの人は……消えちゃった」
「…………」
「罵詈雑言を吐きながら……死んじゃった」
とても悲しそうな声で、泣きそうな顔で。
言葉を紡いでいる。
「何で、何でこんな事になったのかな? 同じ――――〝人型〟なのに……」
「…………」
そんな事を言っても。
そんな大粒の涙を、ポロポロと溢しても。
どうしたって、何も《変わらない》のに。
「〝人〟だからだよ」
「……っ」
だから、口が開いた。
「〝人〟としての同族嫌悪。または本能的に〝他人〟を、《天敵》として〝認識〟しているからだ」
「……え?」
アイリスは眼を丸くしている。
「〝人〟は《闘争本能》の塊だ。〝他人〟を使う事を覚えた奴らだけが成り上がり、〝殺人〟を起こしまくる」
「……ッ!?」
その言葉が禁句だったようだ。
アイリスは真っ向に反論する。
「そんな事はないよ!? 〝人〟は――――〝人間〟は、変われ――――」
「変わらない」
「え……!?」
驚きも、怒りも、すべて。
「精神も、思考も、人格も、《命》すら殺せる。どこまでも下等で、愚かな〝人類〟しかいねぇんだよ……!!」
彼にとって不快にさせる、材料でしかなかった。
「……シャドウ、くん……」
「――――――」
哀れみとか、手を伸ばすとか、止めてくれ。
《過去》を思い出すから。
『――――――』
ノイズが痛い。
トラウマが脳内を刻み、走り回っている。
「……じゃあな」
「………………」
アイリスから離れないといけない。
そんな嫌悪感が、溢れ出したから。
彼は、この場を後にした――――――――
黒開暦5年7月27日
仮想世界・《暗黒の森》の山奥
アイリスから情報を聞き出す事に失敗した彼は、一人で〝O・D・モバイル〟を頼りに歩き出していた。
「…………」
一応、目的地として指した場所に向かってはいるが。
ざっくり言うと、めちゃくちゃ遠い。
「…………」
どれだけ歩いても、一向に街明かりが見えない。
何でこんな所に飛ばされた理由は――――――見当がついている。
恐らく、アイの《干渉》によって、スタート地点がズレたんだろう。
「…………」
時間を確認する。
午前7時56分。
自分が起きた時間は最低6時だと、脳内で処理する。
「――――――」
ようやく、自分の気持ちにケリが付いた。
手に持っていた《宝剣》――――――アイテム名《R. P. G. C. 》を抱え、走り出そうとした瞬間。
〝誰か〟の反応が引っ掛かった。
「……ッ!?」
テロリスト!?
プレイヤーなのは確実。
〝誰か〟がゆっくりと、そして速く動いてるから、〝機械〟のプレイヤーではないのも確か。
そう考察を巡らせ、彼は《R.P.G.C》を構えた。
「――――――」
ズキ……ッ
《超能力》が使えない。
冷や汗が止まらない。
そう息を飲んで、こちらに近づく反応を迎え撃とうとする。
「…………」
接触する。
その直前で止まった。
「…………」
なぜ止まったのか。
不意打ち狙いなのか。
よく分からない。
「…………」
このままじゃあ、埒が明かない。
このまま回復した、《アクションスキル》を叩き込もうと構えると――――――
「……あ、待って!!?」
「ッ!?」
見知った、と言うか十数分前に聞いていた。
そんな声が、聞こえた。
「《アクションスキル》は、叩き込まないで……。ワタシ、味方だから……!」
そう言いながら、両手を上げたアイリスが出てきた。
片手に《朝型》を持ち、暗い色の木々から出てきたって事は。
「……つけてきたのか、お前」
「あー……。ウン、ツケテキタ」
「何かあっただろ、オイ」
言葉どころか、アイリスの視線がズレたぞ
「確実に何かあっただろ! 何、隠してる!? 言えや、ゴラァ!!」
「えっ!? いや、だって。シャドウくん、メチャクチャ怒ってるんだもん!! 言ったらメチャクチャ怒るんだもん!!」
「怒るって、やっぱ何かあっただろ!!」
自ら墓穴を掘りに行くスタイル。
本当にアイリスの中身は、子供だった。
「誰だ、誰あった!!?」
「ッ!?」
「そうとしか、考えられねぇよ!!」
「………………」
そう指摘すると、アイリスは俯いてしまった。
「…………ッ」
少しずつ、イライラしてくるが。
この短期間で、アイリスをここまで向かわせる〝人物〟は誰かについて―――――少しだけ、心当たりがあった。
それを口に出そうとした瞬間、アイリスから先に口が開いた。
彼女から出た言葉とは?
次回の更新日は27日か28日です
お楽しみに!!