クエスト115:一人目
これにてこの章の最終話となります。
そしてなんと!
次章は最終章です!
激化する兄弟対決をお楽しみに!
「ふぅ。結局全員に死なれちまったな」
蒼也さんは頭を掻きながら溜息を吐いた。
そう、あの助手の男のようにスキルを差し出す者は居なく、今回の戦利品はゼロに等しかった。
「もう、何を落ち込んでいるのよ? 戦利品なら充分にあるわよ?」
そう言ったのは朱里さん。
思い返せば朱里さんを防衛しながら敵の情報を引き出すのが今回の目的だった。
結果分断されてしまったが作戦を放棄しない彼女はさすがといえる。
「とはいえ私が得た情報は一つ。芥川業が芥川善司と繋がっていること。
善司は海外でスキル保有者を量産しているそうよ」
「父さんと兄さんが......!!」
「それに海外ときたら厄介なものだ」
確かにそうだ。海外での探索となれば手間も難易度も倍増する。
しかも朱里さん曰くどこの国かもわからないとのこと。
これは参ったぞ。
「芥川博士はそのスキル保有者の『パイプ』として業を利用しているそうよ
そしてまさに今日業は善司の元へと向かうらしいわ」
「ええ!? 今日って全然間に合わないじゃん!!」
喚きだす紫苑に対し朱里さんは心配なしと言わんばかりに親指を立てた。
一体何を――
「あっ、来たわ!! 皆早く乗って!!」
「えぇー!?」
こっ、これは!!
リ ム ジ ン
日本にリムジンなんてあんのか!?
いやそういう問題じゃなくて、朱里さんって運転手持つくらいの記者なの!?
考えがまとまらないまま朱里さんに車内に押し込まれる。
「中部国際空港へ急いで!! フルスピードよ!!」
うぁかっこいい......
こんな台詞いつか言ってみたい。
ていうか運転手も凄いな。
ペーパードライバーの僕とは大違いだな。
☆ ☆ ☆
車を出してから数分。
車内はまるでお通夜のように静まり返っていた。
最初に話し出したのは僕。
しかしその内容は誰にもわかりきった、この車内の沈黙の理由でもあった。
「最悪の事態、いえこれは決定事項ではありますね。
僕達は恐らく兄さんと衝突することになるでしょう」
3人は頷いた。
故にこの緊張感なのだろう。僕は続ける。
「兄さんの能力は僕達にもわかりません。
しかし判明していることは蒼也さんより素早く、朱里さんの探知に掛からない」
「間違いないな。俺のスキルはより成長したが未だにあの男に勝てるビジョンが見えない」
「そうね。二人のお兄さんに関しては呼吸をするかの如くスキルを使用していた。
だからスキルを使用した瞬間。私が心を『聞く』タイミングはそこしかないわ」
朱里さんが言うならば任せたほうがいいだろう。
兄さんは僕や紫苑と同じ、DNAにより生み出されたスキル保有者。
さらに僕は兄に勝てたことがまるでない。
いや――
「一度だけ、一度だけ僕が勝利することができたのは不意打ちによるものです。
もしかしたら。スキルを発動させる前に勝負を決めることができたら一番でしょう」
「だよね~お兄ちゃんにいきなり殴られて一方的に叩かれたのが業兄さんの敗因だったから」
そして僕は蒼也さんを見た。
蒼也さんは言われずともと言った表情であったがあえて言わせてもらおう。
「一番最初に蒼也さんが僕と朱里さんを奇襲した時がありましたよね?
あの時のように一気に畳み掛けてしまうのが一番かもしれません」
「俺は不発に終わったがな」
蒼也さんの厳しい視線に僕はついつい視線を変える。
結構根に持つタイプなのだろうか。
こうしている間にもセントレアはいよいよ見えてきた。
僕が最後に此処へ来たのは3年前。
英語の勉強をするという建前と共にスキル保有者の退治をさせられた。
ちなみに場所はイギリスだったが母さんと会う暇は無かった。
「お兄ちゃん? 着いたよ~?」
「うん? ああ悪かったね、それじゃあ向かうとするか」
心配する事は無い。
僕には仲間が居る。成長もしている。
久しぶりの空港へと足を踏み入れた。
さあ兄さんはどこへいるのだろうか――
ドカン。
いや他にも例えようがあるであろう。
でも考える暇も例える暇もなにも無い。
ただ一瞬。
その一瞬で思考も僕達の作戦も吹き飛んだ。
まさか空港に爆弾を仕掛けるなんて誰が想像できるだろうか。
☆ ☆ ☆
空港での爆破事件。
いち早く気づいたのは朱里であった。
理由は単に爆弾の起動音を聞けたからである。
しかし彼女ができた行動は3人を全力で突き飛ばすということだけ。
「ちょうど瓦礫が私達を避けるように落ちたのは幸いね。分断されてしまったけどあちらの3人も無事みたい」
朱里はコンコンと瓦礫を叩きながらスマートフォンを取り出した。
翡翠に連絡を入れなければ――
「初めまして、朱里さん。いや、貴女とは一度ファミレスで会いましたか」
「ッ!!」
朱里は目を疑った。
今回の標的である芥川業。彼がまさか目の前にいるなんて。
「そして、さようなら」
「――え」
朱里は気がつく事もできなかった。
業は包丁で朱里の腹部を突き刺していた。
「まずは一人目」
次回はキャラクター紹介回ですよ!
焦らしますよ~




