出会い
2
赤い砂時計の一日、終わる。
太陽はとっくに消え、月光照らす。
エナは普段着、ローブは手に。
要は洗濯をする。
説明
赤い砂時計、週二回の店開き。
水の日、土の日。
始まりは昼、終わりは夜遅く。
そのため、こんな時間。
週二回は世辞でも多く働いてると、思えず。
しかしエナは稼ぐ。
先ほどのやり方で、金持ち相手に吹っ掛ける。
勝てる戦に、大金要求す。
エナ、今日の稼ぎの一部持ち、住家に足運ぶ。
赤い砂時計はあくまでも店、ここに住んではない。
理由は簡単、赤いから。
エナは赤に塗れて、生きること望まず。
だからと言い、赤無しでは飯食えず。
金は占料の半分、理由は後払いをするため。
後半分は、客を信じる。
勝てる戦、しかしそこは慎重に。
もし間違えた時の、保険。
つまりその分、安くなる。
しかし半分、帰らない。
中途半端な……。
エナが家に着くと、まずローブを置く。
そして違うローブを手にする。
要は洗ったモノ、洗うモノ、それの入れ替え。
それ裏口置けば、明日朝、洗濯屋回収する。
洗濯屋のローブ、チェックする。
悪くない。
ミルクから作る、石鹸が素晴らしく香る。
「いい仕事だ」
頬、緩む。
次に台所の奥行く。
そこに鍵の掛かった部屋あり、鍵開けエナ入る。
明かりを点けて、部屋見渡す。
そこには、父親の研究資料、多数あり。
資料は本になり、所狭しと置いてある。
父親がこれをどう運んだかは、よく知らない。
おそらく十何年か使い、書殴りしたかも知れぬ。
しかしエナには、興味ない。
興味ないエナがここに来た理由。
本棚の向こうに、隠れるように小さな箱あり。
箱は二つ。
まず一つ開ける。
この箱鍵が掛かり、鍵を開けて中身見る。
そこに数十枚の金貨、銀貨、無造作にある。
魔性の輝きに、自然と笑顔。
魅了の魔法が、そこにある。
その魔法に、今日の稼ぎ投げ入れる。
蓋を閉めると、再び鍵掛ける。
そしてもう一つの箱開ける。
こちらの箱、鍵がない。
そんな箱中には、一枚のカード、一枚の板あり。
これは高度文明の遺産。
昔の人類は、とてつもない文明が発達。
その文明の凄い業、今の時代も使われる。
箱中のカード、板、これは凄まじきモノ。
それは父親が残し、唯一の遺産。
エナは遺産を確かめ、蓋閉める。
それ戻すと、明かり消して部屋を出る。
部屋を出る。
台所で食事の支度取り。
その時、コンコン、ドアのノック音。
エナはその音聞いて、ドアに行く。
「はーい、こんな夜にどちら様?」
ドア鍵外し、見る。
外を見る。
誰もいない。
浮かぶは黒闇ばかり。
月光に照らされし、明るい闇だ。
頭を捻りドア閉めよとする。
その瞬間、目の前に冷たく輝く凶器がある。
それはエナの喉元にあり、動くことまるで無理。
「ここは、レイガスの住家だな」
ハスキーな声、ドア横から。
エナ、顔動かさず、目線を送る。
目線の先に、少々大柄な女。
気配なかった。いや、気配気づかず、これが正当。
凶器、少々鉄臭い。
少し錆び入る異様な異臭。
血だ。こいつ、斬ったのか?
エナが顔面蒼白す。
「レイガスは俺の父親だ。しかし居ない」
エナの言葉に、凶器が喉元へばり付く。
「本当だ、何年も前に姿を消した。父親の研究資料はそのままだたから、消えた頃はいつもの研究と言うなの旅だと思った。しかし帰らないで、今がある。これは本当だ」
喉渇き、体から汗噴き出る。
女の殺気、消えることなし。
消せぬまま、何か考える。
「死にたいか?」
女、言葉発す。
これが考える何か、その答えかはわからず。
「死にたくない、死んでこの身が咲くものか! 這ってでも生きたい」
掠れた声で、エナ発す。
女、それを見ると、凶器を外す。
鞘に仕舞うと、中に入る。
エナ腰抜け、へたり込む。
肩から激しく息、体中から吹き出る汗、今気づく。
「入るぞ」
冷たく放つ女の言葉、反射的にエナが顔を上げる。
初めて、二人が向き合う。
エナ、驚く。
女の容姿に、意外感じる。
整った顔立ち。
血臭があまりにも似合わなく、どこか似合う。
矛盾している思考回路、それくらい女に衝撃す。
女、こちらも驚く。
幼い顔つきながら、落ち着いた姿。
危機的状況でも、はっきり発言する度胸。
そして左右の色違いの赤い瞳。
その衝撃、どこか納得。
親が親なら、子は子だな。
そんな思い胸に秘める。
そして胸が熱くなる。
何故、熱くなるか?
それはダメ!
そう心に言い聞かせ、無表情装う。
「小さな家だ」
エナ、汗滲ませるながら発す。
寒いはず、しかし喉元押し付けた、凶器の恐怖冷めぬまま。それが汗となり滲む。
「レイガスに関係する手がかり捜す。思い当たる所、連れてけ」
女が言葉発する。
エナ、思い当たる、考える。
あこ、しかない。
だが連れて行きたくない。
あこには、二つの箱がある。
「少し待て、休んでいけよ。できれば早く去ってほしいが……」
エナ、ズケズケ言葉発す。
視線は下向き、肩で息をきりながら。
少し震えていた。
怯えているのか?
女は少し意外だ。
すぐに案内され、逃出すと思った。
流石は……。
エナ、再び汗滲む。
下向き理由、怯え震える、しかし! これは違う。
演技である。
何故?
エナは左の瞳、光線を発していた。
その線、女の脚を捕らえ心を呼んでいる。
明かりはあるが、やはり夜。
光はあるが、太陽に勝てない。
薄暗い部屋。
それを利用し、発している。
『少し休みたい』
これを見た。
女、少し考える。
エナ、光線消す。
うつむき加減になったから。
顔を上げると、一言。
「酒はあるか? それと肴だ」
受け入れる。
エナ、わかった、そう言葉発する。
望まない、酒の会。
始まる。