クエスト010:兄
今回の話が一章の最終話となります!
ここまで読んで頂いて本当に嬉しい限りです。
「さて皆さんお疲れ様です。今回は皆が活躍しましたね」
『いつもの』ファミレスで労をねぎらう翡翠。しかし翡翠以外の3人の表情は怒りとも不満とも取れる。
「協力者がいるならいると伝えてくれ。いきなり不思議な体験をさせられたぞ」
「あんなやばい奴が相手なんて知らなかったよ!」
「いきなり生徒を探せだの謎の協力者だの私でもできることは限られているのよ?」
3人の文句を受け止め、
「まあまあ。無事だったからよかったじゃないですか」
と、穏やかな表情で言われ3人は何も言い返せなかった。
「それとお兄ちゃん、この女の子は誰!?」
「朱里さんとという方だよ。わかるだろう? 能力保有者の記者」
「ふーん」
不満そうな態度を取る紫苑を疑問に思う翡翠。
その姿に蒼也は笑みを隠せずにいた。
「互いのターゲットも逮捕されたようだな」
表情を真剣なものに変え確認する蒼也。
「はい、こちらも生徒に暴力を加えていたと自首しました」
「こちらは駆けつけた警官に引き渡した」
「その役目は私だったんだけどね!」
紫苑は得意げな顔をする。世間一般では遊園地にテロ事件を起こした学生がクラスメートの少女を脅したが、正当防衛で撃退された事になった。
蒼也をむやみに表沙汰に出さないほうがいいだろうというのは朱里の提案であった。
「一度に同じ高校の生徒と先生が逮捕されたから大騒ぎだよー。しばらく学校も閉鎖されるって」
「ええ、わたしも記事を書いているのだけど二人とも、いえ紫苑ちゃんを合わせたら3人も同じ学校に能力者が居たことに驚きね」
世間のスキル保有者に対する意見や見方も変わってくるだろう。
「さて、そろそろ次のターゲットを探さないとね」
翡翠が話を変えたその時。
「おや、翡翠じゃないか。予備校はどうしたんだ」
「ッ!! 兄さん!?」
翡翠の兄を名乗る男が席を訪れる。手にしている物からしてドリンクバーの帰りだろう。
「おや、紫苑まで。兄妹揃って、Wデートでもしているのかい? はは」
「ひっ、業お兄さん......」
「違うよ、僕達はテロリスト事件について調べているんだ」
紫苑はカタカタと震え、その可愛らしい顔は真っ青になっていた。
そんな紫苑を庇うように会話をする翡翠を見て、蒼也朱里は共に警戒した。
「へえ、あのテロリスト事件を」
業は少し考えるような素振りを見せた。
「まっ、予備校もあるし程々にな?」
翡翠にそう告げると手をひらひらと振りながら店の奥へと進んだ。
緊張感が解け、ホッと息を吐く4人。
しかしその瞬間。
「ああ、それともう一つ」
「「!?」」
突然、と言うには遅すぎるであろう。
まさに瞬間。翡翠の目の前へと業は移動していた。
(嘘でしょ......音が全く聞こえなかった。瞬間移動? それに彼の『色』、真っ白ですって!? そんな人間がいるの!?)
(馬鹿な!? 完全にこちらを振り向き、移動し、翡翠の前に行くという行動をしたはずなのに全く見切れなかっただと!?)
二人は唖然とする。スキルによる物だとしてもなにが起きているかがわからない。
まさにその一言に尽きた。
「翡翠、『採集』の方も進めとけよ?」
「......わかっているよ、兄さん」
再び歩き始める業。
4人はただ呆然と業が過ぎ去るのを待つしかできなかった。
「はぁ、はぁ......」
「ちょっと大丈夫紫苑ちゃん」
紫苑は机にうつ伏せ呼吸を必死に整えていた。
「大丈......夫です」
「無理をするな紫苑、ゆっくり深呼吸をして」
翡翠は紫苑の背中を撫でた。
「あいつは、お前の兄は一体何者なのだ?」
蒼也は拳を握り締め、二人に質問をした。
「そうですね。僕らに関わる以上、話はしておいた方がいいでしょう」
「......いいの? お兄ちゃん」
「この二人は信頼できる協力者だ。それに。いやなんでもない、紫苑こそ大丈夫か?」
「私は大丈夫だよ」
翡翠は真剣に、それでいて昔話をするかのように切り出した。
「これは、僕と紫苑と業兄さん。そして芥川善司、研究者である僕の父の10年前の話です」
翡翠は紫苑を見る。そうして紫苑もまた頷き翡翠を見返した。
「父の研究内容はスキル。そして研究の題名は」
「人は生まれながらにして平等ではない」
次回はキャラクター紹介です。
外見や年齢まで。あんなことからこんなことまで......!




