間章1-1 狭間のSPIRITUAL
1話完結です
あの〝少女〟も登場します!
では、ご覧ください!!
「――――――うッ……」
彼は目覚める。
身体は当然痛み、無理やり起き上がる。
「…………ここは?」
頭が重い。
胸を押さえ付け、辺りを見渡す。
真っ白い世界。
いや、空間が歪む様に黒線が入ってる。
「………………」
嫌な予感。
押さえ付けてた手を放し、目をやる。
――――――血が、なかった。
「――――――」
―――――嘘、だろ―――――
過呼吸に苛まれる。
ここは、《死の世界》なのか――――――?
「残念」
唐突な、声。
「ッ!?」
「生きているわ」
彼は振り返って、姿を確認する。
その声、その髪。
見覚えがある。
「……〝エンマ〟……!!」
その笑う少女の名を呟く。
確かにあの姫カットの少女だ。
不思議な雰囲気で、赤黒の道服の様なブレザー制服を着ている。
見た目で言えば、彼と同じくらい歳だ。
「そう畏まらないで」
歪で、どこか皮肉を感じるエンマに、そう語りかけてくる。
「………………」
警戒。
無意識に身構える。
「……フフ」
こいつ、滑稽だと思いやがったな
「そろそろ説明しないと時間がなくなるわねぇ」
意味深な言葉。
深い笑みに、エンマは言葉を繋げていく。
「とりあえず、久しぶり。私の名前は――――あー……。アイでいいわ」
「……〝閻魔〟じゃねぇのか?」
「それは名字よ。〝閻魔〟の〝哀しみ〟。だから、哀」
「…………」
さらっと自己紹介されて、少し戸惑う。
「それに《死後の世界》だけど、普通は裁判チックよ」
「チック言うな、和製神様」
何で横文字使うんだ
「神様だからこそ、公正に判決する。そして、《地獄》に叩き落とす」
「公正、どこ行った」
なぜだろう。
こんなコミカルなコミュニケーションだと、だんだん怖さとか皮肉とか感じなくなっていく。
「……まぁ、こんなとこでいいかな。そろそろシリアスに入ろう」
「いいのか、それで」
もうおかしな電波しか聞こえねぇ
「いいのよ。人間、頭を軽くしないと受け止められないから」
「――――――」
ちょっと心臓が掴まれた。
目が、マジだ
「まず、君が落とされた場所について」
一気に緊張感が渦巻いていく。
「あなたが落ちた《世界》は――――――《仮想世界》よ」
「――――は?」
何、で?
「あの《現象》は、私にとって〝想定内〟」
追い付いて、いけない。
「ホールにいた人含め、あの〝公園にいた人全員転送〟したわ」
「――――――」
思い出す、妹の親友。
「メイ……」
巻き込んでしまった。
自分の勝手で、気弱い女の子を巻き込んでしまった。
「そう、メイも。クッシーも。ユイも」
肯定され、アイから出た言葉で、彼に更なる現実を突き付けられる。
「――――トーカもね」
「――――ッ!?」
頭が真っ白になった。
「これ以上は自分の目で見てね。これから〝転送〟される世界について、アバターの説明しとくね」
そう言って、アイの指をこちらに送る様になぞった。
すると、《ウィンドウ》的なパネルが出現した。
そのパネルの上に、〝O・D・モバイル〟が置かれていた。
「……モバイル……」
彼のオウム返し。
「……覗いて」
アイの言う通りすると、見た事のないホーム画面になっていた。
「…………」
電源付けてのすぐ、ホーム画面。
「ステータスはそう、初期値。格好もすぐ変わるわ」
アイの顔を合わせる。
「あまり早く慣れないと、すぐ死ぬわ」
「…………ッ」
皮肉付いた笑みに、恐怖してしまう。
後退りして、空間が歪む。
「ぐぉッ……!?」
姿勢崩して、彼は分かった。
空間は元々歪んでいる。
歪んだのは、〝自分の意識〟だ。
「……あぁ……あ……」
眠りに落ちていく彼に、アイはこう言った。
「行ってらっしゃい。頑張ってね」
手を振るアイに、掴もうとする彼。
叶わないと知りながら、落ちていく意識の中から。
「これから始まる、〝黙示録〟から……ね☆」
意味深な、皮肉な、人任せな。
どんな意味を持つ言葉を聞かされ、彼の意識は。
――――遠く、どこか、飛ばされてしまった。
〝黙示録〟 開幕――――
次回の更新は28日と29日です!
お楽しみに!!