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ザ・ユニコールワールド  作者: クレシアン
チュートリアル
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チュートリアル

僕はこの作品をゲーム風にたとえて進めていきます。(それしかできないとは言えない)


 人は生まれながらにして平等ではない。


「げっ、またSRかよー。悪くはないがトップじゃないんだよなー」


 平日の10時にショッピングモールのゲームセンターで遊び呆ける少年。彼の名は芥川翡翠あくたがわひすい。浪人生であるが全く勉強せずにふらふらと毎日を過ごしていた。

 無謀な挑戦。彼は自分の成績に見合わない学校を目指した者の末路そのものだった。


 翡翠は1時間ほど遊んだが、結局苦い顔をしながらゲームセンターを離れた。


 そろそろ昼時になる。平日とはいえ多少は混むだろう。さっさと早めの飯にして帰ろう。翡翠がそう思ったとき、耳を切り裂くような音が鳴り響く。


  ドン。


 いや、実際はもっと違った音だったかもしれないが確かに翡翠にはそう聞こえた。


「全員手を上げろ。この建物は我々が支配した。繰り返す、この建物は我々が支配した」

「なっ......」


 翡翠は音の元を見た。これはマジだ、マジでありきたりな台詞を吐きながらのマジな強盗だと察知した。いやここまできたらテロなのではないかとも思った。


 後はひたすら流されるままだった。スマホを回収されて一箇所にまとめられてレジから金を回収されて。抵抗する人も居なくこのまま開放されるであろうと思っていた。が、


「随分落ち着いていますね、お兄さん。とても人質にされている人間には見えませんよ?」

「うん?いやまあこれからの人生考えてもいいことないしこんなイベント参加できるなんてなかなかないからね」


 手を後ろに結ばれて、完全待ち状態の中、中学生くらいの少女が話しかけてきた。

 ふてぶてしく答えた翡翠だが実際はそのとおりなのだ。今の彼からしたら銃で撃たれて死ぬことすらどうでもよい。そんな雰囲気に彼女は興味を持ったのだろうか。


「お兄さんはどうしてここにいるの? 無職?」

「ズケズケ言うなあ君。ただの浪人生だよ」


 翡翠は苦笑しながら答えた。そして彼女を興味なさげに見て、


「そういう君こそ学校はどうしたんだい? まさかその派手なパンツの替えを買いに来たとか?」


 指摘と皮肉を言い返した。


「っ! 最低ですね......それに私はもう社会人ですよ。貴方とは違うんです」

「なっ!まじかよ!!」


 突然声を大きくしたせいかテロリストの一人に睨まれてあわてて口を塞ぐ翡翠。

 彼女は少し顔を赤らめて脚を閉じた。


「私の名前は築山朱里つきやまあかり。こう見えても能力者よ」

「あー、最近ニュースで噂になってる奴ですか? 凄いですね」


 年上とわかり次第態度を改める翡翠。


「貴方は解放されると思って期待してるでしょうけど残念だけどそんなことはないわ、あのテロリスト達は警察と取引している」

「取引? どうしてそんなことがわかるんですか?」


 どうでもよくてもテロリスト一人一人はしっかりと観察しているつもりだった翡翠。素直に疑問を投げかけた。


「私のスキルは地獄耳。最初は音楽教室で絶対音感になった程度だけども今は違う。集中すればこの街でなにが起きているか全部把握できるくらいにはなったわ」

「へーやっぱり僕ら凡人とは比べ物にならないなぁ」

「そんなことはどうでもいいのよ、パニックに陥っていないお兄さんに頼みがあるわ」


 朱里は髪を耳に掻き揚げて真剣な眼差しで翡翠を見つめる。


「なんですか?」

「テロリストの目的は仲間の解放よ。昔銀行強盗事件の犯人が捕まったでしょう?」

「あーあー、ありましたね。なるほどこいつらはその仲間だったのか」

「そういうことよ。しかし交渉は決裂しそうね。上の階のテロリストのリーダーがもめているのが聞こえたわ」

「あ、そうなのか......」


 翡翠は少し落ち込む。


「結局僕らは日本という国のありんこでしかないんですかねー。ちょっと苛立ってきました」

「このままだとより酷い状況になるわ。だから貴方に協力を求めるわ」

「......内容は?」


 嫌な予感しかしないが翡翠は聞いてみた。


「この建物はあまり大きくないせいか各階の警備が厚いわ。1階につき3人の計9人。それともう1人は階段で警察と通信している」


 朱里は長い髪をいじりながら続ける。


「あの銃は中身がないわ。音しか出ないピストル。おそらく以前の銀行強盗と同じものね、私のスキルで聞きわけられたわ」

「つまり?」

「つまり武力で抑えることができるわけよ。相手は銃を持っているイメージを私たちに植え付けているから奇襲が効くわ」

「なるほどねー」


 翡翠は疑問が浮かぶ。


「いやでも僕ら手が縛られてますよ。蹴りか突進かできなかったら厳しくないですか? 仲間とか呼ばれそうで」

「そこは.......何とかしてね」

「おいマジですか」

「なんて嘘よ」


 なんと朱里は縛られていたロープを外していた。


「こういうのはつけられる時にコツがいるの」

「どこで知るんですかそういうの」


なんて話をしながらも見張りの目を盗みながら朱里は翡翠のロープを解いた。


「作戦を確認するわ。まずは目の前の彼を全力で倒しなさい。そうしたらもう一人の見張りが来るはず、それは身を潜めた私が対処する。最後の見張りはここの人質全員で抑えるように誘導しましょう」

「めちゃくちゃ不安だけどやるしかないか......」


 翡翠はため息を吐きながらうなずいた。


「このフロアを開放したら一直線に階段にGOよ。リーダーを倒しにいくわ。OK?」

「オーケーオーケー。俺もそれくらいしか思いつかないしね」


 これがゲームならチュートリアルの長ったらしい説明だろうか。

 いずれにせよここからが実践だ......!!


 そんなことを考えながら翡翠は走り出した。

to be continued......

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