絵画の店 ローライ家
11
「エナ、まずは仕事の半額を持っていきなさい。約束通り一割は貰う」
「一週間前の客のだね」
「そうです」
クリスチャー、金貨十数枚見せ。
エナ、目つきスケベになり金貨受取る。
マーガレット、金に執着する我が子頭押さえ。
「どうした、マーガレット」
エナ、マーガレットを見て、不思議顔。
「エナお前は、カネと結婚する気か!」
マーガレット、呆れる。
「カネは全てだよ」
エナ、真顔で答え。
マーガレット、ムッとする。
「まあまあ、お二人さん。ここまで! 自分の居ない場所でお願いしますよ」
クリスチャー、笑う。
珈琲、一口飲むとエナに言葉発する。
「エナ、情報提供お願いします。まず銀貨一枚です」
銀貨一枚、小さなテーブルに一枚置く。
使古された銀貨は、黒く変色す。
年期入。
それでも、銀貨は銀貨。
エナ、それを見て頷き、少し視線落とす。
マーガレット、何かはじまるのか? そんな感じで静観す。
「昨日、午後、グレン市長の奥さんが店に来た。要は占いの客だ。表に執事とボディガードを連れてな。太ったババアで、椅子か壊れそうだった」
占いの相手、暴露す。
エナ、昨日の相手、市長の奥さんだった。
「ババアの浮気相手に、奥様に戻ってきます! とか派手にやった」
「ほう、それで?」
「ソレだけさ。おもしろい、情報はなかった。強いて強調するなら浮気している。カネをちらつかせてな。本人は愛情を見せてるだけらしいけどさ」
エナ、呆れるながら言葉発する。
菓子を一口食い、珈琲飲む。
クリスチャー、銀貨を引っ込め、首横に振る。
これではやれない! 無表情だ。
「今回はこんな所さ! 銀貨はないか……仕方ない」
エナ、諦める。
おそらく、ダメとわかっていた様。
「今日、あっさりしてます。どうしてですか?」
クリスチャー、笑いながら言葉発す。
エナ、いつもなら、ゴミみたいな情報も粘りに粘り、カネ要求する。しかし、ない。
「簡単さ、理由は二つ。一つは本当に話題がない。だから諦めがある。二つ目は……」
エナ、マーガレット見る。
マーガレット、眉を顰める。
クリスチャー、頷いた。
どうやらマーガレットの手前、猫を被った。
次にエナ、机に金貨一枚置く。
クリスチャー、少し驚く。
「いきなり金貨とは。その理由は?」
クリスチャー、警戒心丸出しにす。
「まず、隠れ家の紹介して欲しい」
エナ、いきなり言葉発する。
マーガレット、びっくりしている。
「おい、エナ!」
マーガレット、ハスキー声上げ。
エナ、マーガレットと瞳を合わせ。
真剣な眼差しのエナに、何か言葉発したかったようだ。しかしし、まかせる。
「いずれバレるから、こちらから教えておくよ。実は昨日、俺の家で襲撃があった」
「ほう」
「国の兵士達だと思う」
エナ、昨日の事を話出す。
クリスチャー、瞳輝く。かなり興味深々だ。テーブルにある一枚の金貨を返す。
「金貨一枚分の出来事を教えてください」
クリスチャー、言葉発する。
エナ、マーガレットを見た。
「かまわない、ここまできたら続けろ」
マーガレット、珈琲飲む。
冷めたソレには、少し酸味が加わる。しかし喉を潤すには少なく一気飲み干す。
「マーガレットの珈琲お替わりをしますね」
「かまうな、続け……」
「ありがとう、頼むクリスチャー」
クリスチャーの申出、マーガレット拒否するも、エナ受入る。
「エナの願いを聞きますね」
クリスチャー、椅子から立上がる。するとエナ左瞳の視線クリスチャーに向けた。鮮やかな赤い光線、クリスチャーの背中を捕らえる。
マーガレット、それを見て少し驚いた。
「エナ、お前……」
「マーガレット、後で話す」
エナ、マーガレットを制す。
クリスチャー、台所に行くまで数秒くらい。しかしその数秒でも心にある情報が欲しい。
『国が動く? ローライ家でなく、エナとマーガレットに?』
クリスチャー、台所に消える。
エナ、光線切った。
「エナ、お前何をした」
「俺の赤い瞳は、人間の心を見る事出来る。気づかれないように注意は払っている」
エナ、手の内を教える。マーガレット、びっくりしている。まさか、そんな表情が顔にある。
「ローライ家? あの大商人の?」
エナ、ポツリと言葉発する。
マーガレット、それを聞いた。
そこへクリスチャー、珈琲を持って来た。
「お待たせしました。さて、続けましょう」
クリスチャー、笑顔で珈琲カップを置いた。
するとマーガレット、いきなり言葉発する。
「ローライ家、どんな連中だ」
いきなりだ。
そして懐から金貨一枚を置く。それは昨日、グレン草原の羽振りいい男から奪いしモノ。金袋には数切れない金貨眠る。
「やり方がわかった。では、私も遊びたい」
そう言葉発するマーガレット。なんだか爪弾きされ、気に入らない。
クリスチャー、笑顔絶やさず。
「ローライ家、グレン市の『泥商人』』の親玉ですよ」
「泥商人?」
マーガレット、頭捻る。
「大血の血液は泥になっています。その泥に私達人間は縋って生きています」
クリスチャー、言葉発する。
マーガレット、ふうん。そんな感じ。
興味なし。
「マーガレット、金貨仕舞え。そんな連中の話なら、俺でもできる」
エナ、不快感抱く。
「では、最新の情報を教えましょう。マーガレット。どうします」
クリスチャー、言葉発する。
「聞こうか」
マーガレット、即答する。
「よろしい、これは本当にホットな情報です。昨日ですが、ローライ家の次男がグレン草原で殺されたそうです。それも数人の護衛隊と共にです。全滅だったそうです」
「それで?」
マーガレット、平常心。それが心当たりあったとしても。
「それだけ、ですよ。さて、金貨どうします?」
「やる」
マーガレット、短く言葉発する。
クリスチャー、金貨取上げる。
「ありがとうございます。それにしても、かなり羽振りいい金袋ですね。エナのお母さんはお金持ちですね」
クリスチャー、嫌らしく笑う。
何か見透かさした! そんな表情に、エナ警戒心持つ。
「エナ、金貨一枚下さい。カライ地区のゴンに連絡をつけます」
「カライ地区、スラム街のアイツか」
「はい」
クリスチャー、髪掻き上げエナ見る。
「仕方ない、ゴンを頼る」
エナ、ため息吐く。
行きたくない。
そんな表情だ。
「決まりだな」
マーガレット、椅子から腰上げる。
終わった。
そんな感じだ。
エナ、もう少しやり取りしたかった。しかしマーガレットに従う。
珈琲飲み干す。カップを置くと、椅子から立上がりマーガレットに頷いた。
「また、来てください」
二人が店を後にする。
店から消えたのを見ると、あっ! そんな表情浮かべる。
「国、グレイグ軍の事聞きそびれましたね。まあ、グレイグ陸上解放軍か? グレイグ陸上護衛軍か? はたまた私の古巣、情報工作隊か? まあ、二人はまた来るでしょう」
クリスチャー、笑う。
つなぎを取り絵画の仕事再開! だった。