表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ・ユニコールワールド  作者: クレシアン
テロリスト事件
17/41

クエスト103:魔法使い②

 またこんな時間に投稿になってしまいました......

雷斬(サンダーブレード)

「防げ!!」


 押し寄せる電流の剣を触れた瞬間に紙片へと変化させる。

 既に水・火・風の三種類の攻撃が同じように繰り返されたが翡翠は全て防いだ。

 

「ふむ、本当にすばらしいスキルだ。いや、反応速度ももはや人間の其れではない」

「生憎、あんたよりずっと素早い『刃のような男』と手合わせをしたんでな」

「ならば、君達を戦闘不能にさせてから確認するとしよう」


(しかしこの子の防御能力は本物だ。周囲の建物を破壊して見晴らしを良くしてしまったのは間違いだったか)

(攻守ともに隙の無い魔法使いのようなスキル使い。容易に近づけないともなるとやはり厳しいな)


 戦線は停滞、互いに策を考えながらの攻防が続く。

 

「紫苑」

「うん!」


 紫苑は脚に付けたベルトからそれを投げつける。

 

(これは、スタングレネードか!!)


「火力を集中させろ!!」

「わかってるって!!」


 銃撃と男のスキルを紙化した物を解除し一斉に放射する。

 翡翠が探っていたのは男の防御手段、主に水に頼ることが多かったそのベールには必ず限度があると確信して。

 

「甘いな。地殻変動(グランドウエーブ)!!」

「くっ!!」

「お兄ちゃん離れて!! こいつ、地形を無理やり!!」


 男が引き起こした地震、そして地割れにより攻撃は不発に終わる。

 それどころか男の姿を見失ってしまった。

 

(どうする......朱里さんに頼んで位置を割り出すか?)


「お兄ちゃん!!」

「っ、上か!!」


 翡翠が上を見上げるのは無理のないことだった。

 落雷。本来人類が恐るべきそれが人為的に行われていた。

 

「......いやそれだけじゃない!! 下もだ!!」

「熱っ!! これは噴火まで行われようとしてるの!?」


 前門の虎、後門の狼。

 頭上の落雷、足元の噴火。

 ならば翡翠がすべきことは一つだけだった。

 

「紫苑、僕に近寄れ!!」

「......ッ」


 紫苑には考える余地などなかった、ただ自らを過去に救った兄を信じる。

 それだけだった。

 

 スキルに目覚めてからの10年。

 父に仕事を任されてからの約10年。

 

 翡翠は常に自身のために戦ってきた。

 争いは好きでなくとも戦いの後に訪れる安寧のために。

 

 いや、ここで敗れてやるものかただそう思っていた。

 

「僕は負けるのが大嫌いだからな!!」


 片手は守るべき妹へ、もう片手は全てを乗り越えてきた自身へ。


「輝け、切り札(ダイヤモンド・エース)!!」



☆     ☆     ☆



 此処は虚無、作られし世界。

 美しき植物はなく、酸素は焼きつかされし紙の世界。

 そこへ現れし三人の蛮勇。

 一人は美しき黄金の髪と瞳を持つ輝きの少女。

 一人は虚無を嘲笑いし操りし怠惰の化身。

 もう一人は、

 

 

 断罪されし名も無き男。

 

 此処は虚無。潔癖こそ甚だしき切り札の世界。

 

 

「考えたこともなかった自分を呪おう。何故『触れなければ』ならないと」

「ここが、お兄ちゃんの世界。今まで色々なモノを封じ込めてきた世界......?」

「今は僕達以外なにもないよ」


 そう、それこそが狙いだった。

 

「素晴らしい、トレッビアーン!! 君は成長した。攻撃を防ぐ発想を変え俺達をこの世界に封じ込めた」

「まっ、さすがにあんたなら理解できたかな」

「これは発見だ。すぐにでもボスに報告しよう」


 僕はその言葉に対し首を振った。

 

「いいやお前はこの世界に囚われその命を終える」

「ちっ」


 僕がそう言った瞬間、男は舌打ちをし物凄い形相で僕を睨み、そして罵倒した。

 

 

「くどくどうるせえガキだな!! こんな紙切れのちっぽけな世界に移動させた、それだけじゃねえか!!」


 男は続ける。

 

「世界はただボスの利益であるかそれでないかの二つだけだ!! 

息子というだけでちやほやされる、クソガキなんか成長の見込みがあるからこそ選ばれただけの存在なのに」



「この俺のどこがクソガキに劣っているんだ!? 俺の魔道書庫(グリモワール)は最強だ!!

なあ!?なあ!!なあなあなあなあなあ!!!!!??」


 男は光り輝く『何か』を生成した。

 

「ボスには悪いがぶち殺してやるよぉぉぉ!!!」


「いいや、お前が今の僕に勝てる見込みなんてないのさ」


 僕は一振り、手で空を切った。

 するとたちまち光は消えた、否。切断された。

 

「ばかなああああああああああ!!!!????

なぜだ、なぜだなぜだなぜだああああ!!!!」


「この世界は僕が全てを支配する。言っただろ? お前はこの世界に囚われていると」

「おまけに冷静さも失っている、最初の印象とは大違いね(笑)」

「うん? 紫苑、お前その能力は」



 紫苑は男を包囲した。

 分身+禁断の玩具。今、ただの棒切れが彼の体を貫こうとしている。

 

「な、なんだそれは!?」

「なんだろ?? ねーねーお兄ちゃん、何に『成ると』思う?」

「知るかよお前の能力だし。......成長してるし」


 翡翠はジト目で睨む5人の妹の視線にムズかゆさを覚えた。

 

「まっ、名付けるなら。絶対の槍(グングニル)とかでいんじゃないか」

「うん! じゃそれでいいか!!」


「やめろ、やめろおおおおおおおお!!!!」


「えい☆」


 男の周囲の水のベールを翡翠が全て破り捨てた。

 ここは紙の世界。紙がふやけてしまうような事は遠慮してもらおう。と言わんばかりに。

 

「ぎぃあああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 妹が放つ棒切れは確かに槍の形となって男を貫いた。

 

 

あんな男(とうさん)に心酔している地点でお前の負けだ。

でも感謝はしてるよ僕がお前の言う『進化したスキル』を見てまた進化したのさ」

「被検体は多いに越した事はないってことだね!」

「まっ、紫苑も実線を学べたし。今回の戦いはいい経験になったな」



 そう、彼らは進化し続ける。

 自らの父を罰す為に。

 

 


芥川翡翠のスキル解説コーナー


名前:魔道書庫(グリモワール)

ランク:☆☆☆☆☆以上

能力:火、水、風、雷、土を操る

①操る5種は全て本人によるイメージにより威力や範囲を変化させる。

②故にこの能力に進化はなく、本人の想像力でランクは大きく左右されるだろう。

翡翠コメント:いやぁ強かった。さすがは父さんの助手と言ったところだろうか。

でも一見強力なこの能力は想像力、精神力、集中力に大きく影響を与え、『自分は優れている存在』だと思い込ませてしまう大きな弱点がある。まさに魔族に魂を売り契約する魔法のように。

スキルとは本来人間の延長上にある才能の力。この能力を手にした彼の運命は僕達が与えずとも破滅にしかならなかった。僕はそう思う。そしてそれは僕達にも言えるのだろうね......

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ