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赤の空間 

 1


 グレン市は多数の人間存在す。

 巨大港街、大地の血の歳出国、これが理由で全て片付く。

 要は人間多い。

 人間が多ければ、建物多数造られ繁華する。

 しかし平等ではない。 

 グレン市は一握り絶対勝組、勝組、負組、未来永劫負組と、知らず知らずに線がある。


 グレン市ライム地区。

 ここは昔ながらの建物多数。

 よく言えばレトロ、悪態吐けば古臭い。

 勝組とは言えず、しかし負組でもない。

 もちろん絶対勝組でもなく、だからといって未来永劫負組でもない。

 

 ライム地区の裏通り、小さな店が幾つもの並び。

 それぞれ一攫千金の夢を見る。

 店の一つ、不思議なまでに赤い店あり。 

 「赤い砂時計」とあり、白看板に赤文字で書き殴られ。  

 世辞にも綺麗な字でなく、どこか個性的。

 

 店内は薄暗い赤で統一。

 そこに小さな机と椅子二つ。

 一つの椅子には客がいて、もう一つの椅子には朱色ローブを身に纏う。

 ローブは男で、見目男子。

 しかし歳は少し食い、少年ではなく青年のはず。

 若く見える! これはある意味、魅力。

 

 名はエナと言い、昔からここにいる。

 何年か前は、父親と暮らす。

 母親は知らず。


 その父親もいつしか、エナの前から突如消え。

 消息不明。

 しかしエナは「死んだ」、そうする。

 それが一番苦しまない。

 何故だか不思議に、思う。

 どちらと言えば、いい父だった……はず。

 でも消息不明で感傷的にならなかった。それはエナが冷たいか、父は出来損ないか。

 今わかること。

 

 そんなこと……どうでもいい。


 部屋の赤が、妖しく輝く。

 赤一色のその空間は、少し不気味ではある。

 しかし少しですむのは、エナの占いのお陰であった。

 的中多しと。


 一人の客が占う。

 太い中年マダム、椅子が悲鳴を上げていて。

 

 ギーッ、ギーッ!


 泣きながら、頑張っいる。

 羽振りはかなり素晴らしく、店外には老いた召使いと、腕っぷしの強そうな男。

 永遠勝組、間違いない。


「見えます! 奥様のお気持ち、僕、痛いくらい見えます」


 エナ、大袈裟に大きな声を上げる。

 声甲高く両手を天井に差し向ける。

 部屋隅々に沢山、蝋燭あり。

 蝋燭の明かりは、部屋の赤を浮上させ、赤を明かりに迎入る。

 

赤様ベージュ、あの方はどうなんですか?」


 太い女、身を乗り出す。 

 安い机に簡単な絨毯、まくし上げるようにエナを見る。

 エナはここでは、赤様ベージュと呼ばれ。

 呼ばせている訳でない。

 客が勝手に、そう呼ぶ。

 理由はある。

 それは……この店と部屋、それにエナ自体。


「奥様、心配なさらずに、貴方の想う殿方は近いうちに、奥様の元へ帰ってきます。殿方はどうやら疲れております。彷徨い歩き今は自分を失っております……おそらく」


 エナ、そこまで言葉発すると、瞳を大きく見開く。

 見開いたエナの瞳は、血の如し。

 とにかく赤い。

 しかしよく見る。

 瞳赤みが左右違う。

 左は濃赤、まるで渇いた血の如し。

 右は鮮やかルビーの如し。

 この左右の瞳から、赤様ベージュ呼ばれる。

 赤様レッド)でないのは、エナが少年みたいだから。

 エナにとっては、どうでもいい事。

 しかしこの瞳、凄まじき能力あり。


 エナ見開いた左瞳、太い女に気づかれないよう、光線を発す。

 光線、額捕らえる。

 何を見る?

 それは……。


『あの方が何故、私から去ったの? 欲しいモノは全てあげた。仕事め地位もお金も全て! どうして、消えたの?』


 太い女の心見る。

 エナ、左の瞳は人間の心見る。

 そして右の瞳、違う光線発す。

 光線、頬捕らえ。


 太い女の未来、見据える。

 光線細く、熱は少ない。

 こちらの光線、太く、熱く、することで遠先未来見ることできる。

 しかしやり過ぎ、相手を燃やし火傷する。

 その匙加減、かなり難しい。

 今回、すぐに見える。


 店の名、赤砂時計はエナの未来予知を指す。

 店内が赤一色は、放つ光のカモフラージュ。

 そのため、赤に拘る。

 赤い光線を発すると、頭の中に砂が落ち。

 その砂、出る。

 エナは「赤」に愛されていた。

 不思議な不思議な、運命の持ち主。


 右の瞳が捕らえしは、三日後辺りの女の未来。

 男が帰ってくる。

 そいつ若く、細身で、どこか胡散臭さく。

 笑顔を振りまき、瞳は笑わず。

 派手に太い女に、抱きつく。

 

「奥様の愛情が、欲しくて僕は、戻ってきました」


 そんな言葉で、胸元を見る。

 性的意味とは違う男の視線、そこには肥満な財布が眠っている。

 太い女が、胸元に肥満財布、持っている。

 何故か笑える。

 その未来、エナは見る。


「奥様、三日後、想う殿方が貴方の元に戻ってきます。その時、胸元が大きく空いたドレスを纏いそのドレスに、お小遣いを忍ばせて見なさい。すると殿方は、奥様に愛の言葉を両手に収まりきらないくらい差し上げる事でしょう」


 少し大袈裟、満面の笑顔。

 太い女に、くれてやる。

 

 太い女、笑いながら、「本当に? 本当に?」これを繰り返す。

 エナは派手に「僕を信じて!」と天井見て、言葉を発する。


 ちゃんちゃらおかしい……。


 エナの心は、白けてる。

 理由は言わずとわかる。

 

 これは金のため。


 エナは自分に言い聞かせ、今日も一人を満足させる。

 時間は夕方辺り。

 この瞬間も、エナは大袈裟であった。

 

 


 

 



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