第一章-10 反転するSENSES
《超能力》は〝無限〟ではない
〝体力〟と言う〝有限〟がある
「……!!」
「――――――」
銃口を向けられ、また《加速》を使う。
もう〝気力〟が、〝呪力〟が、〝何か〟がないのに。
それでも使え、動ける。
「――――――」
「……ギャア!!」
「ガァッ!!」
「ギッ!!」
《加速》のオンオフを使い分け、一瞬で軽銀歩兵どもを。
取り囲んでいた敵も全て、一掃する。
「――――――」
白い消滅エフェクトの光に照らされ、ようやく自分の〝現状〟を理解できた。
つまり、彼は崩れ落ちた。
「……! シャドウくん!!」
アイリスが駆け寄る音が聞こえる
声も聞こえるが、それ以上に高い耳鳴りの音が響いてくる。
「……ハァッ……ハァッ……ハアッァ……!!」
心臓が高鳴る。
思考が、できない。
音だけで、全身に痛覚が響いてくる。
「やっぱり、〝人能〟の――――〝超能力〟の使いすぎで、痙攣が……!!」
正常な判断、反応ができない。
でも、アイリスが何かを言ってるのは聞こえる。
「どうしよう……!?」
視界が映らない。
頭を動かせない。
「……ハァッ……ハァッ……」
意識が、遠のく――――――
深海の底に、沈み込む様な感覚に襲われる――――
「…………」
冷たい、暗い。
まるで〝死ぬ〟様な、そんな恐怖が支配される。
「――――――」
感情が忘れていく。
消えかける、その瞬間で景色が〝反転〟した。
『――――――』
真っ白い〝人形〟が、背を向けている。
「…………ぁぁっ」
ミー……!!
手を伸ばす。
紛れもない、妹の後ろ姿を。
「――――――」
手が見えない。
無い様に感じる。
振り返って欲しい。
そう願う。
『――――――』
その思いが届いたのか、《彼女》は振り返る。
「――――――」
顔が見えない。
光で満たされており、ツインテールの様な短髪に目が入る。
――――お前は……!!?
妹じゃない。
こいつは――――あの《宝剣》に住む、〝精霊〟だ。
『――――――』
そんな冷たい思考が、脳内に走る時。
《彼女》は笑った。
直感した。
そして周りが、《火の海》へと変わった。
「――――ッ!!?」
一瞬の恐怖。
包まれる、母性の様な暖かさ。
「――――――」
気持ちが安らぐ。
気分穏やかに、眠気が――――――
『今度は――――――』
〝精霊〟の声が聞こえる。
けど――――――――
『使いすぎには注意だよ、少年♪︎』
後ろから、〝アイ〟の声が――――――
「――――――ッ!!」
「わっ!?」
「ハァ……ハァ……」
強制的に意識を覚醒させられた。
心が、焦る。
冷たい感情とさっきまで暗い、重い記憶が頭の中で駆け巡っている。
「……あ、あの……」
彼は混乱している。
それを見た、心配したからアイリスは声をかけてきた。
「大丈夫、かな……?」
「………………」
視界を入れる。
さっきまで〝ひざ枕〟をしてくれていた様だ。
「……すぅっ、はぁ……」
「あ、落ち着いた? 良かった!」
「違うわ」
満面な笑みに、思わずツッコミを入れた。
「何で見ず知らずの〝人でなし〟にひざ枕なんかしてんだよ! もうちょっと警戒しろや!!」
「うっ……。で……でも、〝人でなし〟なんか、じゃないもん……!」
アイリスが子供みたいに反論する。
「立派な、《人間》だもん!!」
「…………」
そんな涙ぐんだ目で言われても……
少し罪悪感を感じてしまう。
「むー!」
口を膨らませて、明らかにアイリスは反抗する態度を取っている。
「…………」
やっている事は、ほぼ子供だが。
どこか、〝言葉〟は、心に刺さっている。
『――――』
そして記憶が再生した。
刺さった〝言葉〟は、エミの記憶へと〝共振〟したんだ。
『ニィチ』
あの微笑んだ、あんな〝言葉〟を発した。
《あの日の記憶》。
『あんたは、優しい《人間》よ』
「――――――」
不意に思い出したから。
だから、こんな〝温情〟も出てくるのだろう。
「……悪かった」
「えっ!?」
アイリスは驚きの反応を見せている。
「あ、どうして……?」
「………………」
視線をずらしているから、アイリスの表情が分からなかった。
でも困惑しているのは、間違いなかった。
「……何でもねぇよ」
そう言って、彼は辺りを見渡した。
そうして、戦闘は終了した
次回の更新は30日か31日になります!
お楽しみに!!