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ザ・ユニコールワールド  作者: クレシアン
兄弟の旋律
32/41

クエスト202:賽は投げられた

もうエアコンが無いほど涼しくなりましたよね。

しかし雨が降ったりしたらたまらずエアコンを使います。


 僕の人生にここまで誰かを憎んできたことはなかった。

 紫苑が襲われた時だって突発的な衝動で助けたし、それからの戦いだって楽な生活をするための手段でしかなかった

 

 でも僕は今、生まれて初めて人を殺したいと思った。

 

「皆さがってて。瓦礫を紙にするから」


 僕は擦りむいた左手を挙げた。

 

「待て、冷静になるんだ。今此処で奴の所へ辿り着いたとして勝算はあるのか?」

「そうだよ!! それに瓦礫を動かしたらもっとこの建物が崩れるかもしれないよ!?」


 僕を止めようとする二人に僕は大丈夫と言ってみせる。

 

「方法はあります。兄のスキルは朱里さん曰く意識を操るもの。

スピードを関連とした能力ではなく姿を眩ますものではないでしょうか?」

「!! なるほど......それも目を合わせることが条件だとすれば存在そのものを操るスキルかもしれない、か」


 僕は続ける。

 

「まず瓦礫を消したら二人とも離れて暗殺の機会を伺ってください。

蒼也さんはフルスピードによる瞬殺、紫苑は遠距離からの狙撃。いいですか?」

「待って!! その間のお兄ちゃんはどうするの!?」

「僕は全防御(イレブンバック)を使用し兄の気を引きます。

いくら相手を認識できなくとも、どんな攻撃が来ようとも僕はそれで守りを固め続ける」


 僕はペンを抜き腕に『如何なる場合でも全身を防御すること』と書く。

 仮に兄さんという存在が姿を眩ましてもこれなら防御する『理由』ができる。

 

(なんて奴だ、芥川翡翠。一見冷静さを欠いた様にも思えるがむしろ逆。

兄に勝つためのビジョンを描いている)

 

 蒼也は翡翠を賞賛したかった。

 仲間の死という悲しみに暮れず勝ちを描き続けるこの少年こそやはり我々のリーダーなのだ。

 

「朱里さんが最期まで僕達に与えてくれた情報です。絶対に無駄にはしません」


 僕の力強い言葉に納得したのか、二人はただ頷きその場を二手に分かれて離れた。

 さあ準備はできた。瓦礫を破壊しよう。


 

「はあああああ!! 百面紙(アンタッチャブル)!!」



 僕は拳を作り瓦礫に叩き込んだ。

 

 今まで一番範囲の広い紙化だった。

 正面を暗く堅く塞ぐ壁のような瓦礫は一瞬にして紙となり消え去った。

 

 

☆     ☆     ☆



「正直驚いたよ。翡翠、お前が仲間の死を前にしても俺に楯突くとはな」

 

 兄、業は馬鹿にするように翡翠にそう言った。

 確かに昔の翡翠なら尻尾を巻いて逃げ出していただろう。

 

 自分には関係ない。

 自分には関係のないことだ。

 

 一体何度そう呟いて目を逸らした事があっただろうか。

 

 無論業はそんな弟の『怠惰』を知っている。

 馬鹿にすらしていただろう。

 

「僕も驚いたよ、兄さんならとっくにこの空港から逃げ出していたと思ったよ」


 翡翠は言い返した。

 しかし自身は絶対に兄はそうしないという確信を持ちながらの妄言だ。

 

「一応聞いてもいいか? どうして父さんの手伝いなんかするんだ?」


 そして一番気になっていた質問を翡翠はした。

 今まで兄は父の研究に加担したことは一度も無かった。

 

 何故テロリスト事件など引き起こしたのか。

 何故僕達の行く手を阻むのか。

 

「はっ、今の今まで気づかないのか? 本当に愚かな弟だなあ!!」


 業は翡翠に指を突きつけた。

 そして怒りの篭った目で、過去に一度だけ見せたあの表情で怒鳴りつける。

 

「てめえに負けたからだよ!! 俺はなあ!!」

「ッ!!」  

 

 その表情は過去に一度だけ兄に勝利したあの粗野な殴り合い。

 あの時に見せた表情。

 翡翠は忘れることは無かったが、業もまた忘れることはなかったのだ。

 

「親父に『選ばれた』お前が研究に加担するのはわかる。わかっていた!!

お前より『優秀』であることでその気持ちを保っていたというのに!!」


 この瞬間。ようやく翡翠は理解したのだ。

 

「クソみてえな怠惰な弟に敗北した俺の気持ちがお前にわかるのか!?

親父はお前しか見てねえ!! もっと俺を『見ろ』、見やがれ!!」



 業は一瞬で翡翠の目の前へと移動し銃を乱発した。

 

「ちっ、やはり紙にしたか。さすがの愚弟もそこまでは考えてはいた様だな」

「朱里さんのおかげだよ。これで『対等』に勝負できるな、兄さん」


 業は紙を破り捨て、再び距離を一瞬で取った。

 

「朱里......あの女か、最期まで俺に逆らった愚かな女か」

「彼女を悪く言うな!! 真剣にお前が起こしたテロリスト事件を追い、お前を見つけたんだ」

「そして犬死にしたけどなあ!? 弱かったぜ、あの女は!!」


(やっぱり意識を操って『透明化』か『瞬間移動』を引き起こしているのか?)


「最後に一つ。なんでお前は今まで僕を殺さなかったんだ? 幾らでも機会はあっただろうに!?」


 最後の謎。

 これはついさっき知ったこと。

 これほどのスキルを持っているならファミレスでもそうでなくても幾らでも翡翠を殺せたはずなのだ。

 何故、今まで翡翠は無事だったのか。

 

「......正々堂々お前に勝利するためだ。お前みたいに卑怯な不意打ちではない、完全な勝利をするためさ」

「兄さん......」


 考えてみれば必然なことだ。

 業が復讐に燃える理由は不意打ちによる無様な敗北。

 

 つまり逆に誰にも邪魔をされない此処で勝負を付けたかったのだ。

 

「お前の仲間、紫苑達はどうした?」

「逃がしたよ。お前を倒せるスキルを持っているのは僕だけだったからね」

「そうか、なら『真剣』勝負と行くか!!!!」


 翡翠は業に嘘を吐いた。

 しかしそれは恥ずべき行為ではないと確信していた。

 

 そこまでして兄を止めなければならない、倒さなければならない。

 もはや和解は不可能。

 故に『万全』を以って兄をぶちのめす。

 


 賽は投げられた。


兄、業のスキルは次回判明!!

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