クエスト107:頭脳
久しぶりの投稿となってしまい申し訳ございません。
明日からはいつも通り投稿させて頂きます。
そしてノクターンノベルズにアナザーエピソードを投稿させて頂きました。
18歳以上の方はよろしければ是非読んでください。
http://novel18.syosetu.com/n5170ee/
「よし、あと一人だ......!!」
「すごいすごい!! 分身5人を含めているのにこんな速度で救助ができるなんて!」
翡翠の妹、紫苑に褒められるが無論フルスピードではない。
壁に激突したり転びかけた分身がいるのは秘密だ。
「よし。俺は翡翠の様子を見てくる。お前は全員の安否を確認してくれ」
「サー・イェッサー!!」
俺が店外から店内に移動しようと瞬間、『何者か』に手を引っ張られた。
「ッ!?」
「きゃあああ!?」
俺だけではない。紫苑まで黒い靄のような物に引きずり込まれている!!
俺は体内の熱を一気に上昇させた。
「うわっち!! あついって!!」
「ぐっ!!」
急に手を放された俺はレジに激突した。
よく見れば周囲が暗い。これは――
「分断か」
「あら? よくわかったねー」
目の前に少女が立っている。この口ぶりからすればこの娘がこの状況を作り出したと見て間違いない。
俺は刀を抜き少女に向ける。
「どうやらお前が芥川博士の差し金の様だな」
「正ッ解~♪ あらやだ~賢くて色男。随分殺しがいがあるわぁ~」
少女は同じく刀を抜く。
どうやら戦闘スタイルが同じか。それとも。
「アタシは人差し指のブラン。5兄弟の長女。楽しませてもらうわよ?」
「それは叶わん望みだ。悪いがさっさと終わらせてもらおう」
☆ ☆ ☆
「きゃあああ!?」
突如黒い靄に周囲が包まれた。
これは何? 怖い、助けてお兄ちゃん――
「いいえ大丈夫ですよ。貴女はここで死ぬべき人間ではない」
「!?」
目の前にはお兄ちゃんと同い年くらいの女の人がいる。
私はたまらず聞いてしまう。
「誰なの......?」
女の人はスカートの裾を掴みお辞儀をした。
「失礼致しました。私は芥川博士の秘書にして5兄弟の次女。
中指のルナとお呼びくださいませ」
「お父さんの!!」
まさかこのタイミングで遭遇してしまうとは。
つまり蒼也さんだけじゃない。お兄ちゃん達もお父さんの右腕と遭遇している筈。
「......悪いけどどいてもらえないかな?
お兄ちゃん達と合流しなければならないから」
「私が貴女の前に立つ地点でお察しください。恋する乙女を傷つけるのは気が引けます」
私はエアガンを取り出した。
そしてルナさんを睨みつける。
「なら最初っから敵だって言ってくれればいいのに」
「あまりはしたない真似をなさらぬよう。貴女は芥川博士のお嬢様なのですから」
☆ ☆ ☆
「焼き尽くせ! 魔道書庫!!」
「防げ、水溶体」
「これは......!!」
この男、体が溶けたぞ!?
「わー、やっぱり助手サンのスキルやんかー。あっち~」
一方小さい男は飛んできたちょっとした火の粉で騒いでる。
やはり危険なのは体を変質させる男の方か? いや、思い込みは良くない、警戒を怠らないようにしなければ。
「尖れ、鋼殻体!」
「!!」
今度は硬質化か! しかも伸びてきやがった!!
「ッ!! 吹き飛ばせ!」
「おわっ!? アニキこっちに鋼飛ばさないでくれよ」
「す、すまん」
なんだろう。確かに強力なスキルの持ち主だが違和感がある。
敵に迫力がないのだ。
今まで僕が相手をしたスキル使い達には勝利を重ねてきた。しかしそれは仲間のおかげでもあるし、自身の成長のおかげでもあるだろう。
つまりはギリギリの戦いだった。その相手達にあった『威圧感』がこいつらにはない。
なぜだ? まじめに戦うつもりがない?
確かに父さんの研究に僕は必要だから殺されるとは思わない。
しかしなんだ? この違和感は?
「尖れ」
「なっ!?」
僕は足に猛烈な痛みを覚える。
馬鹿な、男からは眼を離さなかったはず――
それなのに足に刃が突き刺さっている。
「ッ!! 水か!」
僕は刃を紙にしてその場を離れる。
そう、床にはいつの間にかほんの微量の水が流れ込んでいた。
「御名答。私のスキルは体を液体や固体に変化させる。
先ほどの鋼による攻撃は君の視線を上にそらすフェイク、厨房の床には私の体自身が少しずつ進行している」
「なるほど、やるねぇお前。迫力がないとか思っていた自分をぶん殴ってやりたいぜ」
男は頭を指差し続けた。
「作戦を行うときは殺気を消し敵を油断させる。
そして相手の綻びを狙うのだ」
「お前その言葉......」
間違いない。父さんから昔聞かされた言葉だ。
「私達5兄弟は芥川博士の5つの面をトレースした存在だ。
私のモチーフは頭脳。つまりは君の父親の戦術を全面的に引き継いでいる」
「なるほどなあ。つまりお前、『こっち派』か。
違和感の正体が掴めたぜこんにゃろう」
確実に敵を追い詰め無力化させる。
俺の戦い方と似ているこいつと俺は表裏一体。
まるで鏡を見ているかのような気分だ、威圧感が無いにも納得がいく。
「さて、その足ならちょこまかと逃げ回ることもできぬだろう。
まずは足。次はどこを狙うか」
こいつは、強い。
まるで自分を超える試練のような戦いだ。
芥川翡翠のスキル解説コーナー
名前:臨界の剣
ランク:☆☆☆★★
能力:身体を液体又は固体に変化させる
①上記の2種に変化させた場合質量も変化させることができる。
②液体化する場合、生命を維持する身体の器官は硬質化する。
③固体化する場合、その硬度は自由に操ることができる。
翡翠コメント:もっとランクが高い能力なのでは? と思う方もいるはずだけども実はコレ、とても速度が遅いスキルなんだ。それに硬度を変えようとも炭素原子の結合力が強いだけで、そこまで優秀な防御とは言えない。ハンマーでダイヤモンドが簡単に砕けるのと同じイメージでいいだろう。
しかし問題は距離を置けば対策がしやすいこのスキルを厨房という密室で発動させてしまった僕の落ち度、そして扱いにくいこの能力を手足のように扱う彼の頭脳が危険度を倍以上は増幅させている事実。
これは厳しい戦いになりそうだ。




